「レース後半は残り5周くらいになって、2番手との差が広がってきたところでようやく、映像を見られる状態になりました。それまではもう……映像を見たくないというか、見れないというか」

「ああいう(1秒差以内の接近した)展開だと、自分が走っているとある程度読めるんですけど、相方が走っていると、やっぱりドキドキしちゃう。まともに映像を見れないので、1回、寝ようと思ったくらい見たくなかったです。もちろん、寝れなかったですし(笑)」と、その時の状況を振り返る伊沢。

「RAYBRIGも開幕戦でタイヤ無交換であれだけのスピードを表現していたし、今回のレースに限っていえば、向こうはウエイトハンデが重いので、そういう部分で最後に向こうのペースが落ちたと思いますし、ピットインのタイミングもジェンソン(バトン)よりも僕の方が後に引っ張れたので、そういうほんの少しの部分で勝てたかなと思います」と、勝因を振り返る。

 今年はスーパーフォーミュラでも2戦を終えて予選は4番手、5番手と上位で速さをみせている伊沢。国内最高峰カテゴリーのふたつで存在感を増しつつあるが、本人はどう感じているのか。

「そうですね、今年はSF、GTも走った予選は全部上位に来れています。でも、俺自身は何も変わってないですからね。その時にいいクルマ、いいセットアップの好みに合わせてくれているチームのお陰で、レーシングドライバーは1年でそんなに速くなったり遅くなったりはしないというのが、僕の意見です。自分のことはそれほど心配していませんけど、僕らはそれを結果で証明しなければ続けられない職業なので、そういう意味ではこうやって目に見える形で結果が出せて、ホッとしています」とベテランらしい落ち着きを見せる伊沢。

 それでも、自身のスティントで2番手に10秒のマージンを築きながら、セーフティカー導入で帳消しになってしまった時には「『なんでSC入れるんだ!』と、無線でずっとキレていました(苦笑)」と、レーシングドライバーらしいリアクションをした伊沢。野尻とのコンビは相性も良さそうで、ホンダ陣営としてもRAYBRIG、KEIHINに続く3枚目のカードがランキング上位に来たことで、チャンピオンシップもかなり有利になってきたことは間違いない。

 予選でのNSX-GTの速さといい、野尻、伊沢の躍進と合わせて、今年のスーパーGT500クラスのホンダ陣営の層が、ますます重厚になってきた印象を受けた第3戦鈴鹿300kmだった。

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