F1の予選が雨によって翻弄された40分後、GP2のレース1がスタートを迎えた。空からは太陽の光も降り注ぎ、路面は完全に乾ききってドライコンディションのレースとなった。
高速のターン1〜2では大きな混乱は見られず、ポールシッターのラファエレ・マルチェロが好加速で後続を大きく引き離してホールショットを奪った。選手権リーダーのジョリオン・パーマーは2番グリッドからスタートしたものの、実質的な最初のコーナーであるターン3でややはみ出してミッチ・エバンスに2位を奪われた。その後ろにはフェリペ・ナセル、ストフェル・バンドールン、ステファノ・コレッティらが好スタートを決めて続く。
下位勢では逆転を狙ってソフトタイヤを履いてスタートしたマシンも少なくなかったが、雨でグリーンになった路面で左フロントの摩耗は予想以上に速く進み、僅か数ラップで大きくペースを落とし始める。しかし規定により5周目までは義務のタイヤ交換が許されないため、伊沢拓也やアルトゥール・ピックらは我慢の走りを強いられながら6周目から続々とピットに向かう。首位に立ったマルチェロもソフトタイヤを履いており、10周目まで粘ったものの耐えきれずにピットインして後続集団に飲み込まれてしまった。さらにピットアウト直後にメカニカルトラブルに見舞われてリタイアを余儀なくされた。
代わって首位に立ったパーマーは2位エバンスを従えて走り、19周目にピットイン。4位バンドールンも同じ周にピットに向かった。これを見て翌20周目に2位エバンスと3位ナセルがピットインし、それぞれがピット出口でポジション争いを演じる。
素早くピットストップを終えたエバンスはパーマーの前でコースに戻る。アウトラップでまだタイヤが温まっていないエバンスはターン6でアウト側に並ばれたもののパーマーがタイヤをロックさせてややワイド。さらにエバンスはターン7〜8でもインを閉め、パーマーはアウト側でサイドバイサイドになるが縁石の外まではみ出してしまい、エバンスが首位を守りきった。
一方、ナセルはピットストップが遅く後退し、バンドールンが18周目にピットインしていたコレッティを抑えて3位に浮上した。
首位に立ったエバンスはその後ファステストラップを刻む快走を見せてパーマーを引き離し、そのままチェッカー。GP2参戦2年目にして自身初優勝を飾った。最終ラップにはジュリアン・レアルがストウでアウト側に並んでオーバーテイクを仕掛けたものの両者はサイドバイサイドで接触し、コレッティのフロントアッパーフラップが飛んだ。続くクラブでも激しいサイドバイサイドでやり合ったが、レース後にレアルにはペナルティが課せられて4位コレッティ、5位レアルという裁定となった。
伊沢は得意のスタートで24番グリッドから20番手までポジションを上げ、6周目にピットストップを終えた後は安定したペースで走行して後続を引き離し、16位でフィニッシュ。
「スタートはいつも通り良くて、1コーナーでは実際には20位よりも前に行っていたくらいだったんですが、その後の1周目の混乱の中でいくつか抜かれて20位でした。ミディアムタイヤはあっという間にタレちゃいましたけど、ハードタイヤに換えてからはまずまず良いペースで走れたと思います。レースのペースだけを見れば悪くなかったんです。でも、あのポジションからのスタートではこの結果が限界だと思います」
伊沢が最も大きな課題としているサーキットを習熟するという点において、鈴鹿に似ていると言われるシルバーストンはいつも以上に難しいチャレンジだったという。
「たったの45分ではシルバーストンを学ぶのには時間が短すぎて、予選ではすごく苦労しました。今までのどのコースよりも大変でしたし、それがチームメイトとの差に表われてしまいました。鈴鹿のように高速コーナーが重要かと思っていましたが、実際にはターン3〜4や6〜7のような低速コーナーでのタイムロスが大きかった」
一方、22番グリッドからスタートした佐藤公哉は1コーナーでフロントウイングにダメージを負い、苦しい走行を強いられた。やはり2〜3周で左フロントの摩耗が急激に進み、チームメイトの翌周の7周目にピットイン。ここでノーズ交換を行なったが、そこで約20秒を失って大きく後退し、その後は最後尾まで落ちて単独走行。シート問題が発生し、身体の痛みに耐えながらなんとかレースを走り切ったという。
「ミディアムタイヤのタレが思ったよりも速かったですし、ピットイン時にノーズがなかなか抜けなくて時間をロスしました。その時点で僕のレースはもう20位以下は決定という感じでした。ピットアウトしてからしばらくしてシートが緩んで動き始めて背中は痛いし、ウインドスクリーンが割れて走行風でヘルメットが浮いて首紐で締め付けられるわ、ガラスの破片がコクピットの中に入ってチクチク痛いわで大変でしたけど、なんとか最後まで走り切りましたが、こんな厳しいレースは初めてでした」
カンポスはチームメイトのピックも苦戦しており、イニシャルセットアップを大きく外している。その点が課題だと佐藤は指摘する。
「僕もチームメイトもトラクション不足で滑りまくりですし、高速コーナーでも空力的にも安定しないんです。安心して攻められるような状態ではありませんし、チームメイトは予選で最後にかなりリスクを冒した走行でタイムを稼ぎましたが、それでも12位がやっとでしたから。チームは原因を探ろうと懸命に努力していますけど、何かが欠けているんです」