今回の第10/11戦アイオワで順位変動が少なかったのは、ハイブリッド化でマシンの後部が重くなっている点も大きく影響していたようだ。
ロードコースのミド・オハイオでも、「オーバーテイクを仕掛けようという時、重くなっているマシンは俊敏さを欠いていた」とコメントするドライバーが見られたが、その傾向がオーバルではより顕著であったのかもしれない。
さらに、ドライバー兼チームオーナーのエド・カーペンターはレース後に、「大金を投じ、おもしろかったレースをつまらなくするなんて、納得が行かない」と話し、「残りのシーズンではハイブリッド採用をやめることも検討すべき」との示唆さえ行っていた。そうなることはほとんどあり得ないだろうが……。
過去2年のアイオワ・スピードウェイのレースでは、急なバンクを活かしたサイド・バイ・サイドのスリリングなバトルが見られていた。
近年では、マシンの仕上がりが素晴らしかったジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が、トップ争いをしていたチームメイトふたりのウィル・パワーとスコット・マクラフランを一気にまとめてパス!なんていう豪快なシーンもあったぐらいだ。
今回は、ハイブリッド化でバトルにはさらに拍車がかかるという期待感を胸に、大勢のファンがアイオワに集まったのだが、彼らの期待した通りのレースには残念ながらならなかった。
■崩れてしまったオーバルレースの三要素
インディカーのオーバルレースは、空力レギュレーション、使用タイヤ、コースコンディションの三要素が見事に噛み合った時、驚くほどエキサイティングなものになる。
お互いのスキルを信頼し合ったドライバーたちが見せる超高速の接近戦は、ストックカーのオーバルバトルを遥かに上回る。世界中のどんなレースでも絶対に味わうことができない魅力がそこにはある。しかし、そのうちのひとつが満たされないだけで、インディカーのオーバルレースはオーバーテイク不能の一面的なレースになってしまうのだ。
そのため、アイオワのダブルヘッダーが”フォロー・ザ・リーダー”の退屈なレースとなってしまった原因は、ハイブリッド・システムの採用が最大の理由ではなかったとも言えるだろう。
事前のテストが一度のみ、それも新舗装という新たな要素が絡んだ状況もあり、今回はインディカーのレースオペレーションとテクニカル部門、そしてファイアストンタイヤが、ハイブリッド化による変化を的確に予測し切れていなかったのではないだろうか。
新舗装のもたらすグリップ、バンプが激減したことによるスピードアップ、暑過ぎない気候、ハイブリッド化で重くなったマシンのハンドリングなど、これらの絡み合う状況は簡単に予測などできないものであろう。
こうした状況で迎えたレースでは、エネルギーリカバリーシステム(ERS)のパワーを使わずに走るドライバーも少なくなかった。
なかには、コースの両サイドであるターン1とターン3への進入時に行うスロットル・オフ時に回生を行い、バックストレッチに乗ったところかターン4からの立ち上がり、あるいはその両方でパワーを追加するという走り方のドライバーもいたが、プラス60馬力は追い抜きの一助とはなっていなかった。
予選でもERSパワーに頼らなかったハータがレコードスピードでPP獲得をしてみせたように、今大会ではハイブリッドパワーがもたらす追加パワーよりも、重量バランスや新舗装の路面に合わせたセッティングの良し悪しこそがポイントとなっていたのだ。
ハイブリッドパワーがなくても、マシンが良ければ新システムを利用する使うライバルよりも速く走ることが可能、というのが現状だ。それは、8月17日に行われる次のオーバル戦、ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイ大会でも同じなのだろうか。
今季はその後も、ミルウォーキー・マイルでのダブルヘッダー、さらには最終戦ナッシュビル・スーパースピードウェイとオーバルレースが後半戦に集中している。シーズン中盤のハイブリッド化が、残りのオーバルレースとチャンピオン争いをより面白くすることに期待したいところだが、一体どんな結末を迎えるだろうか。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)
