宮田のシミュレーター歴は長く、バリエーションに富んでいる。小学校3年生当時、まだレーシングカートを走っているときに、初めて『グランツーリスモ』をプレイしてから、そのキャリアは始まった。

 FIA-F4参戦時は『rFactor』で4輪ならではのドライビング習得に活用し、その後は、『Asseto Corsa』シリーズなども試したことがあったという。そして、2020年5月、世界が新型コロナウイルス感染症の感染拡大に見舞われたタイミングから『iRacing』に没頭している。

『iRacing』とは実名での参加が求められ、世界中のSIMレーサーがしのぎを削るソフトウェア。その戦績は個人別に数値化/レーティングされ、取材時の宮田のポイントは「9459」。日本国内では間違いなくトップレベルで、世界ランキングで『24位』の実績を持つと聞けば、その実力も想像がつくだろう。

「リアルでも、バーチャルでも速いやつがいる」、宮田の存在はヨーロッパeスポーツ関係者の目にとまった。

自宅のシミュレーターでトレーニングを積む宮田莉朋
自宅のシミュレーターでトレーニングを積む宮田莉朋

「2021年7月末、ある方を通じてヨーロッパのeスポーツチーム『BSプラス・コンペティション』からオファーをいただきました。その内容は『現実の世界のレースでトップカテゴリーを走っていて、なおかつシミュレーターでも速いドライバーを探している。ウチのチームに加入してくれないか?』というものでした。そこはBMWのワークスチームでもあるので、リアルの世界でお世話になっているトヨタさんに相談し、快諾いただいたうえで『ぜひ!』とお返事しました」

 近年、eスポーツは日本国内でもかなり浸透してきたが、世界のソレは比較にならないほど進んでいる。そのことは宮田自身もチームに加入したあとに実感したという。

「有名どころでは、マックス・フェルスタッペンなどが所属している『レッドライン』で、もしかすると、そのチーム名くらいは聞いたことがある人もいるかもしれませんね。ただ、それ以外にもeスポーツチームはたくさん存在します。ウチ(BSプラス・コンペティション)もそうですが、これだけ(eスポーツだけ)で生計を立てている人も数多くいます」

「また、インディカーのeレースにランド・ノリスが参戦してきたときは、普段、F1の現場で彼が一緒に仕事をしている本物のトラックエンジニアを連れてきていましたし、ポルシェワークスとしてLMDh車両の開発に関わっている人がSIMレーサーとして活躍していたり。まったくの偶然ではありますが、僕と同じチームにはTGR-Eのエンジニアもドライバーとして加わっているなど、とにかく日本とは何もかもが違うんです」

「ドライバーやエンジニアとしてリアルの世界で活躍する人たちも、eスポーツだけで生計を立てている“プロフェッショナル”も、分け隔てなく真剣に向き合っている姿が印象的ですね」

宮田莉朋の自宅にあるシミュレーター。総額はおよそ169万円
宮田莉朋の自宅にあるシミュレーター。総額はおよそ169万円

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