「あの日にふたりにメールして、やり取りをして、次の日も大湯にメールをして、やり取りをして。スーパーGTとスーパーフォーミュラでジャンルは違うけど、やっぱりウチのドライバーだから。やっぱりドライバーの気持ちはわかるしね」と、SF第3戦鈴鹿の決勝日を振り返る土屋圭市エグゼクティブアドバイザー。

 土屋アドバイザーにとって、特に大湯はレース以外でもYoutubeや自動車媒体などでの共演が多く、愛弟子のような存在になっている。

「大湯はやっぱりひと晩、酒飲んで『こんちくしょー!』って、大湯にとっては『ふざけんじゃねえよ』って思うけど『だけど相手は野尻さんだし』って感情をぶつけることはできない。『どこにぶつけりゃいいんだよ』って。今までのあいつの行動をよく知っているから、酒飲んで大声出して終わり(苦笑)。あいつのツイート見ていたら、やっぱり、大黒(埠頭)にいるか、みたいな。そうやって自分の感情をぶつける相手もいない、ぶつける相手も見つからない、どこにぶつけりゃいいんだというのをS2000で夜、走り回ってなんとか気を紛らわせる」

「野尻は野尻で自分がやられたこともあるから、大湯の心の痛さも分かっているし、あの瞬間に肩を叩いて『ごめんな。申し訳ない』って言うことしかできないことを野尻は分かっている。大湯も野尻のことを分かっているから怒れない。その吐口は大湯はその日に酒を飲んで、次の日に大黒埠頭で走り回って帰る、みたいなさ。今回のGTでのやりづらさはないと思いますよ」

 そう笑顔で話す土屋アドバイザーだが、SFでクラッシュした当日は大湯のことを心から心配していたようだ。大湯が話す。

「あの日は僕、結構、家に帰るのが遅かったんですよ。サーキットを出るのが遅かったですし、自走で帰りましたし、(都内近郊の)自宅に着いたのは結構、夜遅かったのですけど、僕が家に着くまで気にかけていてくれました。『お前が寝ないなら、俺も寝ない。いつまでも起きててやる』みたいな感じで、僕のことを気にかけていてくれて。それはすごくうれしかったですね」

 土屋アドバイザーの他にも、大湯を気遣う関係者からの連絡は続いた。

「日曜日が終わってからも、僕のことを気遣ってくれる方がたくさんいてくれましたし、それ自体、すごく励みになりました。ですので、GTに対してとか、野尻さんにとかは別に何も(悪い感情は)ありません。GTは特に何度も優勝できるカテゴリーではないので、自分のやるべきことをしっかりやって結果を残してポイントを稼ぐことに集中したいと思います」

 と、今週のGT第2戦の抱負を語る大湯。だが……。

「でも、今はGTのことのみ考えて集中していますけど、SFのことを考えると現実が今もなお……残っている状況です。それだけ大事なレースでしたし、チームとしても結構なクラッシュになってしまったので……それを直すのもタダではないので、重い現実があります」

 複雑な感情を含んだまま迎える8号車ARTA MUGEN NSX-GTとドライバー、そして土屋圭市アドバイザー。今回の第2戦が何かの転機になるかどうか、早くも今季の8号車の岐路となりそうだ。

2023年スーパーGT第2戦富士スピードウェイ
今年からGT500で2台体制で参戦しているARTA MUGEN NSX-GTの土屋圭市エグゼクティブアドバイザー。

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