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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.11.30 17:04
更新日: 2020.11.30 21:12

パワーよりもドラビリを選んだ方針が奏功した新生NSX-GT。苦戦のなかで手にした王者の称号/GT500分析(ホンダ編)

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スーパーGT | パワーよりもドラビリを選んだ方針が奏功した新生NSX-GT。苦戦のなかで手にした王者の称号/GT500分析(ホンダ編)

 100号車、17号車、そして8号車で異なるコンパウンドを選択していたなか、今回の決勝コンディションに100号車のタイヤがマッチしてくれた面もあるが、それ以外にも「セットアップ面での進化がある」と、車体開発を率いて来た徃西エンジニアは言う。

「決勝でどのタイヤがコンディションにうまくマッチするか、逆に我々のほうはそこがバラけているだけに『どれかが当たってくれるといいな』とは思ってました。100号車が履いたタイヤがまず非常に良くコンディションにマッチしていた、というのはありますね」と説明した徃西氏。

「あとは、特に開幕戦の際など問題になったレース中のピックアップや、混走状態でのペースダウンからの復帰、そういう部分をBS(ブリヂストン)の3チームがそれぞれ違うアプローチで対処してきてくれて、今回100号車の採った”対ピックアップのアプローチ”が非常にうまくいって、レース中にそれほど大きな問題を抱えずに良いペースで行けた」

「少しストレートスピードで劣勢なのは計時などを見ていただいていると思うんですけど、ストレートで抜けなくてもコーナーでしっかり前に出て、ストレートで抜き返されずにブレーキングでも負けない。そういうところが今日の100号車は組み合わせとして非常にうまくいった。それが37号車を最後まで追い詰めるところまで行けた要因かな、と思います」

 そしてエース山本尚貴がドライブした後半スティント。ここで威力を発揮したのはエンジン性能、とくにその燃費面でのパフォーマンスだった。

 第6戦から2基目を投入した各陣営は、それぞれ異なるアプローチと手法で個性を盛り込みながら”出力向上を実現しつつ、ドライバビリティを損なわない”理想的な開発を実現したと証言していた。

 現行規定の2ℓ直列4気筒直噴ターボのNRE(ニッポン・レース・エンジン)開発は、燃料リストリクターによって制限される燃料を効率よくパワーに変換すべく、混合気を極限までリーンにして空気をうまく活用することが求められる。

 この『燃費が良い=速い』という図式は再三にわたってお伝えして来たが、その開発を率いる佐伯LPLは、シーズン序盤から「我々のエンジンがもっとも燃費は良いはず」と公言して来た。つまり『もっとも効率が良く、もっともパワーが出ている』と宣言するのと同義になる。

 レースにおいて1番燃費の良いエンジンであり、第3戦鈴鹿後には「実際アンチラグに頼り切りという状態じゃなくても走れるエンジンスペックになっている」と太鼓判を押されたホンダ製NRE。

 この2基目でも大型アップデートによるピークパワー追求の選択肢を回避し、正常進化の範囲内で出力向上を実現しつつ、美点の「ドライバビリティを維持する」方針を選んだ。

 フィニッシュ後のウイニングランでマシンを止めた状況を見ても、終盤は首位を追いながらも積極的なコースティングでチェッカーまでマシンを運んだ山本のドライビングによるところも大だが、劣勢の週末でも大逆転での戴冠に値する素地は、すでにNSX-GTに備わっていたのだ。

「ここ(富士)はあんまりアンチラグのオンオフ差が大きくないので、やっぱり厳しかったは厳しかったですね。本当に37号車と比べても半周分、というぐらいなので何とも言えませんけど(笑)」

「富士ではどうしても最高速で負けてるので、ピーク(パワー)だけ狙ってドライバビリティはアンチラグを多用するようなエンジン……という方向に行きたくなりますが、前半を振り返ってみると、やっぱり燃費悪化というのはNSXのメリットを消すことになる」

「正常進化レベルのピークパワーのアップデート版で、ドライバビリティのほうは前半戦の状態を維持するような、そういう2基目にしました。その効果が出たのは(前戦の)もてぎだと思ってます」

「この富士では『やっぱり厳しいんだろうな』と思ってはいましたが、今回はタイヤの選択と、そのタイヤを活かせるセットアップ、というところで、なんとかスープラのなかに割り込んでいくレースができた。そういう風に思いますね」と、タイトル獲得の決勝後に胸を撫で下ろした佐伯LPL。

「苦しいときにも決勝であそこまでスープラに迫れる速さで戦えたというのは、クルマとしての満足はないものの……年に4回も富士があるという厳しい状況の割には、結構やれたと思います」と語った徃西エンジニアとの共闘で、最後にあらゆる要素が噛み合った新生FRのNSX-GTは、Class1デビューイヤーで見事“チャンピオンカー”の称号を手にした。

2020年スーパーGT第8戦富士で大逆転チャンピオンを決めたRAYBRIG NSX-GT。左から山本尚貴、高橋国光総監督、牧野任祐
2020年スーパーGT第8戦富士で大逆転チャンピオンを決めたRAYBRIG NSX-GT。左から山本尚貴、高橋国光総監督、牧野任祐


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