──アウディがLMDh車両の開発を完全に中止しましたが、どのようにあなたはその知らせをアウディから受けたのですか?

NM:確か、レネ・ラストと何かのレースかテストのために移動をしている最中で、空港にいたときだった。アウディからスマートフォンに送られてきたメールに、ミーティングへの招集が記載されていたんだ。レネと一緒に隣同士に空港の椅子に座っていて、ふたりが同時に同じ内容のメールを受信し、思わず顔を見合わせて、この感じだとものすごく良いことかものすごく悪いことしかないだろうな、と言い合い、なんとなく悪い予感がした。

 僕とレネはLMDhの開発ドライバーもしている中で、何となく正確な方向へ行っていないのではないかと感じていたからね。

──ミーティングに参加し、アウディ幹部からLMDhの開発中止を言い渡された時、どんな心境でしたか?

NM:突然目の前が真っ暗になった。自分の次のキャリアやステップアップに希望を抱き、そして自分の次の目標を描き、それに向かって邁進している最中に、突然幕を下ろされるなんて、誰が想像していただろう。それによって、ものすごくフラストレーションが溜まった。

 それも、このLMDhプロジェクトはここ数カ月で始まったのではなく、何年も前からこつこつと日々開発を続けていたし、僕たち開発ドライバーもどれだけの情熱をもって、ル・マンを夢見て頑張ってきたか……。

 アウディのLMDhの完全撤廃は、世間のみんなが知っているようにF1の新レギュレーションが決定した直前だった。組織的に見るとF1とLMDh、そしてダカール等の大きなプロジェクトを同時に行うのが非常に難しいことは理解できるが、もっとその中にいる人間のことも考えて欲しかったと思う。これで僕のアウディのキャリアは絶たれたことに間違いないから。

2021年4月29日に公開されたアウディLMDhプロトタイプの車両イメージ
2021年4月29日に公開されたアウディLMDhプロトタイプの車両イメージ

──あなたはおそらく、シミュレーターのドライブは数多くこなしていましたよね?

NM:シミュレーションはもちろんのこと、何度もアウディスポーツへ通い、エンジニアらとLMDhのマシン作りに多くの時間を割いて、よりよいマシン作りをしようとみんなで一丸となっていた。僕ひとりではなく、LMDhのプロジェクトに所属しいていた全員が、突然何もすることがなくなる、この先の目標を失うなんて、本当に信じられなかった。

──LMDhの中止がなければ、アウディに留まっていましたか?

NM:もちろん! アウディファミリーの一員となって約9年、自分としてはアウディワークスの仲間たちとは調和が取れて、よい関係が続いていたと思う。彼らと一緒によいクルマを作り、彼らと一緒に勝利を遂げたいといつも思っていた。だからこそ、この先の契約書にもサインは既に済ましていたんだ。それだけに、本当にショックで残念でならなかった。

──では、どういった経緯でプジョーへ加入することになったのですか?

NM:プジョーのLMHプロジェクトの幹部には、元アウディワークスのLMP1出身者が何名もいて、以前からよく一緒に仕事をしていた仲だったし、彼らがアウディから離れても交流は続いていたので、彼らを通して少しずつプジョーとの関係性を築いていった。

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