全7戦で争われるGAZOO Racing 86/BRZ RACEの最終戦は、11月3日にスーパーGTのサポートレースとしてツインリンクもてぎで決勝レースを行い、激しいバトルの末に織戸学(TR with COLLARS 86)がシリーズ初優勝を飾った。
当初のエントリーは92台と、もてぎに用意されるグリッドは45台分であるため、決勝レース本戦どころか、コンソレーション落ちも出る形となっていたが、直前になって6台がエントリーを取り消すことに。予選までで終了……という事態は免れたものの、残念だったのは第6戦のウイナー平岡塾長もクルマの手配が間に合わず、その中に含まれていたことだ。
今回、金曜日の練習走行から目立っていたのは、谷口信輝(コウベトヨペット86)と織戸の好調ぶりだった。グループこそ分かれていたが、すでにチャンピオンを決めている山野直也(P.MU RACING 86)のタイムを上回っていたほど。このふたりはご存知のとおりヨコハマユーザーであり、ここまで無敗のブリヂストンに対し「何らかのてこ入れがあったのでは」とパドックではもっぱらの噂。これに対して谷口は「頑張ってくれたよ」と肯定も否定もせず。
予選でもふたりの快進撃は続き、Aグループで谷口が2分20秒143をマークしてトップにつけ、織戸が20秒239で続く。3番手は、ここまで唯一連続入賞の大西隆生(オートバックスG7 86ポテンザ)が獲得。続いて行われたBグループでは、しっかりクリアラップを取るため、1周目を先頭で戻ってきた山野ながら、遅れてコースインした車両に二度も行く手を阻まれる不運も。そのため、20秒503を出すに留まり、グループのトップにはつけたが、ポールポジションは2戦連続で谷口に明け渡すこととなった。山野に続いたのは、ラストアタックで一気に詰めてきた富澤勝(N1 TECHポテンザWIN 86)、そして開幕戦PPの後藤比東至(SEVポテンザED 86 MART)だ。
「バックストレートでうまく合わせてしっかりクリアラップも取れたし、ドライでポールが獲れたのは大きいね。決勝もドライだろうけど、今回は大丈夫。アタック1周で終えられたから、タイヤも温存できた。今まで恥ずかしい思いをし続けていたから、そろそろ勝たないとね」と語る谷口に対し、「まあ、フロントロウですからね。今回もスタートを決めて、早い段階で抜いて帰ってきます」と山野は逆襲を誓っていた。
注目の決勝レースでは「スタートは失敗していないのに」と語る谷口を、公言どおり山野は出し抜いてみせる。イン側のグリッドから1コーナーに向けてまっしぐら。切り口鋭く山野は谷口のインを刺してトップに浮上。しかし、1周目こそ谷口と織戸に対し1秒の差をつけた山野だったが、2周目には間隔がコンマ差となる。3周目にはもうテール・トゥ・ノーズ状態に。
様子をうかがうことなく4周目の5コーナーではインから谷口が、そしてアウトから織戸が山野を挟み撃ちにして、織戸いわく「ジェットストリームアタック(笑)」をかけるも、ここでは山野が何とか踏み留まる。
その後もまさに息詰まるトップ争いが続いたものの、8周目の130Rで「ブレーキングで山野はインにいったから、俺はアウトからいってクロスをかけて」織戸がオーバーテイクに成功する。逆に谷口は「後ろにつき過ぎて水温が上がり、補正がかかっちゃって」と、続いて山野に迫ることは許されず。少しずつではあったが、終盤は織戸が差を広げて逃げ切り。シリーズ初優勝を飾って「チャンピオンに勝てたのは、すごく大きいよね!」と笑顔をみせた。
そして「最後締められなかったのは悔しいなぁ。ふたりと速さが全然違っていて、すっかりもてあそばれちゃいました」と有効得点パーフェクトを果たせなかった山野は悔しそう。もっとも、山野より悔しそうな表情を谷口が表彰台の上でみせていたが。
トップを争う3台からは離されてしまったものの、富澤と大西、そして絶妙のスタートを切った蒲生尚弥(ケンダタイヤ86)による4番手争いも激しく繰り広げられていた。中盤になって蒲生が遅れを取るも、ふたりのバトルは最後まで続き、からくも富澤が逃げ切りを果たした。ランキング2位は蒲生が、そして3位は富澤が獲得。全戦入賞も大西は4位に、この勝利で織戸が一気に5位へと浮上した。谷口は6位となっている。