では、ここからは最近出場したWEC、ELMS、そしてまもなく始まるル・マン24時間について、お話ししようと思います。

 WEC第3戦スパには、アコーディスASPチームのレクサスRC F GT3でスポット参戦しました。RC F GT3自体は日本やIMSAで経験がありましたが、WECのLMGT3クラスでは空力の仕様なども若干違うこともあってか、シミュレーターで走り込んでいたスパとはだいぶ印象が違いました。オー・ルージュを全開でいくのも難しかったです。

 僕が加わった 78号車は、ジェントルマン(ブロンズドライバーのアーノルド・ロバン)の活躍もあり、上位で戦うことができました。チャレンジングなコースであるスパは、車両のポテンシャルだけでなく、ドライバーの技量が試される割合も大きいですからね。

 決勝では、終盤に入って大クラッシュ、赤旗がありましたが、僕はあの数周前に乗り込んでいたんです。じつはタイミングがいろいろと悪かったこともあって、決勝に至るまでのどのセッションでも、僕は5周ずつくらいしか走れていませんでした。個人的にはFIA F2でスパを走る際に今回の経験を活かしたいと思っていたのに、再開されないまま終わってしまったら「何も経験できずに終わっちゃうな……」と。ただ、チームとしては赤旗時のままのポジションであればポイント獲得という、微妙な状況だったのですが(笑)。

 結果的には赤旗中断分を延長するという判断になり、僕個人としてはそこでしっかりと走れたのはよかったです。また、RC Fはタイヤに対して結構厳しいバランスというか状況だったのですが、自分たちの最適だと思うストラテジーを組んでレースを進め、1ポイントを獲得できたことは良かったですね。

2024年WEC第3戦スパ・フランコルシャン6時間レース 宮田莉朋が搭乗したアコーディスASPチームの78号車レクサスRC F GT3

 LMP2の方では、ELMS第2戦ポール・リカールがありました。第1戦に続く連勝も見えていたのですが、終盤にギヤのトラブルでリタイア。残念でしたが、トラブルが起きたのがル・マンでなくて良かったですし、それを次につなげることが大事だと思っています。

 ポール・リカールで得られた感情は、チームやドライバーを強くさせる機会になる。そういったことはスーパーGTやスーパーフォーミュラでもあったし、僕自身、実際に強くなってサーキットに戻れたなと感じたこともありました。実際、開幕戦のバルセロナとはキャラクターが異なり、『長い直線がありながらも、ダウンフォースが必要なコーナーがある』など、ル・マンに近いレイアウトを持つポール・リカールでもトップ争いができたことは、すごくポジティブですね。

 1.8km続くバックストレートから300km/hオーバーで飛び込む名物コーナー『シーニュ』は、初めて走った時は追い風だったので結構難しく感じました。リヤのダウンフォースが不安定になりやすくて、「おっかないなぁ」と。その次のセッションからは向かい風だったので、結構気持ちよく、少しのアクセルオフで回れるようになりました。

 日本で走らせていたGT500は、もっとダウンフォースがあって、もっとタイヤがグリップしていましたが、LMP2ではタイヤもワンメイクですし、プロトタイプカーとはいえダウンフォースレベルはスーパーGTとは違うので、どこまで行けるかというのは探り探りだった部分はあります。最初はヒヤッとしましたが、慣れてくると楽しく走れましたね。

2024年WEC第3戦スパ・フランコルシャン6時間レース アコーディスASPチームの78号車レクサスRC F GT3をドライブした宮田莉朋
2024年WEC第3戦スパ・フランコルシャン6時間レース 中嶋一貴TGR-E副会長と宮田莉朋

■初めてのル・マン24時間と耐久レースで大切なこと

 そしてLMP2で戦う次のレースは、いよいよル・マン24時間となります。

 昨年、TOYOTA GAZOO Racingに帯同させてもらいましたが、もちろんコースを走るのは今年のテストデーが初めてです。規則で義務付けられているACOのシミュレーターテストは4月に行い、『スローゾーン』や同時に3台が介入するセーフティカーのシチュエーションなど、ル・マン特有のレースオペレーションは体験しています。また、リザーブドライバーとしてTGR-Eのシミュレーターでも走っています。

 トラブルなく、ELMSで学んだことをしっかりと出して、まずは自分たちがいま持っているポテンシャルを発揮したいですね。そのうえでクラス優勝争いができれば嬉しいですが、とにかく自分のスティントをしっかりと走る、それだけしか考えていません。

 昨年を見ていても、ル・マンではタイヤマネージメントより燃費やレースペースが大切なのかなと思いますし、天候が不安定になることも多いと思うので、そこはドライビングも、チームのストラテジーも、臨機応変に対応することが大事なのかなと思います。プッシュするときはするけど、守るべきときは守る。そういった難しさがあると思うので、そのあたりは常に意識しながら走らなくてはいけないですね。

ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズの2024年第2戦 クール・レーシング37号車(ロレンツォ・フルクサ/マルテ・ヤコブセン/宮田莉朋)

 ELMSとは異なり、ル・マンではハイパーカーに抜かれるシチュエーションもあるので、前も後ろも見なくてはいけない。また、ハイパーカーとの速度差を作る関係上、LMP2車両はELMSよりもパワーや車重が遅くなる方向に調整されるので、そのあたりの感覚はプラクティスでうまく合わせられればと考えています。

 5月は4週連続レースだったこともあって、なかなかケルンにいる時間もなく、前回紹介した猫カフェすら、まだ行けていないんですよ(笑)。むしろ最近は、いろんな国に旅行に行きたいなぁという想いの方が膨らんできて……具体的に行きたい場所を見つけてしまったので、近々リフレッシュがてら行けたらいいなと考えています。ヒントは海が見えて、物価が安いところ(笑)。念願がかなった際には、こちらのコラムでも報告しますね!

⚫︎今月の“リトモメーター”
三刀流+moreとして世界のさまざまなサーキットを訪れる2024年の宮田選手の移動距離を、フライトマイルで計測。ご本人のアプリのスクショを公開させていただきます。
今回、5月2日〜5月29日の期間で……

⚫︎5月2日〜5月29日
7回の搭乗
2,938マイル
搭乗時間:11時間

⚫︎2024年累計
52回の搭乗
105,592マイル
搭乗時間:257時間12分

5月2日から、フランクフルト(FRA)〜マルセイユ・プロヴァンス(MRS)、マルセイユ(MRS)〜ドイツ・デュッセルドルフ(DUS)、ドイツ・ケルン-ボン(CGN)〜イギリス・ロンドン(LHR)、ロンドン(LHR)〜ケルン-ボン(CGN)、デュッセルドルフ(DUS)〜ボローニャ・ボルゴ・パニゴーレ(BLQ)、フランス・コート・ダジュール(NCE)〜フランクフルト(FRA)、スイス・ジュネーブ(GVA)〜フランクフルト(FRA)。
FIA F2モナコ後、ひさびさにレースのない週末を迎えた宮田選手。どうやらリフレッシュを兼ねて小旅行に出かけることができたようです。ヨーロッパのどこに行ったのかは、また次回のコラムで!

本日のレースクイーン

長瀬れなながせれな
2025年 / スーパーGT
aprVictoria
  • auto sport ch by autosport web

    RA272とMP4/5の生音はマニア垂涎。ホンダF1オートサロン特別イベントの舞台裏に完全密着

    RA272とMP4/5の生音はマニア垂涎。ホンダF1オートサロン特別イベントの舞台裏に完全密着

  • auto sport

    auto sport 2025年7月号 No.1609

    【特集】LE MANS 2025
    “史上最混戦”の俊足耐久プロト頂上決定戦

  • asweb shop

    STANLEY TEAM KUNIMITSUグッズに御朱印帳が登場!
    細かい繊細な織りで表現された豪華な仕上げ

    3,000円