4月29日、WEC世界耐久選手権の2023年シーズン第3戦スパ6時間レースがベルギー、スパ・フランコルシャン・サーキットで行われ、TOYOTA GAZOO Racingの7号車GR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)がシーズン2勝目をマークした。
ダンプ&低温というトリッキーな路面コンディションとなったことも手伝い、クラッシュなど多くのアクシデントが発生した今戦。一方で最終盤まで続く僅差のバトルも生まれるなど見応え充分なレースとなったWECスパの決勝日から、各種トピックスをお届けする。
■まるで映画のワンシーン
***トヨタの8号車をドライブし、36番手スタートから総合2位フィニッシュを果たしたセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮は、ドライバーズランキングで首位の座を守った。彼らは今大会で開幕戦セブリングに続く2勝目を挙げたチームメイトを5ポイントリードし、72ポイントで次戦ル・マン24時間を迎える。
***キャデラックは、レンガー・バン・デル・ザンデ駆る3号車が2番手を走行中にオー・ルージュで大クラッシュを喫した原因について明らかにしていない。「レンガーは素晴らしい仕事をしていたし、ダニエル(・シェパード/エンジニア)もタイヤについて素晴らしい選択をした」と、オペレーション兼ストラテジストのマイク・オガーラは語った。「私たちはクルージングをしていただけだ。しかし残念ながら、このトラックでもっとも重要でもっとも負荷の高い部分でちょっとした問題が発生し、我々の一日は終わってしまった」
***チームはレース中、事故の原因はクルマのパワーステアリングに問題があったのではないかと疑っていた。バン・デル・ザンデは3号車キャデラックVシリーズ.Rが高速でタイヤバリアに衝突したとき、「まるで映画のワンシーンのようだった」と振り返っている。
***93号車プジョー9X8は、メカニックが作業エリアにいる間にピットを離れたことによりレース後、5秒間のタイムペナルティを受けた。このため、正式結果では708号車グリッケンハウス007 LMHの後ろに下がり、総合14位/ハイパーカークラス8位となった。
***プジョーは、14位と17位に終わったものの、93号車、94号車ともにメカニカルトラブルなくレースを完走したため、その信頼性に明るい表情を見せた。テクニカルディレクターのオリビエ・ジャンソニは、チームの自信について聞かれ、「段階的に成長している」と答えた。「確かに、我々はその点でポルティマオにいた時よりも少し自身を持っているが、ル・マンが難しいレースであることは間違いない」
***ジャンソニは、94号車がピットレーンの終点で停止したのは、クルマの問題ではないと説明した。「(それは)燃料供給装置に関係している」と彼は言った。「システム上の障害が発生し、実際に再スタートできるかどうかがわからなかった。エネルギーに関しては合法だ。だからピットレーンで停止したんだ」この問題によって遅れた後、プジョーは94号車の残りのレース時間を使って、3種類のタイヤコンパウンドを含むいくつかの項目をテストしている。
***一方、93号車は、ジャン-エリック・ベルニュがLMP2マシンに後ろから追突されたことで、終盤にペースを落としてしまった。「その後、クルマのフィーリングが良くなかったので、高速コーナーではのんびりしていた」と2度のフォーミュラEチャンピオンはSportscar365に語った。「マシンを無事に戻せてよかった。それは簡単なことではなく、本当に大変だったんだ」
■安全策が裏目に
***フェラーリのGTとスポーツカーのレース&テストマネージャーであるジュリアーノ・サルヴィによると、51号車のフェラーリ499Pは、今シーズン初の表彰台を獲得するために2回の追加ピットストップを行った際に“ふたつの緊急事態”に遭遇したという。1回目はスローパンクチャーのため、2回目は最後のセーフティカーによる緊急燃料ストップで、レース再開後にアレッサンドロ・ピエル・グイディが再度ピットインすることになった。
***サルヴィは、フェラーリAFコルセがドライコンディションで最高のパフォーマンスを発揮するようにマシンをセットアップしていると付け加えた。「私たちのクルマは、レースコンディションの最後の部分にもっとも焦点を当てていた」と彼は言った。「(レース終盤は)かなりグリップのあるコンディションだった。その時、私たちのデグ(デグラデーション)は本当に低かったと思う」
***フェラーリとプジョーは、どちらも2台のハイパーカーをウエットタイヤでスタートさせる安全策をとったが、路面が乾いてからはそれが裏目に出てしまった。「もっとも安全な選択肢を選んだ」とプジョーのジャンソニは語った。「結果的にそれは間違った選択肢だったようだ」