スーパーGTが持つ大きな特徴のひとつがウエイトハンデ制だ。これは獲得したドライバーズポイントに応じて車両にウエイトを搭載する性能調整のこと。ウエイトを搭載したGTマシンは当然車重が重くなり、ドライバビリティが悪化。タイヤ・ブレーキに対する負荷も増えるためラップタイムも悪くなり、予選・決勝では厳しい状況に置かれる。
このウエイトハンデ制があることで、各車両、各チームのパフォーマンスが接近し、より激しいレースが繰り広げられる。ただウエイトを背負った車両もレース戦略や展開によっては上位進出、優勝することも充分可能で、どのチームにも勝つ権利があるのもポイントだ。ウエイトを背負った状態でどこまで上位に食い込めるかはドライバー、そしてチームの力が試されるポイントとなる。
ウエイトハンデは前戦までの獲得ドライバーズポイントに応じて加算される。加算係数はGT500クラスの場合、参戦6戦目までは2kg×獲得ポイント、参戦7戦目は1kg×獲得ポイント、参戦8戦目はウエイトハンデなしだ。
GT300の場合は2020年からレギュレーションが変更され、参戦6戦目までは3kg×獲得ポイント、参戦7戦目は1.5kg×獲得ポイント、参戦8戦目はウエイトハンデなしとなる。つまり開幕戦で優勝すると3kg×20ポイントで60kg、ポール・トゥ・ウィンを飾ると63kgのハンデを背負うことになる。
どちらのクラスも開幕戦は全車ノーウエイト。シリーズ全戦に参戦していれば最終戦もノーウエイトとなる。
また以前は入賞順位などによってはウエイトを下ろすことも可能だったが、特にシーズン終盤戦でウエイト下ろしを狙った順位の譲り合いが起きることもあったため、現在は廃止されている。
なお、搭載されるウエイト上限は100kg。ただしGT500クラスについては50kgを越えた分については燃料流量リストリクターと呼ばれるもので調整される。
GT500クラスでウエイトハンデが50kgを超えた場合に使用される燃料流量リストリクターとはエンジンへ流れる燃料の量を物理的に調整する装置のこと。この燃料流量リストリクターによる性能調整はクラス1規定導入時に、安全性を考慮して採用された。
50kg以上のハンディキャップが発生した場合、このリストリクターの径を絞ることでエンジンへ流れる燃料を減らし、エンジン出力を抑えることでハンデが加えられる。実際の調整量は次のとおりりだ。
●ウエイトハンデ0~50kg
車載ウエイト=0~50kg/燃料リストリクター=95.0kg/h
●ウエイトハンデ51~67kg
車載ウエイト=34~50kg/燃料リストリクター=91.8kg/h
●ウエイトハンデ68~84kg
車載ウエイト=34~50kg/燃料リストリクター=88.6kg/h
●ウエイトハンデ85~100kg
車載ウエイト=35~50kg/燃料リストリクター=85.5kg/h
ポイントに応じたウエイトハンデがあることで、同じドライバー/チームが勝ち続けることが難しくなり、スーパーGTならではの面白さが演出されている。シリーズの柱であるウエイトハンデ、そしてそのハンデを背負いながら競われるチャンピオン争いは、スーパーGTならではの魅力だ。
そしてこのハンディキャップ制を背負いながらシリーズを戦い抜き、見事シリーズチャンピオンに輝くと、王者の証としてGT500クラスはゼッケン『1番』を、GT300クラスはゼッケン『0番』を使用することが許される。
どちらのクラスもドライバーズチャンピオンを獲得したコンビが所属したエントラント(チーム)がゼッケン1、もしくはゼッケン0を使用する権利を得る。
ただし、当該チームが必ずチャンピオンゼッケンを使用しなければならないという規定はないため、チームが従来から使用しているゼッケン番号を希望した場合、チャンピオンゼッケンは欠番扱いとなる。
また、ドライバーズチャンピオンを獲得したコンビが所属したエントラントが翌年のスーパーGTに参戦しなかった場合もチャンピオンゼッケンは欠番になる。
2020年のエントリーリストを例に取ると、2019年のGT500ドライバーズチャンピオンに輝いたのは大嶋和也/山下健太だったので、所属していたLEXUS TEAM LEMANS WAKO’Sがゼッケン1を使用する権利を持つことになる。
しかし、LEXUS TEAM LEMANS WAKO’Sは2020年のスーパーGTには参戦していないためゼッケン1は欠番。またGT300は高木真一/福住仁嶺が所属したARTAがゼッケン0を使用する権利を持つが、チームは従来のゼッケンである55を使用するため、こちらもチャンピオンゼッケンは欠番となっている。
次回は2020年のスーパーGTシリーズ戦開催が予定されている国内外8つのサーキットをご紹介しよう。
