■大本命は“過去最高の状態”のHoppy 86 MCか!?

 そして、多くのチームから2018年の“大本命”と目されるのが、Hoppy 86 MCを走らせるつちやエンジニアリングだ。チームはもてぎから今季のテストをスタートさせたが、2017年最終戦から「マシンは何もいじっていない状態」だという。そしてもてぎでは、チーム代表にして監督、エンジニアも務める土屋武士がひさびさにマシンに乗り込んだが、「今までこんなレーシングカーには乗ったことがない」というほど、乗りやすいものに仕上がっているという。

 これはマシンに初めて乗り込んだ坪井翔も、そして今季もドライブする松井孝允も口を揃えており、もてぎでも岡山でも、新たなパーツを実験的に投入するも、「元に戻して下さい」とドライバーたちが言うほど86 MCが煮詰まっているのだとか。岡山公式テストでも、タイムがその速さを証明している。

 また、岡山公式テストは土屋がドライバーとしてニュルブルクリンクに向かう予定があったため、当初は「チームに任せるつもりだった」という。テストプログラムも完全に組まれており、まさに“非の打ち所がない”状況だろう。岡山ではトラブルもあったが、それ以外の状況を見ると、開幕戦の本命は間違いなくHoppy 86 MCだろう。

 ただしこれで開幕戦はHoppy 86 MCが優勝か……!? というと、それを断言するのはまだ早そうだ。18日の走行2日目午後、スタート練習が行われたが、GT300の“ポールポジション”からスタートしたHoppy 86 MCのステアリングを握っていたのは坪井。土屋監督からの指示は、「これも練習だからな。絶対に抜かれてくるな」だった。

「なのに、すぐに7番手くらいまで落ちてしまって。(昨年乗っていた)RC Fだったらそんなことはなかったんですが、ストレートが速いということは偉大だな……と(苦笑)」

「マザーシャシーはひとりで走っていてる分には最高に楽しいし、速い。でも、できればレースはしたくないと思いましたね。昨年チームの皆さんが体験したことを身をもって知りました。RC F GT3に乗っていた立場からすると、MCは多少ストレートは遅かったですが、見た目そこまでじゃなかった。それでコーナーが速いから勝ち目ない……と思っていたんです」

「でも、今日実際にレース形式で走ってみたら、ストレートが遅い! アウディにもポルシェにもバンバン抜かれて、『こんなに抜かれるんだ!』って(苦笑)。予選で前に出ても、レースで一度抜かれたら抜き返せないし……。MCの難しいところを痛感しましたね。岡山でこれなら、富士ならどうなってしまうのかと……」

「MCはたしかに速いですが、GT300はそれぞれのマシンにいい点、悪い点があるので、それをどう活かせるかだと、よく理解しました」

 2017年はGT3をドライブし、今季Hoppy 86 MCに乗り換えた坪井のこの言葉が、GT300の難しさを表現しているだろう。圧倒的に速いかもしれないHoppy 86 MCとて、レースではどうなるか分からない。集団に飲まれてしまったら、それを挽回するのは至難の業だ。結局今年も、決勝レースのなかで与えられた道具をフルに活かすことができるドライバー力、チーム力が秀でたチームが、シリーズをリードしていくことになるのだろう。

Hoppy 86 MC
スタート練習後、ポジションを守ろうとした坪井翔だが、少しずつ順位を落としてしまう。
岡山公式テストでのGT300マシンたち

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