ザウバー時代に小林可夢偉のチームメートだったセルジオ・ペレス(フォース・インディア)は、モナコ在住のドライバーのひとり。しかし、ペレスは決して第二のホームグランプリを迎えることを手放しで喜んではいなかった。
「今年はいつもよりもドライバーのミスが増えるんじゃないかな。なぜなら、タイヤのコンパウンドが硬くなってグリップ力が下がっただけでなく、エンジンのトルクも増えて、アクセルワークが難しくなっている。さらに、ダウンフォースもモンツァ仕様と同じくらいものすごく低いから、ブレーキングやコーナーの出口でリヤがすごく暴れる」
ペレス同様、モナコに居を構える可夢偉も、グランプリ開幕前、同じことを口にしていた。そして、その難しさは初日のフリー走行を終えて、さらにより具体的に増長されていた。特にソフトタイヤでのグリップ不足は深刻だったという。
「ソフトタイヤはスペインGPでも履きましたが、バルセロナとは比べものにならないほど怖かった。だって、5速でもホイールスピンして、死ぬかと思った。特に1コーナーが……」
グリップ不足に陥った理由は、木曜日のモナコの異常低温。この日のモナコは午後に雨だけでなく、雹(ひょう)も降ったほど、上空は冷えていた。そのため、雨はすぐに上がったが、路面はなかなか乾かなかった。さらにケータハムにはもうひとつこの日、グリップ不足に悩んだ理由があった。
「速いマシンが後ろから来ると、進路を譲らなくてはならないため、なかなかタイヤに熱を入れられないんです」
それでも、可夢偉はその難しくなっていく条件の中に、活路を見いだそうとしていた。
「そんな状況で、うまく生き残ることができれば、チャンスかもしれない」
日本人ドライバーとして、モナコ最高位である5位を2011年に獲得している可夢偉。その時も、予選12位からの大逆襲だった。今年、ケータハムのマシンでどこまで行くか、注目したい。