今回もNASCAR以外のイベントも開催することで負担を分散させた。まずは3月15~20日、『ブリストル・ダート・ナショナルズ』と銘打ったさまざまなダートカテゴリーのレースを実施。ここに2020年カップシリーズ王者チェイス・エリオットなど有名ドライバーを何人も参戦させることで、前人気を煽った。その週末には多くのレースが行われ、エントリー数は1000台以上に達したという。そのエントラントたちからの注目もNASCARのイベントへと集まる。じつに抜け目ない。

 3月26~28日のNASCARの2戦を経て、その後がワールド・オブ・アウトローズの出番。4月8~10日の3夜連続でレイトモデル(ストックカー)のレースが行われ、彼らのトップシリーズであるウイング付きスプリントカーのレースは4月22~24日に3夜続けて実施される。ワールド・オブ・アウトローズもイベントを二段構えにしてメインのシリーズを盛り上がらせようという考えだ。

 そそり立つ巨大なグランドスタンドを持つ0.5マイルオーバルは、そのユニークさから全米にその名を轟かせている。ロケーションとしては、テネシーとバージニアの州境の山間、大都市からは結構な距離にあるのだが、そんなコースをダートにしてのカップ戦開催なら、季節的には少々寒いものの、『観てみたい』と思うファンは、とくに初回の今年は多いだろう。興行として、そこそこ成功しそうな雰囲気もある。

 問題は、レースがちゃんとエキサイティングで、見る価値のあるものになるかどうか。カップ戦の周回数は250周に決まった。マシンにはどの程度のモディファイが施されるのか? グッドイヤーはどんなタイヤを用意してくるのか?

 20年前のワールド・オブ・アウトローズのレースでは、コーナー手前で185mph(約298km/h)もの最高速が記録されたという。彼らのマシンは最大排気量で6.7リッターのエンジンを積み、パワーは900hpもあるのに、車重は600kg以下。カップカーのエンジンは5.9リッター弱で、最大出力は750hp。車重は約1500kgと、スペック的にはおとなしいため、ちょっと鈍重なバトルと映りはしないか……という心配もなくはないが、カップ戦なら40台近くが一斉にコースを走るわけで、トラフィックを縫いながら、マシンを横向きに滑らせつつのドッグファイトという、普段とはかなり違ったバトルが見られそうだ。

 常に将来を見据え、新しいことにも意欲的にチャレンジしているNASCARにとって、今回は将来に向けたリサーチでもある。人気を博せば、来年以降のカレンダーに別のダートレースが加わることになるだろう。NASCARはここにきてコースバラエティを増やしてきている。ストリート進出も時間の問題かもしれない。

 NASCARは1990年代にアメリカナンバーワンのモーターレーシングカテゴリーになったが、その後も攻めの姿勢を保っている。昨年は速やかにカレンダーを変更し、感染抑制対策を徹底して、断トツのスピードでイベント開催に漕ぎ着けた。ほかのメジャースポーツがまごまごしている間に、観客を入れてのイベント開催まで実現。強いリーダーシップと高い行動力を見せつけた。

 ポイントシステムの変更、シリーズ内プレーオフによるチャンピオン決定システムや各レースを3セグメントに分けるレースフォーマットの導入、マシンの近代化、参戦チームへの支援、サーキットのリモデル、レース開催地の新規開拓など、近年次々と手を打ち、どれもが成功している。アメリカのモータースポーツシーンで彼らが先頭を走る時代は当分続きそうだ。

今回のダートオーバル戦が人気を博せば、来年以降は別のダートレースが加わる可能性も
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