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ラリー/WRC ニュース

投稿日: 2020.09.05 12:00
更新日: 2021.09.17 00:37

ラリージャパン2020年開催断念の諸事情と変更となったカレンダーが影響を及ぼす今季の行方

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ラリー/WRC | ラリージャパン2020年開催断念の諸事情と変更となったカレンダーが影響を及ぼす今季の行方

 発行済みのラリーガイド1を熟読するほど、今季ラリージャパンが開催できなかったことが残念でならない。しかし、開催中止に追い込まれたのは日本だけでなく、ポルトガル、アルゼンチン、ケニア(サファリ)、フィンランド、ニュージーランド、GB(イギリス)が日本よりも先に中止を表明していた。そして、直近では8月下旬にドイツが中止を発表し、これで8カ国のラリーがコロナ禍で開催を断念したことになる。

 その一方で、WRCプロモーターはカレンダーに空いた大きな穴を埋めるべく、WRC開催実績のない欧州のラリーを急きょシリーズに追加。9月第1週のラリー・エストニア、そして本来のスケジュールを変更して、ラリージャパンと同じ週末に開催されるイープル・ラリー(ベルギー)の2戦が、新たにWRCのステータスを獲得した。

 エストニアは世界王者オイット・タナックの故郷であり、彼は昨年までにトヨタ・ヤリスWRCで2回優勝している。また、イープル・ラリーはティエリー・ヌービルのホームイベントであり、彼は過去に何度も出場しコースを熟知している。さらに、イープル・ラリーの運営トップはヒュンダイWRCチームでマネージャーを務めるアラン・ペナスである。

 つまり、この変更カレンダーはヒュンダイにとってプラスでこそあれ、マイナス要素はほとんどない。一方、トヨタは過去非常に相性が良かったフィンランドとドイツがなくなり、勝田貴元がヤリスWRCで参戦し、貴重なデータを収集したラリージャパンも中止になったことで、アドバンテージを失った。

 ラフグラベルイベントのラリー・トルコは、ヤリスWRCがなかなか速さを示すことができない数少ないイベントで、2018年大会ではタナックが優勝したが、それはライバルの自滅によるもの。トルコの荒れた道で、車高を上げたヤリスWRCのハンドリングバランスはあまり良くない。もっとも、その対策は進められ、ギリシアのラフグラベルで開発テストが行なわれているようだ。

 現在、トヨタはマニュファクチャラー選手権で、2位ヒュンダイに対し21ポイント差の首位に着けている。ドライバー選手権もセバスチャン・オジエが首位、エルフィン・エバンスが2位と、優位な立場だ。しかし、グラベルイベントのエストニアで、選手権上位の彼らは出走順のハンデを負うことになり、ドライコンディションになれば5番手スタートのタナックが圧倒的に優位となる。エストニアの道は表面に砂利が多く、出走順が早いオジエやエバンスは、その砂利かき役を担うからだ。

 また、開幕3戦ではi20 WRCをまだ完全には自分のものにしていなかったタナックは、ラリー休止期間中にマッチング作業が進み、ワークスドライバーの多くがテスト目的で出場した8月の南エストニア・ラリーで圧勝を収めた。その際、「クルマはいままでで一番いい仕上がりだ」と自信を示し、全8SSのうち7SSでベストタイムを刻むなど、ライバルを寄せつけなかった。オジエもエバンスもタナックのペースにはついていけず、同じくi20 WRCに乗るヌービルも競争相手にならなかった。

 唯一、健闘したのはセカンドベストタイムを連発したトヨタのカッレ・ロバンペラ。彼にとってWRカー4戦目となるラリー・エストニアでは表彰台争いが期待できそうだ。出走順がタナックよりもひとつ前の4番手であることも、ロバンペラにとっては追い風となるだろう。

 以上のように、今季のWRCは開幕前とはまったく違う姿のシリーズとなり、今後開幕3戦終了時とはパワーバランスが大きく変わるかもしれない。この先、さらにイベントが中止になることや、新たなるイベントが追加される可能性もゼロではなく、先行き不透明ななかでシーズンはリスタートする。シリーズ争いを予想することは現時点で非常に難しいが、変更があればその都度、状況と分析を本誌誌上でアップデートしていくつもりだ。


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