「それまでに6号車(WAKO’S 4CR LC500)や39号車(DENSO KOBELCO SARD LC500)がピットに入ってタイヤ交換をしていた。やっぱり彼らもタイヤの保ちは厳しいんだ、不安なんだと。だから1号車が本当にタイヤ無交換で勝負してきたとしても、それはおそらく彼らの基本のストラテジーのひとつではなくて、切羽詰まった状態での無交換になるんじゃないかと。だったら、向こうが無交換でピットで前に出るかもしれないけど、ウチはタイヤを換えようと」

 一方、タイヤ無交換を一度決断していたKeePer小枝エンジニアは、突然のラップタイムダウンを受けて迷ってしまった。

「無交換で行こうと決めていて(前に出て逆転する可能性にかけて)100号車とのギャップを見ながら、と思っていたら、ズルズルとラップタイムが落ちてきて、そこですぐにタイヤ無交換は無理だと判断しきれなかった。すぐにピットに入れようという判断ができなかった。それを判断したのが結局、100号車と同じタイミングだった」

「周りのタイムを見てもタイヤを換えたマシンのタイムの方が速いので、その時点でピットに入ったとしてもだいぶポジションを失ってしまうことはわかっていたけど、ニックのタイヤはきついのだろうと。その時点で判断が遅かったですね」と小枝エンジニアは後悔する。

 そして、お互いのラップタイムを見て、それぞれの思惑で決断したピットタイミングが結果的に同じ30周目だった。

 30周目にピットインしたKeePerは36秒7の制止時間でキャシディから平川にステアリングを代わって後半スティントへ。一方のRAYBRIGは37秒5の制止時間で山本からバトンに乗り代わった。タラレバで、KeePerはその時点でもし、タイヤ無交換を選択してRAYBRIGの前に出ることができたら勝機はあっただろうか。
 
「タイヤ無交換で行ったとしても、結構、厳しかったと思います。それにやはり、クルマとしての差はあったと思いますので、難しかったとは思います」と小枝エンジニア。

「戦略は完全に僕のミスです。タイヤを換えて『ごめん。もう(平川)亮に任せた』という形になったので、亮には悪かったと思っています。もう少しピットストップのタイミングを早くしていれば、ひょっとしたら前に出れたかもという可能性はあったし、少なくてもピットアウト後に100号車との間に何台かマシンが入るような状況にはならなかった。あの状況を作り出してしまったのは僕のミスです」

 しきりに自分を責める小枝エンジニア。それでも、後半スティントのKeePerと平川は怒濤の追い上げで39周目には5.8秒あった100号車バトンとのギャップを1秒ずつ縮め、43周目には1.7秒、そこからフィニッシュまで100号車の背後について前を伺う見せ場は作った。

「あれは完璧に亮の力です」と小枝エンジニアは謙遜するが、最終戦でのNSXとLC500のパフォーマンス差は、明かにNSXの方が上だった。劣勢状態だった今回のLC500のパフォーマンスでNSXと互角以上の戦いを見せ、チャンピオンまであと一歩というところまで100号車を追い詰めることができたのは、ドライバーの力だけでなく、まさに小枝エンジニアとトムスチームの総合力の高さだったのではないだろうか。

2018スーパーGT第8戦もてぎ 決勝
ピットアウト後にアンダーカットされてしまったKeePer。平川が猛然と前のマシンをオーバーテイクしていった

GT500クラスのタイトルを初めて獲得したRAYBRIGの山本尚貴。今年はスーパーフォーミュラ王者にもなりダブルタイトル獲得

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