一方、レース後のミックスゾーンに登場したフェネストラズは、野尻とは対照的に笑顔がなく、「戦略的に良くないレースだった。うまくやれていれば2番手くらいはいけたかもしれない。残念だった」と開口一番に話した。
2番グリッドからスタートしたフェネストラズだが、野尻に抜かれて3番手に後退し、トップ2台を追いかけていく展開となった。15周目に野尻がタイヤ交換を済ませたのをみて、翌16周目にフェンストラズもピットイン。しかし、トップを走っていた大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)と同じタイミングでのピットとなり、彼を逆転することはできず。結局後半スティントも大湯のペースに付き合うことになってしまった。
「平川が背後から迫っていきていたのだけど、そこでチームからピットインの指示が出た。そのタイミングで本当に良いのか、僕自身は確信を持てなかった」というフェネストラズ。というのも、本人は第4戦オートポリスのような展開を狙っていた。
第4戦ではトップを走る野尻が先にピットインし、平川とフェネストラズがステイアウトを選択。結果的にふたりが野尻を逆転し、1位と2位をわけ合った。
「オートポリスのときもチームはピットインの指示を出したけど、僕はピットに入らずに引っ張ることを選択した。それが結果的に成功して2位を獲得できた。それでチームも学んだだろうと僕は思っていた。もし、オートポリスのときも、チームが言ったタイミングでピットに入っていたら、今日と同じことが起きてしまっていただろう」
「ここに来る前のミーティングで、『一番重要なのはクリーンエアで走れるところピットアウトできることだから、それも踏まえてピットストップのタイミングを見極めよう』とエンジニアに伝えたのだけど、結果的に今回は逆のことが起きて、ピットアウト後はトラフィックに引っかかり、ノーチャンスとなってしまった」
「僕のエンジニアも、そのことは理解していて、ステイアウトするべきと考えてくれていたみたいなんだけど、戦略の部分はエンジニアだけじゃなくて最終にチーム全体で決定することだから……クリーンエアであれば、速く走れるクルマがあったし、野尻とのポイント差を縮める大きなチャンスだったから、すごく悔しい」
「本当に残念だけど、ミスは誰でも起こしてしまうこと。一番重要なのは、同じことをこの先やらないようにしなければいけない」
フェネストラズにとっては不本意な結果となってしまったが、懸念していた新しいクルマの違和感については、もてぎ大会を終えて不安な部分はかなり払拭された様子。同日午前の予選で2位を獲得した後の記者会見では、このようなことも話していた。
「金曜日のフリー走行では、違和感を感じることが多かった。今も以前のシャシーと比べてフィーリングがまったく同じとは言えないけど、少しずつ慣れてきた。実際に第7戦、第8戦と予選では良いポジションにつけられた」
「今振り返って考えると、以前のシャシーの方が運が悪かったのかなと思うところがある。僕がデビューした2020年もたくさんクラッシュがあって、問題が起きていた。だから、新しいシャシーの方が運を呼び込んでくれるのかなと、期待している」
これで、野尻とのポイント差は32ポイントとなり、逆転タイトルのためには鈴鹿の2レースともに高得点が必要となったフェネストラズ。最終決戦に向けては「一生懸命、全力でやるだけだよ!」と、短いコメントに留めていた。奇跡の逆転チャンピオンに向けて、さらに進化した状態で鈴鹿大会に乗り込めるかが、ひとつの注目要素となりそうだ。
そして、鈴鹿大会ではドライバーズタイトルだけでなく、チームタイトルも決定の瞬間を迎える。第8戦を終えて、TEAM MUGENが132ポイント、carenex TEAM IMPULが113ポイント、KONDO RACINGが91ポイントとなり、こちらも三つ巴のタイトル争いが繰り広げられそうだ。