レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

クルマ ニュース

投稿日: 2023.08.15 13:32

見た目はSUVでも、中身はレーシングカーに共通するアプローチ/フォルクスワーゲンID.4試乗

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


クルマ | 見た目はSUVでも、中身はレーシングカーに共通するアプローチ/フォルクスワーゲンID.4試乗

 ドライのハンドリング路では走行姿勢の安定っぷりを確認することができた。アクセルを全開にすると、短いストレートで90km/hを超える車速に達する。そこから曲率の小さなコーナーに進入し、再び短いストレート、急旋回といった具合である。

 急減速に迫られるシーンでは、「運動エネルギーは質量に比例する」法則を思い出しておっとっとなるが、2140kgの車重を考えれば、身のこなしは軽い。重心が低いためもあり、まくれ上がるようにロールをすることがないし、ヨーモーメントが急激に立ち上がってスピンモードに陥る素振りも見せない。

 意のままに動くし、無駄な動きがない。転舵はフロント、駆動はリヤと前後輪が受け持つ役割がはっきりわかれているのが、「曲がる」ことと「走る」ことに対していい方向に現れている。コーナーの立ち上がりで意図して強めにアクセルペダルを踏み込むと、グッと腰を落とし、いかにも後輪駆動車らしい姿勢で力強く立ち上がっていく。

 BEVの場合、回生ブレーキの制御にいくつかのバリエーションがある。ID.4は最もシンプルな部類で、回生ブレーキの強弱を調節できるパドルは備えていない。Dレンジでは回生ブレーキは働かず、コースティング(空走)する。Bレンジを選択すると最大-0.15Gの減速度が発生する回生ブレーキが機能する。

 好みはあるだろうが、ハンドリング路を走るようなシチュエーションでは、Bレンジのほうが走りやすい。センターのタッチ式ディスプレイを操作して、ドライブモードをデフォルトの“コンフォート”から“スポーツ”に切り換えることでも回生ブレーキは機能するようになる。

 ウエット旋回路のμ(ミュー:路面抵抗)は0.3程度とのことで、圧雪路相当だ。こうした滑りやすい路面では、クルマの素性が現れやすい。タイヤは標準で装着されているサマータイヤのまま(Hankook Ventus S1 evo3 ev)だったが、走り出しに気を使うことはなかった。

フォルクスワーゲン『ID.4』
フォルクスワーゲン『ID.4』

 意図せぬBEVの恩恵とでも言おうか、駆動輪にしっかり荷重がかかっているからだろう、難なく発進する。前輪にも同様に相応の荷重が掛かっているので、しっかり舵が利く。

 旋回しながらアクセルペダルの踏み込みを強くしていくと、ズルズルとお尻が外に流れ始める。前輪駆動車なら外にふくらんでいくところだ。急激にお尻が出てスピンモードに陥るような素振りは見せない(最後はESC=横滑り抑制制御が介入するので、スピンすることはない)。

 挙動を乱す動きがゆっくりなので、余裕をもって修正動作に入ることができる。ときに外気温度計が36.0℃を示す酷暑ではあったが、雪道を思い浮かべてみると、発進に苦労しそうにないことも、圧雪路を安心して走っていけそうなことも想像ができた。

 ウエット登坂路では登坂発進を体験した。両サイドのブロックはμ=0.3で圧雪路相当、中央はμ=0.1で氷結路相当である。全輪をμ=0.3のブロックに載せた状態での発進は難なくクリアする。後輪駆動車は低μ路が苦手と思われがちだが、制御に助けられている部分があるとはいえ、ドライバーとしてはさほど苦労を感じない。

 左側輪をμ=0.1のブロック、右側輪をμ=0.3のブロックに載せたスプリットμの路面では、μの低い側に引きずられる格好にはなるものの、走り出しはする。冬の過酷な環境でも、立ち往生してどうにもならないという事態は避けられそうだ。

 最後に、ウエットでのスラロームとブレーキングを体験した。ドライのハンドリング路で感じたとおり、ここでもID.4のキビキビした意のままの動きが印象に残った。ブレーキングでは、リヤモーターで回生できる利点を生かし、ノーズダイブを意図して抑えているのが確認できた。おかげで上体のブレが小さくて済み、体に余計な力が入らなくて楽だし、視線のブレも少なく、運転のしやすさにもつながる。同乗者の安心感にもつながるだろう。

 高出力/大トルクのモーターを搭載すれば刺激的なBEVが出来上がるとは限らない。150kW/310Nmと、2tオーバーの車重を考えれば決してパワフル(トルクフル)とはいえないモーターを積みながら、意のままに操れる楽しさを演出できるのは、重心が低く、前後重量配分が適正で、マスが重心点まわりに集中しているから。クルマの動きづくりの基本に忠実なID.4は素直に動き、ドライバーを虜にするBEVに仕上がっている。

『ID.4 Pro Launch Edition』は、90kWのCHAdeMo急速充電器の場合、バッテリー警告灯が点灯してから80パーセントまでの充電時間が約40分、そして6kWの普通充電を使用した場合はバッテリー残量 0%から満充電までの時間が約13時間かかる。
『ID.4 Pro Launch Edition』は、90kWのCHAdeMo急速充電器の場合、バッテリー警告灯が点灯してから80パーセントまでの充電時間が約40分、そして6kWの普通充電を使用した場合はバッテリー残量 0%から満充電までの時間が約13時間かかる。
『ID.4 Pro Launch Edition』は0-100km/hを8.5秒(欧州発表値)で加速。すべてのグレードの最高速度は電子的に160km/hに制限されている。
『ID.4 Pro Launch Edition』は0-100km/hを8.5秒(欧州発表値)で加速。すべてのグレードの最高速度は電子的に160km/hに制限されている。
フォルクスワーゲンID.4
フォルクスワーゲンID.4


関連のニュース