更新日: 2022.06.20 19:02
HOPPY team TSUCHIYA 2022スーパーGT第3戦鈴鹿 レースレポート
HOPPY team TSUCHIYA
レース結果報告書
2022 SUPER GT Rd.3
鈴鹿サーキット
■日時 2022年5月28〜29日
■車両名 HOPPY Schatz GR Supra
■場所 鈴鹿サーキット
■ゼッケン 25
■監督 土屋武士
■ドライバー 松井孝允/野中誠太
■チーム HOPPY team TSUCHIYA
■リザルト 予選20位/決勝リタイア
この先も戦うために……
安全第一で、レース続行を諦めました
5月28、29日、鈴鹿サーキットにおいて2022年SUPER GTシリーズ第3戦のレースが開催され、No.25 HOPPY Schatz GR Supra は予選20番手からスタート。レース早々からFCYやSCが導入される慌ただしい展開となるも安定した速さで周回を重ねていたが、レース折り返しを前に車両トラブルが発生。一旦は修復作業に着手したが、HOPPY team TSUCHIYAは安全を考えてリタイヤを選択するに至った。
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第2戦富士から3週間強で迎えた鈴鹿戦。梅雨入りを前に、鈴鹿は終日快晴で、強い日差しが眩しくてタフなレースウイークになりました。ホピ子には富士戦を前にエアコンが搭載されたけれど、この先、松井孝允くんと野中誠太くんはクールスーツなしでレースができるのでしょうかね!?
さて、鈴鹿入りしたHOPPY team TSUCHIYAのスタッフですが、今回は何やらピットがいつも以上に忙しい様相を呈していました。土屋武士監督によると「人手不足」になったそうで。ベテランのスタッフは海外出張中(ニュルブルクリンク24時間へ!)だし、「チーフの武藤が体調崩して急遽これなくなり、要のメカニックがいないから大変!」と武士監督。その傍らで木野竜之介エンジニアも「今回は片親がいなくて」と苦笑い。ワンオペ状態になった木野さんは、「作業もいつもの3倍以上時間をかけています」と言ってたけど、今回はイレギュラー状態のなかでそれぞれお仕事を兼任することにもなっていて、だからこそミスなく作業を進めるために、いつもより丁寧に仕事をしようと心がけていたようです。
一方、鈴鹿入りしたホピ子には、フロントカナードとサイドステップが新たに用意されました♪ これで走行中は空気がキレイに流れてくれることを大いに期待しています! 木野さんがコツコツ毎戦何かしらポテンシャル向上を狙って投入してくれるから、ほんとうれしい。それから、前回の富士では武士監督がタイヤとの性格の不一致を指摘してたのですが、今回はそのあたりもしっかりと改善してきたんですよ。
「クルマのセットアップは結構ガラリと方向性を変えました」と木野さん。現在提供されているヨコハマタイヤとワタシの関係性!? を見極め、それぞれがよりいい方向でポテンシャルを引き出せるようにと、考えてくれたようです。これで、孝允くん、誠太くんも予選でのタイムアタックや、決勝でのタイヤマネージメントをよりうまくやってくれるのではないでしょうか。
朝の公式練習では、孝允くんがメインで周回。その後、誠太くんがGT500クラスとの混走残り15分くらいからコースに向かい、GT300クラス専有走行でも続けてドライブを担当します。気温26度、路面温度36度でスタートしたセッションは、その後少しだけ温度が上昇。でも、午後からのノックアウト予選になるとさらに温度が上がると予想されていたので、その点も考慮しながら確認作業を続けました。最終的にチームベストは2分00秒467。25番手でした。
予想どおり、午後に入るとますます日差しが強くなって、気温も路面温度もさらに上がりました。当初の予定より10分遅れで始まったQ1 ですが、ホピ子はB組で出走。気温28度、路面温度はなんと45度まで上がりました! アタック用として選択したタイヤ……大丈夫? 実はホピ子、武士監督から聞いてました。「昨年マックスレーシングのスープラが優勝したタイヤと同じものを用意してあるから大丈夫!」って。
朝の公式練習で、誠太くんはアタックシミュレーションらしい走りはしてなかったのですが、タイヤは実績のあるものが準備されていたのでこの予選アタックに向けては、“自分たち次第”というような状況で迎えることになりました。タイヤに熱を入れて、アタックに臨んだ誠太くん。2周連続でアタックし、2周目が1分58秒733のチームベストタイムとなりました。ですが、ポジションは11番手。これではQ2進出はできません。0.5秒ほど足りませんでした。
でも、「セクター1、2と初めて速い! って思った。ポテンシャルが見えた感じ」と手応えを得た武士監督。ただ、「速いと思ったけれど、前回富士同様にアタック中にシフトが落ちない状況になって…」。そう語ると急に表情が曇りました。実は、シフトダウンがうまくできなかったとのこと。これはドライバーのドライビングミスという話ではなく、、そうなる可能性があるなかでアタックをしていた状態ということでした。
武士監督が問題にしたのはクルマのことではなく、「なぜ、誠太がQ1を担当したか」についてでした。誠太くんは公式練習でニュータイヤでのアタックシミュレーションをしておらず、予選Q1通過用として“お取り置き”していたタイヤを初めて履いてアタックしたのですが、そこに武士監督が疑問を持ったんです。もちろん、Q1を誠太くんが担当することは事前に知っていました。でも敢えて口を挟まなかったんです。それは、若いスタッフたちが自主的にレースをするということを武士監督が日頃から尊重しているためです。だからこそ、ホピ子には武士監督の悔しさがわかりました。
「アタックを担当すれば、誠太の経験値も増えるでしょう。でも、はっきり言って、応援してくれている人たちのことを一番に考えていればこういう選択にならない」とキッパリ。思えば、去年の鈴鹿では、武士監督がエンジニアを務める244号車のGRスープラが優勝。当然、ホピ子もコーナリングに特化したスープラのポテンシャルを活かし、コースとクルマの相性の良さを味方できるだろう……そう考えていたんです。
それに、今回はホピ子で結果を取りに行こうという話を事前にしていたにも関わらず、なぜこうなったのか……。事前に相談することなく、当たり前のように誠太くんがアタックした事を武士監督は納得できませんでした。「やりたいこととやるべきことは違う。我々はプロなんだからやるべきことを優先すべきだった」。予選が終わり、武士監督は今回の理由をスポンサーさん全員に説明し、謝罪していました。終わったことは仕方のないことですが、今回のことを教訓に、チームとしてあるべき姿を忘れてはいけないと再認識した出来事になりました。
「この失敗はチームのみんなにとってはいい経験にはなるけれど、サポーターのみなさんにはしっかりお返ししなきゃ……」と武士監督。明るい話題としては、準備してきたクルマ、そしてタイヤとの“関係性”も方向性を含めいいものが見えていること。この点においては、孝允くんも誠太くんも同様の考えです。と言うことで、決勝で着実にレースをして、結果を残したい! と、改めてみんな、もちろんホピ子も思ったのは言うまでもありません。
迎えた決勝日は、前日よりも朝から暑さを感じる天気になりました。気温は軽く30度を超えて、夏日に。昨日まであった爽やかな風もどこかに行ってしまい……。ちょっと蒸し暑い感じになって、タフなレースになることが容易に想像できました。午後1時30分に始まったウォームアップ走行では、1台のクルマがデグナーカーブでコースアウト、クラッシュが激しかったこともあり、残り8分の時点で赤旗終了になりました。レース直前にアクシデントがあると否が応でも緊張感がより高まります。どうか、今回は最後まで戦ってチェッカーを受けることができますように!
決勝は、気温30度、路面温度はなんと50度! のコンディション下で幕が上がりました。まず最初にホピ子をドライブするのは孝允くん。オープニングラップからあちこちで激しいバトルが展開され、ワタシはというと、うしろの2台に先行されてしまいます。どうにもストレートスピードの差があり過ぎて、ブロックするまでもなく抜かれてしまいました。。この辺りは今後の課題ですね。 どちらにせよ、木野さんが改めて決勝用にセットアップしてくれたので、それを確認しながら着実なレース運びをするプランに沿って孝允くんが周回を重ねていきました。
一方で、レースは慌ただしい展開になっていきます。早速3周目にFCY(フルコースイエロー)になり、それから10周目にはシケインでの単独クラッシュが原因でSC(セーフティカー)がコースへ。その間にもトラブルを起こして緊急ピットインするクルマが現れました。この事態を受け、ホピ子にもミッションが与えられます。チームの戦略はSCラン中、ピットレーンオープンに合わせてピットインし、タイヤを4本交換するというものでした。
もちろん、これはいわゆるルーティンのピットインじゃないです。ドライバー交換時にはタイヤ交換と給油作業を同時に行えないから、タイヤをひと足先に交換することでルーティン時の作業時間を短縮するという作戦です。ストレートを通過するとき、チームは孝允くんに「ボックス(ピットイン)!」と無線で指示。ところが、その後、SC ランが解除され、レースはリスタートすることに。チームも慌ただしく前言撤回とばかり「リスタート!」、つまりピットインはキャンセルすると無線で何回も伝え直したんですが……。うまく無線が届かなかったようで孝允くんがピットに戻ってきてしました。SCランを味方にするつもりが、結果的に不要なピットインをしてしまうことになりました。
イレギュラーのハプニングでしたが、クルマが戻った以上、新しいタイヤを装着するしかありません。この遅れを取り戻そうと、コース復帰した孝允くんは、次第にペースアップ。20周目にはレース中のチームベストとなる2分01秒950をマークして、近づく誠太くんとの交代までに力走を続けていました。ところが、22周目のシケインで突然ワタシの足に力がかからなくなって……。異変に気がついた孝允くんは、クルマにできるだけダメージを与えないようペースダウンして走り、なんとかワタシをピットに戻してくれました。コース上で止まらないようにって、ほんと危なかったぁ。
待ち構えたスタッフが原因を確認。ここでのピット作業で、交換したタイヤを平置きにしなかったということで作業違反のペナルティーも受けてしまいました。。。クルマの方は修復作業も可能だったんですが、レースを安全に終えることや今後のレースなど、さまざまな状況を考えた結果、しっかり走れない状況でレースを続けることのリスクを取らないことを決断し、リタイヤすることを決めました。応援してくださっているたくさんのスポンサーさんやサポーターさんはもちろん、鈴鹿にレースを見にきて下さった方たちには、ごめんなさいという気持ちでいっぱいでした。
ただ、ホピ子に速さや強さというポテンシャルをつけようと、本当にみんなががんばってくれています。次の富士まで2カ月ほどインターバルがあるので、“サマーブレーク”なんてのん気なことは言わず(笑)、浪人生が寝る間も惜しんで集中夏季合宿を受講するかのように!? しっかりと集中してこれからの戦いに向けて改善を重ねてステップアップしていきますので、どうぞ待っててくださいね!
■レースを終えて
松井孝允のコメント
「シケインを走行中に突然トラブルが出て、そのままスロー走行でほぼ1周走ってピットに戻りました。タイヤ交換後はクルマのフィーリングもよく、タイヤの印象も良かったのでポジティブなところを感じることができました。一方で、今回はチームとしてイレギュラーなことが重なり、そのあたりで少しうまく進まなかったこともあったように感じました」
「今回、なんとなく結果を出すための方向性は見えていたのですが、総体的にもいい印象を得ることができておらず、やはり流れが良くなかったと思います。僕自身もチームを引っ張るというところで足りない部分があったと感じています。チームとどのように連携していくか、コミュニケーションをしっかりととるようにしたいと思います」
野中誠太のコメント
「今回はクルマのコンセプトを変えて挑んだのですが、その辺は考えていたとおりにタイヤも機能するようになりました。予選のアタックではしっかりとグリップを得ることになり、クルマの印象はガラリと良くなったと思います。一方で路温がかなり上がったので、そういう部分の細かな合わせ込みは必要でしょうが、ただ方向性はかなり見えてきたように感じました」
「予選で感じたクルマのいいフィーリングが、決勝で路温がさらに上がり、燃焼を積んだ状態でどんなパフォーマンスになるか試してみたかったのですが、クルマのパフォーマンスが上がった分、クルマへの負荷が大きくなってトラブルに繋がってしまったとも思うので、今回は仕方ないのかなと」
「3戦を終えて、クルマにはQ1突破できるスピードがあると感じているし、そろそろ結果が欲しいのも事実です。予選のパフォーマンスをしっかりと引き出すことを真っ先に考えて、そこから決勝……と思っています。インターバル後の8月のレースは、富士、鈴鹿とシーズン2度目のサーキットになるので、いい走りができればと思います」
土屋武士監督のコメント
「今回ふたりの要のメカニックがチームにいない状況になってしまい、その部分でたくさんの人に迷惑が掛かってしまいました。組織としての“弱さ”が露呈してしまい、チームを率いる立場として責任を感じています。こういった状況になると人員に余力のないプライベーターの弱さが出てしまいますね。しかし、これもプライベーターの定め。こういった状況を乗り越えてこそ存在意義があると思うし、応援頂いている皆さまの期待に応えられるように成長していくのみです」
「でも、、、『だから言ったろ』と、親父がプリプリしている姿が目に浮かびます苦笑。やるべきことは分かっていて、幸い次戦までのインターバルが長くあるので、この期間でしっかりと足りない部分を補強して、やれることを全力でやり切って準備したいと思います。皆さまの期待に応えられるようにチーム一丸となって成長して、サマーシーズンを迎えたいと思いますので、応援よろしくお願い致します!」