Volkswagen
ワールドプレミア「スポーツクーペコンセプトGTE」
ジュネーブ国際モーターショー
2015年3月

主な特徴
「スポーツクーペコンセプトGTE」をジュネーブでワールドプレミア
フォルクスワーゲン デザインの新時代を告げる4ドアクーペ
エクスクルーシブなスポーツカーを彷彿とさせるデザインで見る者を魅了
最新インターフェイス&プラグインハイブリッドを採用したハイテクコンセプトカー

「スポーツクーペコンセプトGTE」10のハイライト
1.フォルクスワーゲンの新しいデザイン言語を纏った先進的モデル
2.コンセプトはエクスクルーシブなスポーツカーを彷彿させるデザイン、そして、4ドア+大型トランクを備えたサルーンの機能の融合
3.既存のフォルクスワーゲンCCよりひとクラス上のポジショニング
4.4,870mmの全長、2,841mmのホイールベースにより、たっぷりとした室内長を確保
5.3次元の細密画像を提供するアクティブインフォディスプレイ(デジタルメーターパネル)を採用
6.ドライバーの体調データを読み取り、推奨ルートを検討する機能付ナビゲーションをオプション設定
7.システムパワー380PSを発揮するプラグインハイブリッドシステム(以下:PHEV)TSIエンジン+2つの電気モーターを搭載
8.250km/hの最高速度を達成すると同時に50kmの距離までなら電気モーターだけによるゼロエミッション走行が可能
9.GTEモードを選択すると、0~100km/h加速5.0秒の俊敏な加速性能を発揮
10.エレクトリックプロペラシャフトを介した革新的な4輪駆動システムを採用

ウォルフスブルグ/ジュネーブ、2015年3月
 フォルクスワーゲンは、2015ジュネーブショーで、「スポーツクーペコンセプトGTE」をワールドプレミアします。「スポーツクーペコンセプトGTE」はフォスクスワーゲンの新しいデザイン言語を纏った先進的なモデルです。フォルクスワーゲンAGのデザインを統括するワルターデシルヴァは次のように語っています。「スポーツクーペ コンセプトGTEでは進化と革命が同時に起こっています。フォルクスワーゲンのデザインDNAに立脚しつつ、同時により研ぎ澄まされた形で提示されているのです。このモデルは、フォルクスワーゲンというブランドが、直近の未来に対して、いかに魅力的なアプローチで臨もうとしているのかを示唆しているといえるでしょう」

 そして、フォルクスワーゲンブランド開発担当取締役のDr.ハインツヤコブノイサーは次のように説明しています。「スポーツクーペコンセプトGTEは、このクラスのクーペとして抜きんでたダイナミクスの持ち主です。エクスクルーシブなスポーツカーのスタイルに、大きなトランクとフル4シーターの室内スペースを融合しており、伝統的なB、Cセグメントのサルーンに代わるとても魅力的な選択肢になると思います」

 フォルクスワーゲンブランドのデザインチーフであるクラウスビショフは、次のように補足しています。「スポーツクーペコンセプトGTEは、デザイン面での我々のチャレンジの新たなマイルストーンになるものです。開発は最初から最後まで新しいアイデアとの格闘でした。その結果、私たちはひとつの羅針盤を得ました。このコンセプトカーを通じて、フォルクスワーゲンは、単に新しいクルマのデザインを披露しているのではなく、新しいデザインの時代の始まりを予告しているのです」

最新鋭のインターフェイス

「スポーツクーペコンセプトGTE」は、エクステリアだけでなく、インテリアも革新的なアイデアに溢れています。ピュアな清潔感を強調したデザイン、完璧な人間工学的配慮、そして、ドライバーの体調データの取り込みや3D表示のアクティブインフォディスプレイに代表される人とマシンとの新しいインタラクティブインターフェイスが相まって、「スポーツクーペコンセプトGTE」のインテリアには、鮮烈なエクステリアと完全にマッチするアバンギャルドな雰囲気が生み出されています。

GTE:フォルクスワーゲン独自のプラグインハイブリッドシステム

「スポーツクーペコンセプトGTE」が革新的なのは、もちろんデザイン面だけではありません。「GTE」は、フォルクスワーゲンによる革命的なドライブテクノロジーを表す名称です。「ゴルフGTE」のデビュー以来、このアルファベット3文字で構成された名称は、PHEVモデルを意味するものとして使われてきました。今年、「パサートGTE」が追加されることになっています。これらのクルマは、約50kmまでの距離であれば、純粋な電動モードで走行することができますし、とても長い距離のドライブも問題なく走行できます。

 しかも、素晴らしい運動性能とともに、ハイウェイでも静かでパワフルなクルージングを楽しめます。「GTE」は、全てのクラスやジャンルに設定される可能性を持っています。先日デトロイトで開催された北米国際自動車ショーでは、SUVというコンセプトで紹介しました。今回ジュネーブで公開する「スポーツクーペコンセプトGTE」は、フォルクスワーゲン「GTE」の地平を拡げる新たな具体例といって良いでしょう。279kW/380PSのパワーを有するこの「GTE」は、2つの電気モーターと外部から充電可能なバッテリーを搭載することで、グランドツーリスモならではの卓越したロングツーリング性能とゼロエミッションで走れる環境適合性を併せもっています。250km/hの最高速度を可能にしながら、2.0ℓ/100kmという卓越した燃料消費量も実現しているのです。

新しいセグメントへの挑戦

 フォルクスワーゲンでは、ミッドサイズからプレミアムクラスにかけてのクルマをB、C、Dという3つのセグメントに分類しています。例えば、最新の「パサート」は、ミッドクラス、すなわち、市場のボリュームゾーンであるBセグメントの基準となるべきクルマであり、それに対して「CC」はアッパーBセグメント、「フェートン」は、プレミアムサルーンとして典型的なDセグメントのモデルという位置づけです。今回ジュネーブで公開するコンセプトカーのポジショニングは、アッパーBセグメントを超えてCセグメントの領域に入るといってよいでしょう。

 この点について、クラウスビショフは次のように語っています。「われわれの社内では、スポーツクーペコンセプトGTEは、既存のフォルクスワーゲンCCの上級に位置するモデルと捉えられています。そのクラスに相応しいモデルとして、デザインの面でもプレミアムカーらしいエクスクルーシブネスとダイナミズムを盛り込み、アバンギャルドという言葉に新しい光をあてました」ビショフはさらに続けます。「このコンセプトカーを開発するにあたって、われわれが心に描いたテーマは、“欲しくてたまらなくなるような4ドアスポーツクーペ”です。見る人に“欲しい”という感情をいかに抱かせるか、ということに焦点を当てて開発に取り組みました」

ダイナミックなプロポーション

 技術的には、この「スポーツクーペコンセプトGTE」もMQBに基づいて設計されています。これにより、魅力的なプロポーションと理想的なパッケージングの双方を実現できました。寸法でのもっとも重要な要素は、ホイールベースに対する室内長の比率です。4,870mmの全長に対してホイールベースは2,841mmもあります。その結果、室内長は1,871mmとたっぷり確保されており、逆に前後のオーバーハングは双方とも短くなり、フロントオーバーハングは909mm、リヤオーバーハングは1,120mmに過ぎません。ボディ全高は、今日の4ドア車としては低めの1,407mmで全幅は1,865mmです。この大きさのボディに21インチ大径ホイールを装着しています。MQBの恩恵により、とても優れたスペース効率を実現。ロー&ワイドでダイナミックなプロポーションにも係らず、パノラミックスライディングルーフを装着した出展車でも、乗員のヘッドルームは前後席ともに十分確保しています。また、荷室も外観からは想像できませんが、480ℓもの大容量を誇ります。一切、妥協しないアバンギャルドなクルマ、それが、この「スポーツクーペコンセプトGTE」なのです。

エクステリアデザイン

カリスマ性を備えたフォルクスワーゲン

 アヴァンギャルドな外観の「スポーツクーペコンセプトGTE」は、自動車の世界に旋風を巻き起こすでしょう。もしこの4ドアスポーツクーペが生産に移されるとしたら、2枚のドアでは不足で、かつ完成された美しいデザインを備えたクルマを求める人々にとって、価格的にも魅力的な選択肢となるでしょう。「スポーツクーペコンセプトGTE」のような思い切ったデザインのクルマをリーズナブルな価格で提供することは、自動車メーカーにとって高いハードルです。

 しかしフォルクスワーゲンは、モジュラートランスバースマトリックと独自のデザインDNAを基盤にして、この画期的なモデルを、そう遠くない将来に量産化する準備を整えています。フォルクスワーゲンブランドのデザインチーフであるクラウスビショフは、次のように語っています。「スポーツクーペコンセプトGTEの表現力溢れるデザインには、我々の持てるすべてのノウハウと最高の創造性が投入されています。スポーツカーを彷彿とさせる鮮烈なスタイリングをまとったこの4ドアクーペは、乗用車の新しいカテゴリーを開拓すると同時に、フォルクスワーゲンの新しいデザイン言語が、どれほど多様で豊かな表現を生み出しうるかを示す実例でもあります。」「スポーツクーペコンセプトGTE」のデザインの詳細は以下のとおりです。

フロントエンド:ラジエターグリルとヘッドライトのアンサンブル

「スポーツクーペコンセプトGTE」では、ラジエターグリル、ヘッドライトおよびVWバッジが見事に融合しあって、まったく新しい解釈からなる「フォルクスワーゲンの顔」が創出されています。デザイナーはここで、とりわけデザインの3次元性に着目し、これまでにない独創的でダイナミックな印象を生み出しています。このクルマのフロントエンドで特徴的なのは、ラジエターグリルとヘッドライトを有機的に結ぶアルミ製クロスバーでしょう。

 LEDによるデュアルヘッドライトは、このアルミ製バーに囲まれる形になっていて、そのクロスバーの両端部分は、モダンなジェット機のウイングレット(小翼)のように、ライトの外側で上方に折れ曲がっています。このウイングレットの形状は、エクステリア、インテリアの様々な場所で繰り返されており、「スポーツクーペコンセプトGTE」のキーデザインモチーフとなっています。

特徴的なライトデザイン

 デュアルタイプのヘッドライトでは、いちばん上のラジエタークロスバーが、両端にあるウイングレットで内側のLEDヘッドライト(ハイビームおよびドットパターンのランニングライト)を囲み、そのすぐ下の2番目のラジエタークロスバーが、やはり両端のウイングレットで、外側のLEDヘッドライト(ロービームおよびドットパターンのデイタイムランニングライト)を囲む形になっています。また、ヘッドライトを縁取るウイングレットに沿って小型LEDが組み込まれており、それらがデイタイムランニングライトとしての機能を果たします。内側のウイングレットのLEDライトは、必要に応じて光の色を変えることで、ウインカーとしての機能も果たします。

 デイタイムランニングライトに関してはもう一か所、バンパー両端のロワエアインテークの周囲に、Cの文字(フォルクスワーゲンの電気自動車もしくはプラグインハイブリッド車であることを示す視覚的サイン)を描くように配置されたLEDモジュールが設置され、点灯時にはヘッドライトの周りのLEDとともに、特徴的なグラフィックを創出します。

ラジエターグリルを形成する6つのクロスバー

 フロントエンドの両端まで延びる2本のラジエタークロスバーの下に、あと4本のアルミ製クロスバーが配置されていますが、それらは幅が、下に行くほど徐々に細くなっており、バンパー下方のボディカラーのエリアで囲まれた幅の広いV字型のエリアを覆っています。その左右には、前述のLEDをC字型に配置したデイタイムランニングライトが設置され、見る人に強烈な印象を与えています。

サイドシルエット

「スポーツクーペコンセプトGTE」はサルーンカーではありません。4つのドアとトランクリッドを備えながら、あくまで本質はクーペです。そのコンセプトを忠実になぞったデザインは、長く伸びやかなライン、低い全高と筋肉質で引き締まったフォルムを特徴としています。そうした基本理念を具現化するためにフォルクスワーゲンのデザイナーが一切妥協しなかったことは、シルエットを見れば明らかです。ここではなだらかなルーフラインが、通常より後方に設置された(結果ボンネットがとても長くなっています)Aピラーからリヤセクションにかけて、一つながりの優美なカーブを形成しています。

 リヤの部分でこのシルエットの特徴となっているのは、ルーフラインからそのまま連続した、低く、大きな傾斜のついたCピラーでしょう。そのほか、サイドビューで特徴的なディテールとして、フロントフェンダーからドア(およびボンネット)にかけて開けられたエア排出用のベントが挙げられますが、クローム仕上げのその縁飾りにはウイングレットのモチーフが反映されています。また、21インチ5スポークアロイホイールのデザインにも、ウイングレットのモチーフが取り入れられています。

ボンネットと一体化したサイドライン

 ボディサイドの2のポイントを観察すれば、このコンセプトカーがいかに丁寧にデザインされ、コンセプトの通りに具現化されたか、よく理解できるはずです。その最初のポイントは、ウインドーシル(下端)のラインです。このラインは、フロント側ではそのまま延びてフェンダー上のシャープなエッジラインを形成していますが、フロントエンドまで来たところで、それがさらに、いちばん上にあるラジエタークロスバー両端のウイングレットにつながっています。同時に、その仮想延長ラインがラジエターグリル下部のV字に重なっており、エクステリア全体にとってこのラインがとても重要な役割を果たしています。もうひとつのポイントはキャラクターラインで、ウインドーシルの下を横切るこのラインは、クルマのエクステリアでもっとも重要なアクセントとされています。

「スポーツクーペコンセプトGTE」の場合、キャラクターラインは通称「アンダーカット」(凹面)と呼ばれる手法が採られており、外に膨らんだボディ面の下で、光を屈曲させるエッジの役割を果たしています。ラインによって生み出された段差は、ボディ前方に行くに従い小さくなり、フロントフェンダーのところでホイールアーチに接するラインと連結しています。そのラインはそのまま、フェンダー上部からホイールアーチの端にまで達する巨大なボンネットのパーティングラインになっていて、ボンネットを開けると、モータースポーツ用の車両でよくあるように、エンジンルーム内がまるごと見渡せる形になります。最後にもうひとつ、ボディサイドで注目すべきディテールとして、突出部のまったくないドアハンドルのデザインも挙げておきましょう。

リヤセクション

「スポーツクーペコンセプトGTE」のデザインの特徴である「作り手の細部へのこだわり」、「精密さを徹底して追い求める姿勢」は、リヤセクションにも見てとれます。ここでは、視覚的にはトランクリッド後端まで伸びたCピラーを介して、ルーフラインがそのままリヤセクションの水平面とつながっています。これは古典的なスポーツカーにみられるひとつの特徴で、トランクリッドの後端の突起、つまりリヤスポイラーが、クルマのシルエットを伸びやかに見せる役割を果たしています。このスポイラーの下を走るラインは、テールライト上端を通ってサイドのキャラクターラインとつながっており、さらにショルダーセクションにまで延びています。

 またルーフは、リヤに行くにしたがい幅が狭くなっており、それにより筋肉質なショルダー部を形成するととともに、キャラクターラインの凹面の下に、力強いホイールアーチを張り出させるだけの空間的余裕を確保しているのです。「スポーツクーペコンセプトGTE」は、こうした伝統的スポーツカーのデザイン手法を巧みに取り入れることで、独自のカリスマ性を獲得することに成功しました。「スポールカーらしいルックス」は、このようにして実現しているのです。

テールライト

 ヘッドライト同様に、台形型のLEDテールランプも、3次元性を意識したデザインになっています。ここでも点灯時のグラフィックには、ウイングレットのモチーフが用いられました。ベースとなる照明ユニットには2つの艶のある黒いパーツで構成されており、そこにブレーキライトのLED、リフレクター、およびLEDのガラスインサート(テールライトとウインカー用)が一体となって組み込まれています。ライトの赤いカバーは立体感のあるデザインになっています。夜間には、黒いバックスクリーンの部分は見えませんから、光源であるLEDエレメントだけが浮き上がり、美しい3次元グラフィックが演出されることになります。

インテリアデザインのコンセプト

3Dビジュアルを提供するアクティブインフォディスプレイ

「スポーツクーペコンセプトGTE」に搭載された新しいインターフェイスモジュールは、最新鋭のテクノロジーにより高い視認性とエンターテイメント性を実現しています。インストルメントパネル(完全デジタル式のメーターパネル)は、新たに考案された「アクティブインフォディスプレイ」のプロトタイプで、3Dビジュアルエフェクト(3次元視覚効果)を提供します。ディスプレイサイズは12.3インチで、インストルメントパネルのなかに自然に溶け込むような設計になっています。フォルクスワーゲンが特許を有する3Dエフェクトのアンビエントライトによって、これが可能になりました。このデジタルパネル内は、枠などを一切用いないフリーフォームの(自由な)画面になっていて、システムが必要に応じて境界のない3次元スペースを構成します。これは、かつてない優れた機能といえます。

 基本的な形では、インストルメントパネルには2つの丸型メーター(右側にパワーメーター、左側にスピードメーター)が映し出され、中央のスペースには、その他の幅広い情報が表示されます。このフリーフォームの新しいディスプレイでは、丸型メーターはビジュアルスペースの上に浮き上がるように現れ、また、ディスプレイのグラフィックは選択するドライビングモード(EモードまたはGTEモード)によって変化します。

室内4箇所に設置されたディスプレイ

 中央にあるインフォテイメントシステムのタッチスクリーンのサイズは10.1インチで、このスクリーンのすぐ隣に、空調用のスライドコントロールスイッチが並んでいます。後席にも、2つの独立式シートのあいだに、メディアコントロールモジュールとしての役割を果たすタッチスクリーン(12.3インチ)が設置されています。これによりメディアライブラリー、電話、ナビゲーションといった機能を操作することができます。

 後席乗員はまた、このタッチスクリーンを使って、フロントシートバックレストに設置された2つのスクリーン(どちらも10.1インチ)の操作も行なうことができます。なお、このリヤの12.3インチディスプレイの隣には、オートエアコン(4ゾーン空調コントロール)を操作するためのスライド式コントロールが配置されています。

ドライバーの体調を認識するナビゲーションシステム

 フォルクスワーゲンは今回初めて、車載の電子システムとドライバーを、直接つなぐインターフェイスを具現化しました。「スポーツクーペコンセプトGTE」に搭載されたナビゲーションシステムには、ドライバーの体調データに基づいて、目的地への推奨ルートを導き出す機能が組み込まれています。ドライバーの体調の認識は、スマートウォッチやアームバンドなど介して生理データを得ることで行い、それに基づいて、ワインディングを含んだ意欲的なコースか、より一般的なルートか、システムが判断を下します。ドライバーの体調データのモニタリングは、ドライバーがボイスコントロールもしくはタッチスクリーンの操作で目的地の設定を行った瞬間から開始されます。もちろん、そのためにはドライバー自身が、ナビゲーションシステムを活用する目的で、デバイスに情報をインプットしなければなりません。

 このドライバー個人を対象としたナビゲーションモードにおいて、時間と距離は2次的ファクターにすぎません。主な目的は、運転そのものを楽しむことです。推奨ルートは、ディスプレイ上にリストとして表示されるか、もしくは「カバーフロー」を介して、ドライバーに示されます。この場合、アプリを使って追加情報を得たり、ルートの画像をインスタグラムから探して表示したりすることも可能です。ドライバーは出発前に、インフォテイメントシステムで選択したルートを確認し、そのときにルートの性格や、混雑情報、天候や道路コンディションといった情報を得ることができます。リアルタイムに正確な情報を得るため、システムは、すでにそのルートを走行中のほかのクルマからの匿名情報も収集します。さらにこのシステムは、自車のコンディションや装備状況まで判断の基準に入れており、ドライバーだけでなく、道路やクルマのコンディションまで考慮した、ルートの推奨が実現しています。

コクーン感覚

 ダッシュパネルとドアショルダーからのラインが、コクーン(繭)のように4人の乗員を取り囲む感覚は、このモデルならではのものです。水平ラインを基調としたデザイン要素で統一され、上部にレザーを張ったダッシュパネルはフロントドアパネルと切れ目なく連続しており、素材の選択を含めたそのデザインスタイルが、リヤドアを経由してリヤウインドー下のトリムにまで及び、室内全体が囲まれたような「コクーン感覚」を演出しています。

簡潔な美を追求したダッシュパネル

 ダッシュパネルは、虚飾を排した率直でクリーンなデザインでまとめられています。ダッシュパネルの上部には3つの細くて優美なアルミのスロットが設けられており、空調の吹き出し口として機能しています。その下をピアノブラックで仕上げられたさらに細いアクセントトリップが横切り、そのまた下に、もうひとつのアルミ製ベンチレーションスロットが設置されています。そのスロットは、ダッシュパネルを右から左まで横断し、唯一、インストルメントパネル(=アクティブインフォディスプレイ)のところで中断されています。そして、さらにその下にもう一本、右から左まで完全に横断するアルミのトリムストリップが、ダッシュパネルの装飾の仕上げになっています。このアルミのトリムストリップは、ドアパネルの上にまで延長され、ドアハンドルの部分で「ウイングレット」のモチーフを反映して上に跳ね上がっています。

 もうひとつの特徴的なラインは、アンビエントライティングによって生み出されるもので、多様に色が移り変わる繊細で精密な照明によるラインが、ダッシュパネル(フロントドアパネルも含む)、中央のインフォテイメントシステム、センターコンソールを囲んでおり、そのうちセンターコンソールはインテリアの後部にまで延びて、後席乗員の「囲まれ感」を強調する役割を果たしています。

スポーツカーのセンターコンソール

 センターコンソールは、多くのスポーツカーがそうであるように、前方に向かって上昇するスロープを構成しており、それがダッシュパネルと交わったところに、インフォテイメントシステムのディスプレイが設置されています。ここでも、圧倒的な印象を放つのは、エレガントなピアノブラックのパネルと、それを囲むアルミの繊細なアクセントですが、その「浮き橋」のようなデザインのセンターコンソール下方(側面)に、それとは対照的な、自然な木目調仕上げが施された領域が設置され、同じ素材がドアパネルとステアリングホイールの一部にも採用されています。

 実用面に関しては、DSGシフトレバーの右側にカップホルダーが装備され、カップを温かいまま、もしくは冷えた状態で維持する機能が備わっています。6速DSGのシフトレバーは、「シフトバイワイヤー」のギヤシフトロジックを採用しています。ジョイスティックのように、レバーは通常、センターの中立位置に留まっていて、どちらかの方向に軽くクリックすることでR、N、Dのポジションへの切り替えを行ないます。Pのポジションを選ぶときだけ、シフトレバーに装着されたボタンを押します。

ドライブシステム

プラグインハイブリッドドライブ

「スポーツクーペコンセプトGTE」は、高い燃料効率とスポーティな走りを両立させるPHEVシステムを採用しています。エンジンは、3.0ℓのV型6気筒の直噴ガソリン(TSI)ユニットで220kW/299PSの最高出力と500Nmの最大トルクを発生します。それに対して電気駆動用システムは、主にリチウムイオンバッテリー(センタートンネルに搭載)と2つの電気モーターで構成され、そのうちフロント側の出力40kWの電気モーターは、6速DSG(DQ400E)ギアボックスと一体化しています。これに対して、リヤ側の電気モーターの出力は85kWで、2つのモーターとV6TSIを合計すると、最高279kW/380PSのシステムパワーが得られます。必要に応じて、前輪の駆動に対応して、リヤの電気モーターが後輪を駆動する「エレクトリックプロペラシャフト」により、4輪のすべてに駆動力が分配されます。

 スポーティに走れる「GTEモード」では、250km/hの最高速度と0~100km/h加速もわずか5.0秒という俊敏な加速性能が得られます。この卓越した運動性能にも関わらず「スポーツクーペコンセプトGTE」の燃料消費量は、わずか2.0ℓ/100kmに過ぎません。さらに「スポーツクーペコンセプトGTE」は、少なくとも50km程度の距離までは純粋な電動モード(ゼロエミッション)で走行でき、航続距離は1,200kmを超えます。

ハイブリッドモード

 スタート時の設定は「ハイブリッドモード」です。このコンセプトカーは、ブレーキエネルギー回生システムでバッテリーの再充電を行い、走行条件に応じてTSIと(または)電気モーターというように動力源を次々切り替える本格的なフルハイブリッドモデルです。バッテリーが十分充電されている状態で、ドライバーがアクセルペダルから足を離すと、全ての動力源が遮断されると同時に、ドライブトレインから切り離されます。これは「コースティング(無負荷走行)」の一形態といえます。この場合もゼロエミッション走行となります。

 一方、バッテリーの充電が不十分で、ドライバーがアクセルペダルから足を離す、或いはブレーキをかけると、2つの電気モーターが発電装置となってブレーキ回生し、電力をリチウムイオンバッテリーに蓄えます。この場合TSIエンジンは、やはり運転を停止して、ドライブトレインから切り離されます。V6エンジンだけで走行する場合には、クルマは純粋なFFモデルになります。高効率のTSIエンジンにより、この場合でも「スポーツクーペコンセプトGTE」は、優れた燃料効率を維持します。

Eモード

 ドライバーは、ボタンを押すことでEモードを選択できます。このモードでは、85kWのリヤ電気モーターだけが作動して、「スポーツクーペコンセプトGTE」は、リヤ駆動で走行します。この電動モードでの走行中、V6TSIエンジンは停止して、クラッチの働きによって、ドライブトレインから切り離された状態になります。V6エンジンのパワーが必要になると(バッテリーの充電状況およびその他の理由により)、瞬時にドライブトレインとの接続が復活しますが、そのときには、不快なショックなどは一切生じません。2つのモーターへの電力供給の役割は、容量10.7kWhのリチウムイオンバッテリーが担います。フロントのエンジンルーム内に設置したパワーエレクトロニクスが、バッテリーとモーターとの間の高圧電流を制御します。また12Vで作動する車載の電装品には、DC/DCインバーターを介して電力が供給されます。バッテリーの充電は、外部電源から、もしくは、走行中に行われます。

GTEモード

 ドライバーがGTEボタンを押と、走行モードは「GTEモード」に切り替わり、ダイナミックな性格がフルに発揮されます。「GTEモード」では、アクセルペダルの感度、シフトプログラム、ステアリングの反応がいずれもよりスポーティな設定になり、加速時にはTSIエンジンと電気モーターが同時に働いて、(いわゆるブースティング)、最大限のシステムパワーと駆動トルクが得られます。

バッテリーチャージ/バッテリーホールド

 インフォテイメントシステムのサブメニューから、「バッテリーホールド」(バッテリー電力を保持)もしくは「バッテリーチャージ」(走行中にバッテリーを充電)のデュアルモードを選んで設定することができます。目的地が市街地で、そこで「Eモード」でゼロエミッション走行をしたいときなど、事前にこのモードを活用すると有効でしょう。

「エレクトリックプロペラシャフト」による4WD走行

 必要な状況が生じた瞬間に、「スポーツクーペコンセプトGTE」は、いつでも即座に4輪駆動モードへと切り替わります。この場合(およびバッテリーの充電レベルが低いとき)フロントの電気モーターは、V6TSIからの運動エネルギーで駆動される発電装置として機能し、後輪を駆動するもう1基のモーターに電力を供給し続けます。後輪を駆動するためのエネルギーが、従来のシャフトなどの機構に依らず、ワイヤーで電気的に伝達することから、こうした仕組みは「エレクトロニックプロペラシャフト」と呼ばれています。TSIエンジンが、フロントの電気モーターを介してリヤの電気モーターも駆動することから、バッテリーの充電レベルが下がっている場合でも問題なく4輪駆動で走行できます。

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