そのオープニングラップでは、インサイド2番手発進だったSVGが真っ先に外周“ジョーカーラップ”消化へ飛び込み、ティミー、ブロンクビストの2台が先行して集団を引っ張る展開に。しかしレースはすぐさま動きを見せ、2周目にジョーカーを回ったティミーが合流してくると、続く左ヘアピンではSVGが首位ティミーのインサイドに並びかけ、2台のプジョーはドリフト状態でわずかに接触しながらSVGが前に出てコーナーを立ち上がっていく。
オーストラリア大陸のツーリングカー王者ながら、このロックダウン期間中にあらゆるカテゴリーのeスポーツで腕を鳴らしてきた仮想空間マイスターは、このヘルでもコース幅を一杯に使った盤石のドライビングを披露。背後にいるティミーをラップごとに突き放し、まだジョーカーを使用していないブロンクビストとの直接対決に向け、見た目上のマージンをじりじりと削っていく。
そして6周目のファイナルラップ。ブロンクビストがドライブする漆黒のプジョーがジョーカーへ向かうと、その進入でガードバンクにわずかにテールを接触させたブロンクビストが失速。これでSVGに勝機あり……かと思われたが、合流路へ向け立ち上がったブロンクビストが辛くも首位ポジションをキープ。そのままSVGのチェイスを振り切ったブロンクビストが、薄氷のWorldRX Esports初勝利を手にした。
「正直言って、この日はウエットの路面に苦戦していたんだ。練習のドライでは良いタイムが出ていたからね」と振り返ったイギリス出身のブロンクビスト。
実際、ウエットだったこの日のセミファイナル1では最下位に終わっていたものの、2位のケビン・ハンセン以下3台がバトル中の接触による5秒加算のタイムペナルティを受けたため、ファイナルでは3番手からスタートを切っていた。
「そう、決勝スタートでまともなポジションを得て、ティミーがジョーカーに去ってからはクリーンエアのなかハードなプッシュを続けた。それでいくらかマージンを稼ぐ良いラップができたはずだ」と続けるブロンクビスト。
「シェーン(ヴァン・ギズバーゲン)が強いだろうことは分かっていたが、僕自身の最速ラップを重ねることで、なんとかまとめることができた。ジョーカー進入はすべて台無しになりそうなミスだったけど、それ以外はうまくいったね。彼らと戦えたのは最高だったし、本当にクールなイベントだったよ」
その他、開幕戦に続いて参戦したこちらもVASCレギュラーのスコット・パイは、中間リザルトで11位と健闘。南アフリカ出身のケルビン・バン・デル・リンデやWRC世界ラリー選手権で優勝経験を持つヘイデン・パッドン、ERCヨーロッパ・ラリー選手権参戦のタマラ・モリナーロらは惜しくも予選ヒート敗退となっている。
一方、別クラスとして開催されたプロのシムレーサー10名による勝負は、開幕戦勝者の兄クエンティンを降した、現DiRT Rally 2.0世界王者でもあるキリアン・ダロルモが勝利し、こちらも雪辱を果たしている。
