■読んで撮ったふたりのパルクフェルメと、“手の表情”
──では最後に、人物カットを。2枚で1組みたいな形になっています。まずは最終戦から、こちらのカットです。
小林:おぉ。これはグッときますよねぇ。シンメトリー感も面白いし、やっぱりあのシーンを思い出すし。感動的な、いいシーンだったよね。
後藤:はい!
──もうこれは、とやかく言う写真ではないですかね。
小林:そうだね。こういう瞬間にどう撮るか、どう狙うかは、本当に瞬時に決めなきゃいけないから。
──後藤さんとしては、撮れた瞬間にガッツポーズだったんじゃないですか?
後藤:でした! 私の身長だと前の方に行っても撮れないので、180-600mmを構えて、一番後ろ、ピットウォールの一段上からずっと狙ってたんです。
小林:よく撮ったねぇ。だから、そこも『読み』が大事ということ。後藤さんとしても、パルクフェルメを何度も経験して、SUGOでは上から撮ったけど僕にいろいろ言われたから(笑)、そういうのも頭に残っていたんじゃないでしょうか。「ここからだったら、何かいいシーンが撮れそう」、そんな読みがやっぱり大事ですよ。
──これはお褒めいただきましたね。ではこれと組になるとも言える、最後のカットにいきましょう。
小林:あぁ、なるほどね。いいじゃない。
後藤:やったー!
小林:『手の表情』がありますね。これはいい写真だね、非常に。
後藤:ふぅ〜(照)。
──確かに、岩佐歩夢選手の「手」が今シーズンを物語っているように感じます。
小林:これは僕の持論なんだけど、人物の写真はどちらかと言うと『技術よりチャンス』じゃないかと思うんです。いまはカメラとレンズの技術も進化して、フォーカスだって合わせてくれるし、手ブレだって防いでくれる。でも、それを「どう撮るか」みたいな部分が非常に重要で。
後藤:はい。
小林:大学の授業でも話すのですが、被写体を理解することが大事。今回のパルクフェルメや表彰台もそうだけど、どういう流れや動きになるのかが分かって、予測できていないと撮れないわけです。
後藤:確かに。1年間、スーパーフォーミュラの戦いを追ってきたから、最後のパルクフェルメではこのふたりがこういう動きをするかも、と思えたわけですもんね。
小林:そう。普通に走りの写真を撮るときも、そのドライバーがどういう人なのかとかを知っているだけで、撮り方は変わってくるから。たとえば昆虫を撮っている写真家の方は、やっぱり虫のことにすごく詳しいからね。そういった意味での『被写体への理解』が、上達するうえでものすごく大事になるんじゃないかと思います。
■技術と同時に大切なのは「心が動く練習」
──さてさて、そろそろ締めに入りたいと思います。1シーズン連載してきて、後藤さんはどんな手応えを感じていましたか?
後藤:こんなにちゃんとフィードバックをいただけることが、まずはありがたかったです。自分の写真を見返している時にも「小林先生はなんて言うかな?」と考えるようになりました。コースサイドに入れるようになって次で2年目ですけど、やならなきゃいけないことや、目標は見えてきたかなと。
小林:それは何?
後藤:たとえば『画角いっぱいにクルマを収める』といった基本的なことはできるようになってきた部分もあると思うのですが、“プロとして納品する写真”という部分では、まだまだ一辺倒だったりすると感じています。やっぱりコースや季節、光、ドライバーの特性、関係性などをちゃんと頭に入れた上で撮らないと、人の心に刺さる写真にはならないと感じたので……勉強します!
小林:これは学生さんにもよく言うのですが、技術は、やっていれば上がります。それとは別に、月並みではあるけど、やっぱり感性を磨くことがすごく大事だと思います。だから、写真に限らず、「心が動く練習をしなさい」とよく言っているんです。音楽でも映画でも、何でもいいんだけど、心が感じやすいようにしておきなさい、と。それが写真を撮るときに、何らかの形で出てくるものだと思っています。
──「心が動く練習」、いい言葉ですね。
小林:後藤さんには後藤さんにしかない感性が絶対にあるから、そこを大切にしながら、この先も頑張ってもらえればと思います。
後藤:はい、ありがとうございます!
──綺麗に締まったところで、ちょっと告知を。小林先生の48年のキャリアをまとめた写真展が、2月3日まで、東京・品川で開催中です(詳しくはこちら:https://personal.canon.jp/event/photographyexhibition/gallery/kobayashi-chasing)。入場無料ですので、ぜひ読者の皆さんも、足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
小林:ありがとうございます(笑)。ぜひ観に来ていただけましたら嬉しいです。
★今回の教え
- テンションが上がったときこそ冷静に
- グランツーリスモで逆走して撮影場所を探そう
- 被写体への理解を深め、心を動かす練習をせよ
■Profile
ごとう ゆうき
2019年よりレースアンバサダーとして活躍。写真を撮られているうちに撮ることにハマり、フォトグラファーの道へ。Nikonが展開するスポーツファンのための推し活写真サービス『フォトサポ』アンバサダー。2025年からはスーパーフォーミュラの公式カメラアシスタントを務めるほか、KYOJO CUPでも公式フォトグラファーとして活動する。愛称は「きのちゃん」。愛知県出身。
https://www.kinochan.fun/
こばやし みのる
日本大学藝術学部写真学科を卒業後、二玄社CAR GRAPHIC写真部に入社。クルマおよびモータースポーツ写真を中心に撮影を続け、やがてフリーランスに。2009年より日本レース写真家協会(JRPA)会長。2025年現在、スーパーGTおよびスーパーフォーミュラで、オフィシャルフォトグラファーを務める。1955年生まれ、神奈川県出身。
https://minoru-kobayashi.com/



