「予選でクラッシュしてから、翌朝4時までにマシンはほぼは直っていました。ただ、そこから細かいところを調整したり、(新しいカウルに)カッティングシートを貼って外観を整えるのに、さらに2時間。全部終わったのは6時くらいですね」
「(修理総額は)だいたい700~800万円くらいかな。ただ、これがGT3だったら、この額には収まらない。1000万円はかかるでしょうね。僕たちは自分たちでパーツを作っているので、仮に修理に使ったパーツを売るのであれば、それくらいの額という話ですね。みんな、レースでぶつかっている時、高級外車1台分くらいの金額がなくなっている。恐ろしい世界ですよ」
「大クラッシュしたチームなんかは、世田谷に高級マンションが買えるくらいの費用はかかっていますね。その“マンション”がまたぶつかるかもしれないのにレースをやりたがるというのが、馬鹿な男の世界。レースの醍醐味ですね(笑)。ただ、お客さんは、そういった部分にもドキドキすると思うんです」
「そして僕たちもクラッシュは必ず起きると想定して、部品を用意しているし、設計段階でも『ここは衝撃で外れるようにしておこう』と策を講じている。部品も半アッセンブリ状態にしておいて、次に付ける時にすぐ交換できるように準備しています。もし、あの時のクラッシュを町の板金屋さんで直そうとしたら、3カ月はかかると言われると思います」
「スーパーGTに来ているメカニックたちは、どんなクラッシュでも次の日の走行に間に合わせようとするし、決勝には間に合わせる。ここ最近、予選でクラッシュして決勝に出られなかったチームはないんじゃないかな。乗用車に近いGT3でも、なんとか間に合わせますし、『このボルトが足りない』といった場合も、まわりのチームのコミュニケーションを取りながら“借り物競争”をする。ほかのチームも快く部品を渡してくれますね」
レースで争っていても、困ったときは助け合って、またレースで戦うのがスーパーGTならではのチーム間の絆の強さ。今回は胃が痛くなるようなお話から、ほっこり暖かくなるような深イイお話まで聞くことができました。

