■「精度が上がった」2017年版VivaC 86 MC
武士はガレージで、VivaC 86 MCの細かなところまできっちりと計測して父に報告・相談するべく仕事を進めてきたが、「やり始めたら止まらなくなった(笑)」とさまざまなパーツのひとつひとつの“精度を上げる”ことに熱中していく。
「ダンパーやバンプラバーひとつ、取りつけのブラケットのカラーひとつだったりと、ビシッと出るように測定した。やればやるほどいろんなものが見えてくる。クルマはもうできあがっていると思っていたけど、このベースにもっと先があると思って見ていった。ちょっとずつやるとすべて数字でも反応してくれるから、メチャクチャ面白い」
さらに、「トラブルもいっぱいあるけど、『トラブルを直すのが楽しい』と思えるようなヤツが集まっている」という若手メカニックたちも奮闘をみせる。あるトラブルがVivaC 86 MCにはあったというが、それを見つけ対策したのだという。
「逆に、2年間“爆弾”がある状態で走ってたというね(苦笑)。あぶなかった若手のメカたちが発見してくれた」
幸い、父・春雄も無事に退院した。まだ流動食を食べていて、少しろれつが回っていない状態だったというが、すぐにガレージにやってきたのだとか。「まだフラフラしているのに、問題の検証をしていたら、いきなりパーツを組み始めちゃった。しゃべるのもうまく聞き取れないけど、『ここはこうだ!』って。やっぱり土屋春雄はバケモンだな……と痛感しました」
こうして、2017年バージョンのVivaC 86 MCは「つちやエンジニアリングで初めて土屋春雄がいないで作られたクルマ」となった。ただ、外観からのアップデートは、アルミ板で作られたサイドステップ部分のみだ。しかし、武士がこだわった精度向上により、「エンジニアとしては『今まで出たことがないような数字が出る』」クルマとなった。
そんなVivaC 86 MCは、得意のコースとは言え、岡山国際サーキットでの公式テストで、2日目のトップタイムをマークした。