先ほどF1第2戦マレーシアGPが終了しました。雷雨の予報が出ており、レース中の降雨が心配されましたが、一部でポツリポツリと降った程度でそれほど大きな影響はありませんでした。
そのマレーシアGPを制したのは、開幕戦に続きメルセデスAMG。メインスポンサーであるペトロナスの母国での圧勝劇でした。では、このレースでどんなことが読み取れたか、順に見ていくことにしましょう。
●圧倒的なメルセデスAMGの速さ
開幕戦以上にメルセデスAMGの速さが目立つグランプリとなりました。この週末に行われた5つすべてのセッションでメルセデスがトップタイム。決勝でもルイス・ハミルトンは、3位のセバスチャン・ベッテル(レッドブル)に24秒もの差を付けての完勝でした。
今年のメルセデスはトラクションが重要視されるセクションでも、ダウンフォースが求められるセクションでも、ドライでもウエットでも、どんなコンディションでも一番速いマシンです。数字で示せば、2番目に速いレッドブルを1%(セパン・インターナショナル・サーキット1周で1秒)程度引き離すことができるパフォーマンスを持っています。これでは、タイヤのデグラデーションも、燃費も、自在にコントロールして走ることができるはず。当面はメルセデスの優位は揺るぎそうにありません。
●レッドブル、そしてロータスの躍進
開幕前のテストでは想定外のトラブルが相次ぎ、完全に出遅れ感があったレッドブルですが、気付いてみれば全体で2番目のパフォーマンスを発揮することができるマシンに急成長。ベッテルの力量による部分も大きいでしょうが、マシントラブルも少なくなってきており、その信頼性の向上スピードには驚かされるばかりです。
そのレッドブルよりも驚くべきスピードで進化しつつあるのがロータスです。こちらもシーズン前テストでの出遅れを引きずっていましたが、今回はしっかりと完走。順位も入賞にあと1歩と迫る11位でのフィニッシュでした。
今回のパフォーマンスを数値化してみると、ロータスのパフォーマンスは102.92%(前回は103.7%。ちなみに最も速いマシンを100としており、今回はメルセデスが100。レッドブルは100.93%で2番手でした)。同様の計算を各チームに当てはめてみると、ロータスだけがメルセデスとの性能差を縮めたという結果になりました。これは、ある意味大躍進と言えるでしょう。各所で言われるように、欧州ラウンド初戦であるスペインまでには、しっかりと入賞を争える存在になっていることでしょう。
また、フェラーリのフェルナンド・アロンソとマクラーレンのジェンソン・バトンのふたりのベテランの堅実かつハイレベルな走りも、とても光っていました。
●やはり新人のアタリ年か?
開幕戦でデビュー戦入賞を果たしたマクラーレンのケビン・マグヌッセンとトロロッソのダニール・クビアトが、今回も揃って入賞。マグヌッセンもクビアトも、接触があったりペナルティがあったりして出入りの激しいレースとなりましたが、しぶとく走りぬいてポイントをゲットしました。特にマグヌッセンはチームメイトのバトンよりベストラップでは上回るなど、2009年F1王者に引けを取らない活躍を見せています。今後もふたりには期待したいところです。
●ウイリアムズとフォースインディアのマシン特性
レース終盤、フェリペ・マッサとバルテリ・ボッタスに対する無線のやりとりが放送されました。これが注目されていますが、それ以上にウイリアムズが下馬評のような速さをレースでは見せ切れていないのが気になります。レースペースでもマッサ、ボッタスともに常に4~6番目の位置。現状では表彰台は難しそうです。
このウイリアムズのマシンは、とてつもない最高速を記録しています。マッサは324.5km/hで全体のトップ、ボッタスは320.6km/hで2番手……3番手のヒュルケンベルグが312.9km/hであることからも、そのスピードの凄さがお分かりいただけるでしょう(ちなみに勝ったハミルトンは305.9km/hでした)。もちろんメルセデス製パワーユニットの力もあるでしょうが、FW36は圧倒的にドラッグの少ない=ダウンフォースの少ないマシンなのではないでしょうか? そのため、セクター1では全体の2番目ですが、ダウンフォースが求められるセクター2と3では4~5番目でした。また、ウエットコンディションを不得意とする理由も、ここにあるのではないかと思われます。
なお、マシン特性と言えば、フォースインディアの驚異的なタイヤへの優しさも注目すべき部分。これは他と違う戦略を採れるということを意味しており、大きな武器となるはずです。その上、仮に3ストップだったとしても同じ順位でフィニッシュできたかもしれないほどの速さも兼ね備えているので、今後もレースによっては上位・そして表彰台を狙える時もあるかもしれません。
●堂々の完走。小林可夢偉13位
開幕戦で1周目にリタイアを喫してしまった小林可夢偉は、今回見事に完走。しかも13位という非常に重要な順位でのフィニッシュとなりました。
なぜ13位という数字が重要なのか? 昨年のケータハムとマルシャは共にノーポイントでしたが、ケータハムは最高位14位、しかしマルシャは13位が1回あったのです。この差によりマルシャがランキング10位、ケータハムは11位になりました。年間ランキングが10位になれば2000万ユーロ(約28億円)の賞金、11位ならゼロと言われています。これを獲得できるかどうかは、チームの存続にすら大きく影響してくるはず。その意味でも、今回の完走の意味は非常に大きかったと言えるでしょう。
正直今のケータハムのマシンの戦闘力はそれほど高くありません。しかし、冷静にタイヤを労わり、2ストップで走り切った可夢偉の走りは素晴らしかったと言えるでしょう。