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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.08.21 09:33
更新日: 2020.08.21 09:36

スーパーGT:第2戦富士でストップ・ザ・スープラに成功したホンダNSX勢の次なる課題

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スーパーGT | スーパーGT:第2戦富士でストップ・ザ・スープラに成功したホンダNSX勢の次なる課題

 しかし、そのARTA NSX-GT以上にKEIHIN NSX-GTの決勝ペースは良かった。バゲットは序盤から福住をピタリとマークし、15周目にパス。バトンを受け継いだ塚越も直後こそタイヤが暖まらずラップが安定しなかったが、終盤に向けては速い周回を重ね独走でチェッカーをくぐった。

 決勝をとおしてKEIHIN NSX-GTはタイムが安定していたが、それはARTA NSX-GTを含むライバルにとって意外だったようだ。なぜなら、NSXのブリヂストン勢で、KEIHIN NSX-GTはもっとも「柔らかめ」のタイヤを履いていたからだ。

 8月開催の第2戦は、7月の第1戦よりも暑くなることが予想され、ARTA NSX-GTを含む多くのブリヂストンユーザーは第1戦よりも硬いタイヤを選択した。

2020年スーパーGT第2戦富士決勝 ARTA NSX-GT
2020年スーパーGT第2戦富士決勝 ARTA NSX-GT

 スープラ勢が同じような温度帯に収れんしたのに対し、NSX勢は3台で選択が分かれ、RAYBRIG NSX-GTは硬め、ARTA NSX-GTはやや硬め、KEIHIN NSX-GTは柔らかめを選んだ。ちなみに、GRスープラ勢は多くがRAYBRIG NSX-GTに近いチョイスだったようだ。

 コンパウンドや構造以外にも違いはあるが、いずれにせよKEIHIN NSX-GTが選んだタイヤは、ライバルからすれば「この温度で本当にそのタイヤを選ぶの?」という柔らかさで、それゆえ福住は「最初さえ抑えておけば大丈夫」と考えていたという。しかし、結果的にKEIHIN NSX-GTのペースはARTA NSX-GT以上に良く、柔らかいタイヤを完全に履きこなしていた。

 振り返ってみれば、KEIHIN NSX-GTは第1戦の決勝でも好調で、ターボのトラブルでクルマを止めるまでは表彰台を狙える速さがあった。そして、第2戦でも基本的には同じようなセッティング、同じタイヤだったとKEIHIN NSX-GTの田坂泰啓エンジニアは言う。

「6月のテストで60周近くロングランをし、高温下でもこのタイヤが問題なく持つことを確認していました。摩耗は良好、グリップダウンも均等でアンダーにもオーバーにもならずバランスが良かった。クルマのほうもグリップ低下が大きいセットは排除し、絶対にアンダーを出さず前輪を守れるセットにしました。予選での一発はまだまだですが、決勝の仕上がりは良かったと思います」

2020年スーパーGT第2戦富士 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)
2020年スーパーGT第2戦富士 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)

 路面温度40度という、第2戦と同じようなコンディションでロングランテストを実施していたからこそ、KEIHIN NSX-GTは自信を持って柔らかめのタイヤを選んだのだ。また、気温こそ上昇したが、路面温度は40〜41度に留まり、第1戦と大きくは変わらなかったことも彼らにプラスに働いた。

 以上のように、最高速の向上と決勝でのペース維持という課題をひとまずクリアし、NSXはストップ・ザ・スープラに成功した。ただし、2戦を戦って見えてきた課題もあるようだ。それは、集団に飲み込まれた際の失速である。

 クリーンエアでは速くとも、前にクルマがいるとダウンフォースが失われタイムが落ちやすい。その落ち幅がNSXは特に大きく、なおかつ再びクリーンエアを受けてもダウンフォースがすぐには復活しないというのだ。

 とあるドライバーは「スープラはそれほど影響を受けていないように見える」と、タービュランスの影響に違いがあるように感じている。もしかしたら、NSXはダウンフォース低下によるタイヤの温度変化が、GRスープラよりも大きいのかもしれない。

 また、ストレートの立ち上がりでGRスープラに抜かれ、その後サイドスリップを使っても昨年までのようには抜き返せないという証言もある。以上2点については空力が何らかの影響を及ぼしているのだろうが、多くのNSX勢にとって“謎”の未解決領域である。次戦鈴鹿でその影響を最小限に抑えるためには、今回のように予選で最前列を確保し、逃げ切るしかないかもしれない。


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