■まわりに迷惑をかけたくなかった
こうして15位フィニッシュを果たしたCARGUY Racing。木村は、今季スーパーGTに参戦するにあたってみっつの目標を掲げていたが、これがすべて達成されることになった。
「今年参戦するにあたって、大きな目標をみっつ掲げていました。ひとつはQ1突破。ふたつめはQ2で、私自身がプロを相手にポジションを上げること。みっつめは、15位以内というものだったんです。これは監督のケイ(コッツォリーノ)とも話していて、彼は『15位はいける』と言っていたんです」と木村。
「これを開幕戦で達成した。手ごたえをつかむことはできましたね」
ではなぜ2年10ヶ月ほどのレースキャリアで、スーパーGTを完走し、目標達成にこぎ着けることができたのか……。これには理由がある。じつは木村は今季開幕に向けて、ビジネスのスケジュールを調整し、8日間+3日間の日程を組み、岡山国際サーキットで“合宿”と称した走り込みを行っていたのだ。NSX GT3はもちろん、岡山国際サーキットでレンタルしているF3もドライブしたという。
常々木村は、「練習は大事」だと繰り返す。それはどんなスポーツでもそうだ。練習なくしていいプレイはできない。ただモータースポーツでは、どうしてもそこに資金という壁ができてしまう。ジェントルマンドライバーが速くなるための王道ではあるが、木村はその壁を自ら取り払いながら、ある思いで岡山をはじめさまざまな場所を走り込み、レースキャリアの少なさをカバーしようとしたのだ。
「練習の成果は、デカいなんてもんじゃないです(笑)。第1戦の決勝のときは合宿のときを思い出していました。ずっとその時もバトルをしていたんですが、『合宿でやったな〜』と思っていたので、ほぼミスがなかった。それは合宿の成果ですね」と木村。
「合宿をしたのは、私のなかで『結果うんぬんより、とにかく迷惑をかけたくない』というのが大きかったんです。オーガナイザーにも他のチームにも。特に初めてスーパーGTに出てきて、どんなチームか分からない、ジェントルマンドライバーが乗るチームでしたから」
「スピンやコースアウト、オイルを撒き散らすとか……。もちろんレースなのでそれが起きるのは仕方ないですが、新参者がそれをやってしまってはいけない。そこはなかったので、良かったです」
