ニューヨーク州のすぐ北のコネチカット州出身のフェルッチは、5歳の時点でF1ドライバーを目指してレーシングカートに乗り始め、その計画通りに2016年からGP3、2017年からGP2に参戦。ハースF1チームのテストドライバーを3年も務めた。
しかし、GP2でチームメイトのマシンにレース後に故意にぶつけたことなどからペナルティを課せられ、数レースへの出場停止となってチームから契約を解消された。
接触事件にはそれに至る背景があったとサンティーノは主張するが、ヨーロッパではそれが受け入れられなかった。その結果、彼のF1への道は断たれ、インディカーにフォーカスすることになる。
デビューは2018年のデトロイトでのダブルヘッダーで、トータル4戦に出場し、ベストリザルトはソノマでの11位だった。
今年からデイル・コイン・レーシングでフルシーズン出場を果たすことになったフェルッチは、スピードだけでなく、ゴールまでマシンを運ぶ能力の高さも見せて評価を上げている。
20位以下はルーキーでは最も少ない2回に収め、トップ10フィニッシュも5回とまずまずの数字を残している。ベストリザルトはテキサスとポコノ、ふたつの高速オーバルでの4位フィニッシュ。どちらのレースでも恐れを知らない走りを見せていた。
小柄で、カーリーヘア。フェルッチはその風貌の通りに陽気で、愛嬌があり、すっかりインディカーのパドックに受け入れられている。
ドライバーとしての才能は彼自身がレースで証明しており、アメリカでの人気は急上昇中。無口でシャイなアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)と対照的な、天衣無縫のキャラクターで今後さらにファンを増やしていきそうだ。

彼にネガティブな要素があるとすれば、最大のスポンサーである父マイケルが少々煙たがられる人物であるところかもしれない。
彼はサンティーノのGP2時代、ドナルド・トランプの大統領選挙運動でのキャッチフレーズである“メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン”をサイドポッドに掲げるようチームに要求し、“政治的メッセージはレギュレーション違反”とチーム及びFIAに拒絶されたなどという逸話を残している。
GP2では事件から“危ないキャラクター”と捉えられがちだったサンティーノだが、インディカーで走り出してからの彼は“やんちゃ坊主”、あるいは“問題児”としてトラブルを引き起こしたりはしていない。
レースぶりで先輩たちから苦情を寄せられたという話も聞こえてこない。“恐れを知らない”走りは、アクシデント回避の場面で発揮されたものだ。
テキサスでもポコノでも、直感的なライン採りと驚異的マシンコントロール能力で大きなポジションゲインを達成。5台が絡んだポコノでの1周目、サンティーノは的確な判断を下してアウト側にラインを保持し、13番手スタートから5番手にまで大きくポジションを上げて1周目のコントロールラインに戻ってきた。
彼より前のグリッドからスタートした5台がアクシデントに巻き込まれたのも事実だが、それらを除く3台をパスしたということだ。
「楽しく、エキサイティングな週末だった。地元が近いので、家族や友人も含めて120人ものゲストが来てくれていた。それだけの人たちが注目している中でのレースとあって、プレッシャーはとても大きかったよ」
「でも、トップ4走り続け、レースを楽しむことができた。デイル・コイン・レーシングが高い能力を持っているおかげだ。マシンが走り初めから速く、レールの上を走っているかのように安定していたからね。トップ3フィニッシュが狙えるマシンになっていて、一時は優勝の可能性すら感じていた」
「雨でレースは短縮された。それは仕方ない。4位でのゴールには満足すべきだと思う。ルーキーポイントでのゲインも果たせたし、ランキングは全体の12位にまで上がった。オーバル1レースを含めた残り3レースで、どこまでポイントランキングを上げられるか、楽しみだ」とサンティーノはポコノのレース後に話していた。


ハータには技術提携関係にあるアンドレッティ・オートスポートの先輩ドライバー4人と、彼ら4台のデータという強い味方がいる。
ローセンクヴィストには5度のタイトル経験を持つディクソンと、チップ・ガナッシ・レーシングという強力なチーム体制がある。
対するフェルッチには、マシンセッティング能力の高い、チャンプカーで4回チャンピオンになっているセバスチャン・ブルデーというチームメイトがいる。
アメリカントップオープンホイールでの経験が少ないサンティーノにとって、それは大きなメリットとなっており、短期間で多くのことを学ぶことができているようだ。
もう2019年もシーズンも残るレースはショートオーバルのゲートウェイとロードコースのポートランド、ラグナセカの3戦だけ。ルーキー・オブ・ザ・イヤー争いは、ローセンクヴィストが逃げ切るか、フェルッチが逆転するか、大いに注目の集まるところだ。
