12日に開幕したWEC世界耐久選手権第7戦富士スピードウェイで、LMP2クラスの25号車オレカ・ニッサンをドライブし参戦した中野信治は、金曜日のセッションで午前、午後とも15周ほど走行。25号車はどちらもクラス2番手につけ、中野自身も「クルマはすごくいい」と手応えを得た様子だ。
このところスポーツカーレースでの活動をメインとする中野は、今季のル・マン24時間でもブーツェン・ジニオン・レーシングのオレカ03・ニッサンをドライブ。若手ドライバーたちを引っ張る立場としてチームを牽引し、存在感をみせた。
そして迎えたWEC第7戦富士では、現在LMP2クラスのチャンピオンを争うADRデルタに加入。ひさびさに日本でレースを戦うことになった。中野にとっては、以前富士で戦ったのはJGTCに参戦した頃以来。新コースとなった富士を走るのは初めてだ。
そんな中、午前、午後とも15周ほどを走った中野は、「このコースは本当に独特で、セクター3はもう少しいいラインがあるのは分かるんだけど、うまく乗せられない(苦笑)。ただユーズドでしか走ってないけど、クルマはすごくいい」と富士に慣れながらも、マシンの速さに手応えを得た様子。
中野のコメントで興味深いのは、今回中野がドライブするADRデルタのオレカ・ニッサンと、ル・マンで乗ったオレカ・ニッサンはタイヤ、シャシー、エンジンともまったく同じながら、「フィロソフィーやセットアップの考え方がまるで違う。まったく違う動きをする」ということだ。
「こちらはフォーミュラっぽいセットアップをする。理に適っているけど、プロトタイプでは今まで体験したことがない考え方。クイックに動く。ル・マンの時は動かして乗る感じ。新鮮で面白いですね」と中野。
聞けば、「エンジニアがすごく頭が良くて、ひさびさに感心させられたね。F1の時とか、チャンプカーでいいエンジニアに当たった時と同じような感覚を思い出した。彼は将来別のカテゴリーでもすごいエンジニアになると思う」とエンジニアがベテランの中野をもうならせるほどの手腕なのだとか。
「僕の中では今日でかなりまとまってきていて、あとは他のドライバーとどうまとめるか。あんまりチャンピオンシップは考えてない。(このチームで)初めてだし、プレッシャーかけられるとね(笑)。でもタイトル争いをしているし、日本でニッサンエンジンも積んでる訳だし。できれば手助けできるようないい走りをすることができれば」と中野。ル・マンで周囲を唸らせたいぶし銀の走りをこの富士でも期待したいところだ。