──鈴鹿テスト前日に発表された今季のレースフォーマット変更も、アスリート委員会を通じて上がってきた声を反映したものだと上野社長は説明していました。
山本:皆が「スーパーフォーミュラを良くしたい」とは思っているわけですが、それをひとつにまとめていくことはとても難しい作業になります。
ただ、昨年何度かJRPの各担当とドライバーを交えて話し合いを持ったことで、文章や伝聞などとは異なる『直接の対話だからこそのニュアンス』が互いに伝わったと思うんです。 JRPサイドは「あぁ、選手はそういう風に思っているんだ」、ドライバー側は「そこまで考えて運営してくれているんだ」という風に思ってくれたようなので、対話というのは大事だなと改めて感じました。
その流れがあって、フォーマット変更についても「こういう風にやりたいんだけど、どう思う?」という問いかけが(JRP側から)あり、「それはいいですね」とか「ちょっと違うと思います」といった、建設的な対話ができたんです。いまはJRPのメンバー、競技役員の方も含めて、かなりモチベーション高くやってくださっていますので、それが意見の反映やフォーマット変更における柔軟さにも表れていると感じます。
また、そういった風通しの良さは、最終的にはお客さんの動員にもつながっているのかなと感じてもいます。やっぱりまずは内側で納得できるものができないと、外から見ているお客さんには伝わらないと思いますから。その、意見や対話をまとめる作業を、少しでも手伝えたらなと思っています。
実際昨年は、レース毎に全ドライバー宛にヒヤリングシートを送らせてもらい、僕から気になっていた部分について質問をしたり、現場で選手から上がった意見に対して、各ドライバーにもそれを展開して確認するといった作業を行っていました。その問題となっていた部分については、開発テストで実際に確認したり改善に向けたテストなども行いました。
ただ、選手はやっぱり選手であって、選手側がすべてのルールを作って決めていくのはスポーツではないと思うので、意見やリクエストは聞いてもらいつつ、競技運営する側、プロモーションする側にルールなどはしっかりと作ってもらうという、『スポーツとしてあるべき姿』をきちんと保つための、アスリート委員会でありたいですね。
──今季のフォーマット変更について、委員長の目線からもう少し説明してもらえますか。
山本:決勝のピットウインドウの部分に関していえば、やはり昨今問題点として指摘されているダブルピットの問題がまずありました。ただ、一気に変えることは難しいですし、なにかひとつを変えても別の問題が生じる可能性は多いにあります。
今回のフォーマットの改正では、『また別の問題を生まないようにするための策』も講じることはできているかなと思っていますが、実際に今年レースをやってみて、また出てきた課題をしっかりと将来に向けて改善していきたいですね。
フリー走行終盤の組み分け走行についても、20数台がいっぺんにアタックすることで、物理的に距離が取れずクリアラップが取れないという問題がありました。また、一度に多くの台数が走ると赤旗のリスクも高まるので、「なんとかできないか」という話し合いの中で、選手の声として出てきた案です。
また、1レース制イベントでの新たな予選フォーマットについても、「予選で速いドライバーがきちんと称えられるべき」というドライバーの意見から、実現できたものです。
そういった声を聞いて、どうしたら実現できるのか検討し、JRPやサーキットさんと調整し、さまざまな人の協力もあって、それを実行できるところまで漕ぎ着けられたという形ですね。
■「無事にレースが終わって欲しい」
──アスリート委員長という立場になり、現在はどういった心境や心構えでレースを見ているのですか?
山本:うーん、難しいですね……。正直、誰が勝ったとしても喜んだり、悲しんだりする立場ではありません。やっぱりレースを円滑に、そして安全に終えるということが自分の責務だと思っているので、「何事も起きずにレースが終わって欲しい」という気持ちがまず一番にあります。
あとは、どんなレースでも、大なり小なり課題や問題、改善点は出てくるので、そういった部分にはとくに敏感になって見ています。「やっぱりここは直したいよな」「こういう声が上がってくるだろうな」とか。先手を打って動かなければいけない部分もありますので、レースの見方という意味ではこれまでとはまったく異なりますね。
2026シーズンもそのサイクルを繰り返して、なるべくレスポンス良く、改善できるようにしていきたい。自分のポジションが2027年も2028年もあるかは分かりませんが、いまの選手たちを含め、このスーパーフォーミュラに関わっている方々が毎年設定している目標を、しっかりとクリアできるような環境を整えることを、お手伝いしていきたいと思っています。
本当に微力ながら、ではあるのですが、この世界で長くやらせてもらってきたからこそ伝えられる部分もあると思いますし、幸いまだ現役ということが説得力につながる部分も多少はあると思っているので、そういったところも「活用してもらえる」ように頑張っていきたいですね。
いまはとにかく今年のレースが楽しみですし、また無事に一年が終わって欲しいと願っています。

