「あっという間の1年だった」
1年ぶりに訪れたアブダビで、ホンダの新井康久F1総責任者は最終戦を迎える心境を、そう表現した。ここは昨年の最終戦のあと、マクラーレンとともに7年ぶりのF1活動をスタートした特別なサーキットだ。1年が経って感じたのは、チームワークが強くなっていることだと言う。
「1年前のアブダビで一緒に仕事を始めたときも我々のチームワークは良かったが、この1年間でチームワークはさらに良くなった」
今シーズン経験した様々な困難が、マクラーレンとホンダの絆を強くした。最初のテストではまともに走ることができず、ウインターテストでもトラブルが続出。開幕戦は「完全に準備不足の状態で迎えなければならない」(新井総責任者)状態だった。
その後もトラブルは続き、パワーサーキットでは「デプロイ」の問題も浮き彫りとなった。イギリスのメディアから、バッシングとも思える攻撃を受けたこともあった。それでもホンダは問題と向きあい、マクラーレンと一緒に耐え忍んだ。つらく長い時期を経験したことは、かけがえのない財産を作ったように思える。
1年前まともに走ることができなかったチームは、今年のアブダビGP初日で2台あわせて98周を走破。初日を終えた段階ではあるが、アロンソの順位は9位。しかもトップのメルセデスから1秒以内につけている。
「今日アロンソはスローなセクターに自信を持っていた。クルマが自分の好みに合っていたんだと思うが、セッションが始まってすぐに『マッチ・プログレス(すごく前進した)』と言ったあとは何もしゃべらず、たんたんと走行を重ねていた。最後は、もう十分走ったのか『もう、おしまい』と言ったほど。結局エンジニアから、まだ走れと言われて走行を続けていましたが……」と新井総責任者は初日を振り返る。
マクラーレン・ホンダの最終戦は、ここまで上々の滑り出しである。