現在の宮田はリアルでも、バーチャルでもトップカテゴリーのプロとして活躍している。少なくとも日本国内で“二刀流”をやってのけているのは彼ひとりだけだ。そんな宮田が自宅に備えるシミュレーター環境とはいったいどのようなものだろうか。

 シミュレーターの中枢として機能するパソコン、いわゆるゲーミングPCは、当然のことながら性能と価格がほぼ比例する。

「グラフィックボードとか、CPUとか、こだわりはじめて上を見ればたしかにキリがないですね。40〜50万円はざらですから。でも、僕は、いたって普通の25万円くらいの吊るしのゲーミングPCを使っています。これくらいの金額のものでまったく問題ないと思います。ただ、PCは、やはり水冷がいい。いままでの自分の経験からすると空冷では冷却が追いつかないので、水冷タイプをおすすめします」

「3画面のゲーミングモニターは1枚5万円ほどものをAmazonで購入しました。3画面を取り付けるフレームも5万円ちょっとなので、合計約20万円。4画面化のためのモニターとフレームは、合わせて4万円ほどですね」(一覧表は後述)

宮田莉朋の自宅シミュレーターのPC。MSI製でグラボはGeForce RTX3070を搭載。CPUはAMD Ryzen。CPUクーラーENERMA X製簡易水冷式を使用
宮田莉朋の自宅シミュレーターのPC。MSI製でグラボはGeForce RTX3070を搭載。CPUはAMD Ryzen。CPUクーラーENERMA X製簡易水冷式を使用
Simlabの3画面モニターフレームに加え、4画面用のステーも装着し、視認性を向上
Simlabの3画面モニターフレームに加え、4画面用のステーも装着し、視認性を向上

 ゲーミングPCとモニター/フレーム、ここまでの合計で約50万円。世界ランキング24位になり、eスポーツチームからプロとしてオファーを受けた環境としては、想像以上のコストパフォーマンスだ。しかし、宮田が重視するポイントは操作系まわりのデバイスにあった。

「ステアリングに伝わるトルクを制御するモーターは『シムキューブ』を使っています。値段的に一番手の届きやすいスポーツ、その次にプロ、一番上にはアルティメットの3種類がラインアップされていますが、僕はアルティメット(約43万円)を選んでいます。細かなトルクの制御ができること、縁石に乗ったときの再現性が非常に高いので。シミュレーター初心者にはスポーツでも充分なレベルだと思います」

「ペダルは『シムタグ』(約30万円)で、メーカーはオーダーを受けてから作りはじめます。実車と同じユニットを使用していることが特徴で、僕は油圧式を選択しています。踏力をはじめとしたブレーキペダルのフィーリングが驚くほど実車にちかく、だからこそリアルに向けたトレーニングに役立っています」

「ステアリングは『LM-Xステアリングホイール』(約38万円)です。ここも製作に1カ月程期間がかかるところですが、そのぶんクオリティは間違いない。ちなみに、ペダル(『シムタグ』)とステアリングは、マックス・フェルスタッペンも同じものを使っています」

フィードバックの鍵となるステアリングモーターはシムキューブのSimucube2
フィードバックの鍵となるステアリングモーターはシムキューブのSimucube2 ultimate
ペダルはシムタグ(Simtag)の油圧式をチョイス
ペダルはシムタグ(Simtag)の油圧式をチョイス
ステアリングは『LM-X Steering Wheel』を選択
ステアリングは『LM-X Steering Wheel』を選択

 宮田のシミュレーターは総額170万円ほどかかっているが、そのうち約120万円は筐体を含めた操作系にあてている。宮田自身が、シミュレーターに対して求めているものは、この内訳から垣間見ることができる。

 そもそもモータースポーツは、ほかの競技と比べて圧倒的に練習機会が少ないスポーツだ。そうした条件のなかで結果を残すために、宮田は自身の考えにもとづいた環境を整え、シミュレーターを活用する。

「国内、たとえばいまのスーパーフォーミュラで言えば野尻(智紀)さんと平川(亮)さんが速く、正直、いまの僕には彼らを打ち負かすために必要な経験が足りません。その経験を少しでもシミュレーターで補えるなら、それを使わない手はないですよね」

「たとえば、現実のレースの成績やタイムが悪かった場合、僕は帰宅してすぐにシミュレーターに乗り込みます。リアルの世界での不甲斐ない結果が、果たしてクルマ側にあったのか、自分自身のドライビングにあったのかを検証するためです」

「シミュレーターを続けていると、エンジニアリングの知識も増えてきます。そのおかげで以前の自分と比べると、セッティングの最適解に近づくスピードは確実に早くなっていることを実感しています」

 リアルとバーチャルの“二刀流”で活躍する宮田は、シミュレーターによって着実に経験値を積んでいる。そんな彼が見据えるのは日本国内にとどまらず、リアルなレースにおける世界への挑戦だ。宮田の地道な努力が、現実の世界で実を結ぶのはいつか。

■動画:宮田莉朋の自宅へ潜入! 現役国内トップドライバーの自宅レーシングシミュレーター環境とiRacing
URL:https://youtu.be/kpr25NKhFi0

■宮田莉朋の自宅シミュレーター環境/購入時総額:169万7834円

【ゲーミングPC】
・簡易水冷式ゲーミングPC本体:25万6980円

【ゲーミングモニター/フレーム】
・MSI Optix G32CQ4 湾曲パネル32インチ 3画面ゲーミングモニター:単価4万9800円
・Simlabモニターフレーム3画面:約5万5217円

・モニター4画面用:2万9864円
・ゲーミングモニター:ASUS製27インチ

・4画面取り付けモニターフレーム:約13701円

【操作系】
・モーター
Simucube2 ultimate:約43万4,119円

・ペダル
Simtagペダル:約30万3745円

・ステアリング
LM-X Steering Wheel:約38万28円

・フレーム
長谷川工業/DRAPOJI:7万4660円

本日のレースクイーン

伊達望だてのぞみ
2025年 / スーパー耐久
クイーンズエンジェルス
  • auto sport ch by autosport web

    FORMATION LAP Produced by autosport

    トランポドライバーの超絶技【最難関は最初にやってくる】FORMATION LAP Produced by auto sport

  • auto sport

    auto sport 2026年1月号 No.1615

    ネクスト・フォーミュラ 2026
    F1からカートまで
    “次世代シングルシーター”に胸騒ぎ

  • asweb shop

    STANLEY TEAM KUNIMITSUグッズに御朱印帳が登場!
    細かい繊細な織りで表現された豪華な仕上げ

    3,000円