●メルセデスの圧倒的速さ
中国GPも、メルセデスの圧勝に終わりました。勝負のポイントどうこうというよりも、とにかく速い。これは、スタートで失敗して一時6番手まで後退したニコ・ロズベルグが、その後コース上で次々にマシンをパスし、最終的に2位になったことでも明らかです。
開幕4連勝。これは2005年のルノー(フェルナンド・アロンソとジャンカルロ・フィジケラのコンビ)以来の記録です。しかも、一度もリードラップを譲ることない完勝続きです。計算上の性能差は、2位レッドブルに対して0.68%速いだけ。ただ、本来の性能差は、もっと大きいのではないでしょうか? “ぶっちぎり”で勝ったルイス・ハミルトンが、燃料を一番使っていなかったという事実も、それを裏付けているようです。
●評価を上げるリカルドと、心配なベッテル
3位に入って今季初表彰台を獲得したのはアロンソ+フェラーリですが、本来ならばこの位置にダニエル・リカルドのレッドブルが来なければならなかったはず。原因は全てスタートにあったと言っても過言ではありません。2番手スタートのリカルドは、1コーナーまでにベッテルとアロンソの先行を許し、4番手にダウン。しかも、レース途中でペースの落ちたベッテルに詰まってしまったこともあり、アロンソを追いきれませんでした。
しかし、気になるのはベッテルの不調ぶりです。選手権を4連覇しているチャンピオンが、新加入チームメイトにこれほど苦しめられるとは……。ベッテルもそのことに焦りを感じているのか、木曜日にはリカルド車のコクピットに実際に座りその違いを確かめていたと聞きます。
それでも予選、レース共にリカルドに完敗。「リカルドはどのタイヤを履いているんだ?」と無線で尋ね、「同じタイヤだ」という答えを聞いた時の落胆した反応、「リカルドに順位を譲れ」とピットから指示されたシーンには、寂しさすら感じました。
なお、予選と決勝のパフォーマンスを、ベッテルとリカルドで比較してみると、リカルド100に対してベッテル100.06と、その差はごく僅かです。しかし、特にレースペースでは、ベッテルの方がタイムの下落幅が大きい傾向にありました。これは初日フリー走行の際にも出ていた現象で、同じ傾向があったハミルトンやアロンソが修正してきたのに対し、ベッテルは修正できず……。何かスッキリしない感じがします。
ベッテルとリカルドにこのような差が付いた原因はハッキリしませんが、“今年のマシンのドライビングスタイルが、リカルドの方に合っているのでは?”という想像ができます。ベッテルはコーナー立ち上がりでのスロットルコントロールに長けていたドライバー。しかし、今年のマシンは複数種類のトルクが存在するため、旋回途中にアクセルを蹴り込むと、スピンしてしまうと言われています。つまり、ベッテルの長所がスポイルされてしまっている……という可能性もありそうです。
とはいえ、ベッテルはこれまで数々の記録を打ち立ててきた、現役最高クラスのドライバー。このまま終わることはないはずです。復活の時はいつなのでしょうか?
それから、最高速度の差も、今回の大きなトピックのひとつ。予選でのメルセデスとレッドブルの最高速の差は20km/h、決勝でも18km/h以上ありました。これでは、たとえレッドブルがコーナリングの速さを活かしてメルセデスの直後についても、オーバーテイクは容易ではありません。現に決勝でも、メルセデス勢があっさりと他車を抜いていくシーンが何度もありました。
●フェラーリ、フォースインディア、ロータスの躍進
アロンソの活躍でも伺えますが、今回様々なアップデートを投入したフェラーリもかなり進化してきているようです。しかし、メルセデスに対しては1.7%遅れている状態。逆転まではまだまだ遠い道程です。
フォース・インディアはここでもダブル入賞。ランキング2位の座はレッドブルに奪われてしまいましたが、引き続き好調ぶりをアピールしました。
今季大きく出遅れてしまったロータスは、今回も入賞こそなりませんでしたが、間違いなく進化してきています。計算上はマクラーレンよりもすでに速く、成長の度合いで言えば、今季最高と言えそう。一方、そのマクラーレンは実に心配な状況。予選ではQ3に揃って進むことができず、しかも2戦連続ノーポイント。開幕前の好調さが嘘のようです。
今回のGPをもって、開幕フライアウェイ4戦が終了。次戦から舞台をヨーロッパに移します。各チームのファクトリーからも近くなるため、アップデートも頻繁に行われるようになるでしょう。そのアップデートを活用して勢力図をかき回し、メルセデスをキャッチアップするチームが出てくるのか? 3週間後のスペインGPをぜひお楽しみに。