ル・マン24時間を見続けてきたジェロームにとって最良の年は、やはりトヨタが初優勝した2018年だという。

「チームの一員として、ル・マンで勝つチャンスを与えてくれたトヨタに心から感謝してる。ル・マンで勝つというのは誰にとっても夢だし、僕にとっては特別なことだからね」

 一方、彼にとってワーストな年は、目の前でル・マン初優勝の夢が霧散した2016年。彼の中で何かが変わってしまったようだ。

「これは勝てるだろう、絶対に勝てる! とみんなで盛り上がっていたのに、最後の最後であのような結果になってしまった。あの時僕らは、無邪気さを失ってしまったんだ。たとえトップを走っていても、最後の瞬間にすべてを失う可能性があることを知ってしまった。2016年のレースは、僕たちの無邪気な心を打ち砕いたんだ。あれ以降、いつもレースが始まる前から終わるまで、自分の中で疑いの気持ちを持ち続けているよ」

【TGR WEC inDepth(10)マーケティング担当のロマン】
日本で言えば御殿場出身&在住にあたるだろうか。幼少期からすぐそばにあった“ル・マン”への想いは、人一倍大きい。24時間レースがチェッカーを迎えたとき、ジェロームにとっての次の1年が始まる。

 では『ル・マン・ラバー(Lover)』であるジェロームにとって、ル・マン24時間のレースウイークでもっとも好きな瞬間はいつなのだろうか?

「テストデーの日の朝10時、最初のクルマがピットレーンを離れるサウンドを耳にする時だね。逆に、もっとも嫌いなのは決勝日の土曜日の朝、ホテルの部屋を出てドアをロックする瞬間だよ。次に部屋のベッドを見るのは、通常であるとレースが終わった後だからね。それって、1年間やってきた仕事が次の36時間で終わってしまうのが寂しいということ。だから僕は、土曜日の朝が大嫌いなんだよ」

 ル・マンが好きで好きでたまらないという気持ちが、その言葉の端々から伝わってくる。ジェローム・フジャッレは最高の仕事人であるのと同時に、ロマンチストでもある。

「ル・マンのない人生なんて想像できないね。自分がまだ、ル・マンのこれからの100年の物語の序盤にいることを願っているよ。僕にとってル・マン24時間は、人生そのものなんだ」

※文中敬称略

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