F1と同じくホッケンハイムで行われているGP2第6戦ドイツ。日本期待の伊沢拓也は練習走行で12番手と今季一番の仕上がりを見せていたが、予選では16位に沈み、さらにペナルティをもらってしまった。今季最大のチャンスがピンチに変わったが、この逆境からどう巻き返すのか。
「このホッケンハイムはFルノー時代に走行していて、GP2のシリーズの中で唯一知っているサーキット。後半戦のゆくえを含めて大事な1戦になる」と走行前に話していた伊沢拓也。
オーストリアで手応えを感じたセットアップの方向性を、このドイツでも持ち込んだ。
「フロントの曲がりが良くなる方向のセットアップです。チームメイトとはどんどん違うセットの方向になりますが、自分には合っているはず」
2戦前のオーストリアでは旧知の松浦孝亮が伊沢を激励に訪れていた。松浦はレッドブルリンクの最終コーナーを含めたふたつのコーナーを観客席から見て、伊沢のクルマが他のチームよりフロントの入りが良くないことを指摘していた。
そのセットアップは、このドイツの練習走行の走り出しから手応えを感じていた。最終セクションのセクター3で見ていても、コーナーの回り方がコンパクトに旋回できている。順位も12番手と、これまで以上に手応えを感じていた。
「これまでは知らないサーキットで、練習走行、予選、そしてふたつのレースが終わるころにようやく慣れた、という感覚だったけど、今回のドイツはこれまでのレース後の感覚からスタートできる。予選シングルグリッドを狙いたい」
伊沢も、十分に手応えを感じていた。
だが、予選は不本意な16位で終えた。さらに、2度目のアタックを終えてクールダウンしていたところ、後続のアタックを邪魔したとスチュワードに判断され、3グリッド降格のペナルティ。前回、イギリスでのレース2の接触による5グリッド降格のペナルティと合わせて、8グリッド降格となる。走り出しからの期待が高かっただけに、予選後の伊沢はこれまでにないくらい、落胆していた。
「アタックについては、1周、きちんとまとめきれなかった自分のミスです。連取走行で手応えを感じたので、さらにクルマを良くしようとギヤレシオを変えてショート気味にしたのですが、裏ストレートでリミッターに当たって20km/hくらい速度が落ちてしまった。1コーナーもチームメイトが5速で抜けていたので、僕も試したりしましたが、それが裏目に出てしまった。ペナルティは僕の前も詰まっていたし、後ろのクルマは変なタイミングでアタックしていたこともあるけど、僕は前との間隔を測っていて気づいていなかった。言い訳のしようがありません。このホッケンハイムは唯一、ちゃんと知っているサーキットだっただけに重要なレースだったのですが……また決勝、頑張ります」
予選日は気温33度、路面温度は58℃という非常に暑いコンディションの中、行われた。レース1の決勝日はさらに暑さが厳しくなる予報が出されており、そうなるとタイヤのマネジメントが非常に難しくなる。だが、そこは経験豊富な伊沢が得意とするところ。予選は8グリッド降格で他ドライバーの降格もあり23番手スタートとなるが、開幕戦バーレーンのようなタイヤマネジメントと、そしてアグレッシブなオーバーテイクの再現ができれば、伊沢の今後の道も明るくなってくる。