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スーパーGT ニュース

投稿日: 2021.05.14 18:48
更新日: 2021.05.14 19:32

【GT300マシンフォーカス】『空力と粘り』が持ち味の最新フェラーリ488 GT3“EVO”

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スーパーGT | 【GT300マシンフォーカス】『空力と粘り』が持ち味の最新フェラーリ488 GT3“EVO”

 このフェラーリ488GT3“EVO”も例外ではなく、現状は高負荷の鈴鹿でも、高速の富士でも「どこへ行っても変わらないような状況になってしまいました。本音ではもっと上(レンジの外)があればな、とかそういう話で……」と田邊エンジニアがこぼすほど、セッティング可能幅のなかでハード側に寄せた狭い領域で走らざるを得ない状態に。

 勢い、動的な車高変動を抑制して空力に頼って走るしかタイム向上の方策がなくなり、近年はどのGT3マシンも車両の前傾姿勢でDF総量を確保する“レーキアングル”の採用がトレンドになっている。しかし、このフェラーリではその戦略も封じられているという。

「そうなんです……ハイレイク(ダウンフォース量を稼ぐため、車体を大きく傾斜させた前傾姿勢の状態)を試したところ良い部分があまり出せなかったというか。メカバランスとかもいじったりはしたんですけど、良くはなかったというのが本音ですね。動かしてはみたんだけど、逆にピーキーになってしまった」と田邊エンジニア。

 そのため、テスト時間や使用タイヤセット数の不足も重なり、まだ予選一発のタイムを出す最適なトリムを「発見できていない」という。ただ視点を変えれば、そこにこそ、このフェラーリを輝かせる光明がありそうだ、とも見ている。

「その点で、基本的にタイヤに優しいんだと思います。そこが耐久に強いひとつの要因だと思いますね。海外のワンメイクタイヤを使う耐久シリーズだと、本当にダブルスティントが基本くらいの。そこにフェラーリとしての強みがある”みたい”なんですが、タイヤに対する攻撃性が根本的に低いのかな。そこで荷重を掛けてタイムを稼ぎに行こうとすると、途端に悪いところが出てしまうのかなぁ、という感じがします」

 ただし、近年のGT3用ヨコハマタイヤは、積極的に輪荷重を掛けてピークグリップを稼ぐ性格付けにも見受けられ、そのバランスと整合性がカギになりそうだ。

「僕もブランクがあって一旦お休み(昨季のGTはミシュラン、スーパー耐久ではピレリ)して、そして今年またヨコハマに戻ったんですけど、今の新しいタイヤはそんなに悪くないのかな~と。キャラクター的には上手く使えれば何か良いところが出せるんじゃないかな、とは思ってます。私はこの今のヨコハマは嫌いじゃないです」

 性能調整のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)は、基本の数値として40kgを搭載するが、燃料を満タンにしても「そんなにクルマのバランスは変わらない」鷹揚さも持ち合わせる。エンジン側も、3.9リッターのV8ツインターボは低い回転域からブースト圧を抑制され、富士のストレートエンドでは最高速の“数値”こそ記録するも、コーナー立ち上がりでの「ピックアップ(エンジンの加速度)はまだちょっと弱いかなぁ」と、直接対決での勝負強さ、という面で不安は残るという。

 だからこそ、レースディスタンスでの“粘り”にフォーカスするクルマ作りが目標となるが、開幕の岡山こそセーフティカーに翻弄され23位に留まったが、第2戦富士ではファーストスティントを引っ張りに引っ張り、予選16番手から一時は首位を快走した。残念ながらトラブルにより後退はしたものの、今後の開催サーキットでは武器のエアロを活かせるコースで上位進出を狙いたい。

「続く後半はテストしていないサーキットばかりなので、そこでどこまで落とし込めるか。確かに耐久に強いクルマですが、今季の耐久はここ(第2戦富士)しかないので、次の300kmに対してスプリントでもっとタイヤを使い切れるクルマ、もしくは出来るんだったら“無交換”というのがね、みんなが出来てないことが出来たら……。レースでは現状、速さで勝つクルマではないですし。作戦の部分でこのクルマの特性を上手く活かせる方法を見つけられればな、という風には思います」

ミッドシップに搭載された3.9リッターのV8ツインターボは初期型フェラーリ488 GT3から変わらず
ミッドシップに搭載された3.9リッターのV8ツインターボは初期型フェラーリ488 GT3から変わらず
フロントのダブルウィシュボーン式サスペンション
フロントのダブルウィシュボーン式サスペンション
リヤのフロントのダブルウィシュボーン式サスペンション
リヤのフロントのダブルウィシュボーン式サスペンション
大きめのリヤディフューザーを備えたフェラーリ488GT3 EVO
大きめのリヤディフューザーを備えたフェラーリ488GT3 EVO
第2戦富士では一時は首位を快走も、トラブルにより後退。フェラーリ488GT3 EVOの武器であるエアロを活かせるコースで上位進出を狙いたい
第2戦富士では一時は首位を快走も、トラブルにより後退。フェラーリ488GT3 EVOの武器であるエアロを活かせるコースで上位進出を狙いたい


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