ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE
第3戦富士24時間レース
開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km
5月30日(予選)
天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:5700人
5月31日〜6月1日(決勝)
天候:雨のち曇りのち晴れ コースコンディション:ウエット〜ドライ 観客数:2万5200人(31日)・2万2600人(1日)
悔やまれる序盤のアクシデント。それでも執念実らせ、4位で完走果たす
2025年もaprは、全7戦で争われるスーパー耐久シリーズに、FIA-GT3で競われるST-Xクラスに臨む。DENSO LEXUS RC F GT3をドライブするのは永井宏明選手、新たに加わった蒲生尚弥選手と小林利徠斗選手、そして嵯峨宏紀選手。また、富士スピードウェイを舞台とする、今大会は富士24時間レースとしての開催とあって永井秀貴選手、さらにaprでは初レースとなる、阪口晴南選手も加えての参戦となる。
モビリティリゾートもてぎで行われた開幕戦は、予選2番手からスタートを切り、決勝では3位を獲得。続く鈴鹿サーキットの第2戦は予選こそ4番手だったものの、スタートを担当した小林選手がいきなりトップに浮上! その後、接触によって予定外のピットストップを強いられたため、5位に留まった。
しかしながら、2戦ともに完走果たし、結果以外の収穫は多かった。サクセスウエイトも10kgと最小限で済んでいることは、過酷なレースであるからこそ、戦いを優位に進めさせるのではないか。もちろん、狙うは悲願の24時間レース初優勝だ! 今回は今年初めて全クラス混走となる10クラス60台で競われ、ST-Xクラスには6台がエントリーしている。
公式予選 5月30日(金)12:30〜
過去にスーパーGTで、レクサスRC F GT3を走らせた経験を持つ阪口選手ながら、タイヤも異なれば、またセッティングにも違いはあるはず。そこで木曜日の専有走行は2セッションとも阪口選手が最初にドライブしトップタイムを刻む内容。また、ナイトセッションを含み、練習走行でのベストタイム、1分41秒312をナイトセッションで小林選手が記し、これもトップタイムと順調な状況であった。
この週末の天気は実に不安定で、ナイトセッションの終了後に降り出した雨は未明まで降り続き、早朝の路面は濡れたまま。幸い、予選開始は12時からだったため、ほぼドライに転じていた。WET宣言は出されたものの、ドライタイヤでの走行となった。
気温13度、路面温度も21度と夏日が続いた昨今としては低めだったことから、Aドライバー予選に臨んだ永井宏明選手は、じっくりウォームアップを行い、計測3周目からアタックを開始。まずは1分42秒097を記し、続けてのアタックで1分41秒316にまで縮めて4番手につけた。
続くBドライバー予選に臨んだ蒲生選手も、計測3周目からのアタック。1分41秒653を記した後、本人曰く「ミスがあった」ため、1分40秒544を出すに留まって6番手に。永井宏明選手との合算タイムにおいても6番手となった。
ユーズドタイヤでの走行ながら、Cドライバー予選で小林選手が1分40秒465をマークしてトップになるも、ハンドリングに改善が必要という意見にチームが対応。Dドライバー予選を走行した嵯峨選手、そしてE・Fドライバーのフリー走行で永井秀貴選手、阪口選手は改めたセットでの走行となった。
永井宏明選手
「路面はほぼ完全に乾いていたので、ドライで走れて良かったです。路面温度が低くて、僕の時は内圧上がりきらなかったので、もうちょっと、うまいこといけば良かったですけど。なので、タイヤ内圧が合っていればもうちょっと出たと思いますけど、まわりに比べると、まだまだ遅れているな、という感じはします。決勝に向けてはいい方向には進んでいて、淡々と走れるセットじゃないかと思います」
蒲生尚弥選手
「タイヤのいちばんいい時に、自分自身もミスをしちゃったりして、それでまとめきれなかった感があったので、ちょっと残念ですけど、24時間レースですので、決勝で挽回できるように、頑張って走りたいと思います。ミスしちゃったのは計測4周目です、40秒台には入りましたが……。すいません」
小林利徠斗選手
「路面の状態が各車違いますし、A・Bドライバーの予選と状況は違うと思うんですけど、とりあえず決勝に向けたセットというところでの判断でしたので、ある程度の感触はありつつ、もっといろいろ目指さないといけないところがありました。また決勝に向けては少し見直したりするところはあるのかなと思います。水曜日の午後から走り始めて、少しずついろんなこと試して、いろんな方向性は見えてきていると思うので、24時間走って、果たしてどこがいいのかっていうのを、いろいろ方向性は見せてきているんじゃないかと思っています」
嵯峨宏紀選手
「利徠斗が走った時に、ちょっと曲がらないということがあったので、大きく振ってデータとってどうだろうって、やっていたんですが、結果、僕の時は逆の方に行っちゃったんで、それを戻して……という感じでしたね。実際、予選のタイムより決勝のタイムの方が今回は重要だと思います」
永井秀貴選手
「僕は2周しかせず基準タイムを出しただけでアタックできていないので、はっきりわかっていないのですが、ちょっとまだアンダー傾向かなと思っています。決勝はチーム戦なので、みんなで力を合わせて戦っていきたいと思います」
阪口晴南選手
「今回、スポットで帯同させてもらって、一緒にやっているんですが、最初の水曜日の走行から今にかけて、少しずつチームと一緒にクルマを良くするために取り組んでいる最中で。ただ、当然ニュータイヤの軽い時のフィーリングだとか、逆に重たい時の動かし方はいろいろ確認しながらやってきているので、少しずつではありますが、良くなってきていると思います」
「クルマ自体はよく知っていますし、それも含めて起用してもらったんだと思いますが、ただ、もちろんタイヤが違いますので、ここでこのタイムレベルで、どういった動きをするかっていうのは、またひとつ自分の経験にもなったかなと思っています。長いレースなので、コンスタントに走れるのが一番いいと思いますし、トラブルなく、ペナルティなく、僕自身もミスを犯さないようにして、チームとしてもミスを犯しにくいようなミーティングなりをして、レースに備えたいと思っています」
金曽裕人監督
「まだ悩んでいます、24時間レースに何が正しいかを。ロングセットやバランスのいいセットを取っていましたが、そうは言いながら、まだもう一発速さが欲しいし、今回は経験も豊かで速さもある晴南選手も呼び、セットアップも積極的に参加してもらっています。まず悲願の初優勝のために、何ができるんだろうかと。予選専用セットは入れずにロングランの悩みがあったので確認兼ねて決勝想定のセットでアタックしてもらいました。『その状況では、上出来でしょう』というところはありつつ、最後の予選枠、晴南選手が乗った時の満タンバランスを、もっといい方向に降りたいかなという感じです」
「今まで速さ追求傾向のセットが多くでロングランに今イチ強くないクルマになっていたので、ここは冷静にもう一発、明日のフリー走行までに正しいことを考えなきゃいけないって感じですね。24時間レースは予選の順位がそもそも関係ないので、三者三様のセットを考えてみて、一発のセットも考えてみたりしましたが、それよりも今は決勝セットをもうちょっと詰めたいかなという感じです。なんせ悲願の初優勝、それしかスローガンないですから!」
決勝レース 5月31日(土)16:00〜6月1日(日)15:00
土曜日の午前に行われたウォームアップ走行で、決勝セットをさらに詰めるはずが、雨に見舞われて行えず。DENSO LEXUS RC F GT3は、蒲生選手、小林選手、阪口選手の順で走行はしたが、ウエットコンディションの肩慣らしに留まった。
この雨はいったんやんだものの、昼過ぎから再び降り出し、しかもスタート進行開始とともに、周辺に落雷さえももたらすように。観客を含め、安全を確保するため、当初のスタート時間、15時から1時間遅れの16時に、決勝はセーフティカー(SC)スタートでの開始、そして1時間減の23時間でレースが競われることがアナウンスされた。
やがて雷はやんでウエットコンディションの中、レースが開始される。今回のスタート担当は蒲生選手。4周のSC先導の後、まずはポジションキープで様子見のはずだった。ところが、開始から30分後、DENSO LEXUS RC F GT3が突然ピットイン。300Rでコースアウトし、ラジエータグリルにびっしりと芝が。メカニックが芝を払って、すぐにコースに戻すも、トップから1分半の遅れを取ってしまう。だが、実際のダメージはそれだけではなかった。コースアウトの際、縁石にフロントスポイラーを強打していたのだ。空力バランスの狂った状態ながら、26周目には総合でも6番手に順位を戻す。
そして、スタートから1時間半近く経過した42周目、最初のピットストップを行い、次に乗り込んだのは小林選手。路面はほぼ乾いていたため、ここでウエットタイヤからドライタイヤに交換する。チームベストを更新し続けて走る様子は頼もしくもあったが、実際にはフロントダウンフォースが悪化したマシンのハンドリングに苦しんでいたはずだ。
86周目からの第3スティントを担当したのは永井宏明選手だ。これまた快調に走らせていたように見えたのだが、突如119周目にピットに戻ってくる。交代してから1時間強、ややタイミングとしては早い。実は、その直前に1コーナーで接触があり、ステアリング周囲を痛めていたのだ。このダメージは予想以上に大きく、ついでにスポイラーも交換。メカニック総出の作業でも、2時間以上を要してしまう……。
これでもう優勝は絶望的ではあるが、諦めの悪さはaprならでは。その分、徹底的に修復されて、トップグループとも遜色のないペースで走り続けた。シリーズのことを思えば、他力本願ではあるものの、少しでも順位を上げられれば! 復帰後、DENSO LEXUS RC F GT3に乗り込んだのは阪口選手。120周目から145周目を担当する。しかし、その間、霧が発生して視界を遮り、何度もSCが入って挽回の機会を奪われていたのは、何とも悩ましくもあった。
続いてドライブしたのは永井宏明選手。そして、189周目、嵯峨選手に交代した直後に、赤旗でレースが中断される。9時間を経過したばかりの頃。2コーナーでアクシデントが発生し、1台がコース上でストップ、そしてガードレールがひどく損傷したためだ。ドライバーに怪我がなかったのは、何よりだった。
40分ほどの中断の後、10時間目となる2時にレースは再開。そして233周目から、再び蒲生選手が乗り込むことに。247周目を挟んでダブルスティントが敢行される。しかし、あたりが明るくなり始めた4時45分、レースが赤旗によって再び中断される。それまで何度もSCで対応されてきた霧のせいだが、もはや走行にも支障あり、という状況にまで陥っていたためだ。中断は実に2時間45分にも及日、7時30分にようやくSCスタートによってレースは再開される。
それからほぼ1時間経過した、291周からは再び小林選手がドライブ。ところが、わずか6周後に、ボンネットがない状態でピットに戻ってきたではないか! 先の接触時、ボンネットを留めるピンに入ったクラックが、ついに堪え切れず……。その修復には15分ほどを要していた。その後、小林選手は335周目を挟んで、379周目までのダブルスティントを実施。これだけの長き周回を走り続けたのは、もちろん初めて。この経験が今後に活かされることを期待しよう!
本来、Aドライバーに義務づけられた乗車時間は3時間36分以上だったが、1時間の短縮で3時間27分に改められ、さらに朝の中断によって1時間56分に変更。これを満たすべく、永井宏明選手が三たび乗り込み、規定を満たした403周目に永井秀貴選手に交代。これより前に、ST-Xクラスで一時トップを走っていた車両が接触からのトラブルによりピットインを余儀なくされた。さらに4番手を走っていた車両にも重大なトラブルが発生し、ピットから動ける気配が無い。他人の不幸ではないが、ひょっとすると、ひょっとするかも。
残り2時間を間もなく切ろうという421周目から、再び阪口選手がドライブ。信じて諦めずに走り続けると、ラスト1時間を控えた段階で、先のトラブル車両の2台はまだピットの中。460周目、ついに4番手に浮上!途中給油だけ行って、そのまま阪口選手はチェッカーを受けることになった。一時は最下位の60位まで後退しながら、総合でも494周を走破し、29位まで挽回を果たしてもいた。
優勝を目指していただけに、DENSO LEXUS RC F GT3の4位という結果には納得がいこうはずがない。しかし、マシンを復旧させ完走を果たしたことに意義は大いにある。次回のレースは7月5〜6日にスポーツランドSUGOで、5時間レースとして開催予定。今回、ドライバーだけでなく、メカニックが見せた執念が、今度こそ報われることが期待される。
永井宏明選手
「前よりも乗りやすくなり安定したタイムが出せたのですが、今回も接触により壊してしまい目標に届かず……皆様すみません。その後はキッチリ走れてメカニックのみんなが一生懸命に直してくれたこと感謝してます。なんとか4位でポイントも獲れましたし、シリーズ争いには残れました。これからまた頑張って、表彰台に上がれるように頑張ります」
蒲生尚弥選手
「早々にチンスポイラーを壊してしまい、すみません。万全に修復してくれたメカニックに感謝しています。修復後も、タイミングある毎にいろいろセット変更をして、次のSUGOに向けた走りもできたと思いますので、そういう部分では少しでも収穫はあったと思えて良かったです」
小林利徠斗選手
「それなりのタイムでは周回していましたけど、実際、トップ集団と比較すると、パフォーマンスは足りていませんでした。なので、優勝するにはもっと改善する必要がありますね。とりあえず修復後もマシントラブルは無く、完走でき4位になったのはチームのおかげでと思います。僕自身、2スティント連続は初めてで、こういう経験ができるのも24時間の魅力で、勉強になる部分も多く良かったです」
嵯峨宏紀選手
「レースウイークに色々セットを試し昨年よりは、まだ足りませんがペース悪くなかったのですが、自分の与えられた仕事を淡々とこなしただけになっちゃいました。まぁ、序盤のアクシデントで展開的に前を追いかけられる状況でもなかったので、それがすべてかなと思います。4位になれたのは他の2台のトラブルで6位から繰り上がり。勝つ為には、24時間は無アクシデント、無トラブルが大前提ですね。また切り替えて頑張ります」
永井秀貴選手
「うまくつなぐことができて、それが何よりでした。クルマの方も以前よりは、乗りやすかったですし、ちょっとタイヤはタレていましたけど、その中でも当たらずに、うまく完走できたので良かったと思います。タイヤ無交換で、兄の後でそのまま乗らせてもらったのでグリップレベルは厳しかったですが無事完走できて良かったです」
阪口晴南選手
「24時間なので、いろんなことが起きると思いますし、まずはチェッカー受けられたことを、チームの皆さんに感謝したいと思います。安定したペースで走れてましたが、でもトップと比較すると、ラップアベレージも最高速も劣っているので、修復でのロスとかが無くても勝てなかったと思うので、そのあたりはまだまだ手を加えていく必要はあるかと思います」
「僕が以前、RC Fに乗っていた時に覚えている経験だとか、感覚をフィードバックしたりして、このクルマに押し込んで、いろいろやらせてもらえました。レース中にもチームは、次のSUGOに向けて『こういう方向性にした方がいいんじゃないか』みたいなミーティングを一緒にする程、積極的だったので、僕は今回乗るだけじゃなくて、少しでもチームの手助けができたらな、って思って参加させてもらったので、そういう意味ではチームの雰囲気も良く、常にいいコミュニケーションが取れたと思います」
金曽裕人監督
「いろいろありましたね。何もなければ、優勝は無理でもポディウムは狙え、面白いレースができたかと思います。でも、これが24時間レースですし、ラッキーもアンラッキーもあり致し方ない部分。マシンは晴南選手から沢山のフィードバックもあり、まだまだ詰め切れるでしょう」
「やっぱり晴南選手を呼んできたことは正解で、ちょっと凝り固まった我々のセットアップとか、追い求めても無理な部分とか、ストロングポイントを教えてもらえ勉強になった。なるほど『そういう考えか!』というのを、また違った視点で理解できたのは、すごく大きかったです。純粋に行き詰まっていた部分を『どう思う、どう考える?』を、彼の経験の中から的確に答えてくれました」
「レース展開は、半日はかかりそうな修復作業を諦めず無我夢中で2時間で終わらせたメカニックに心から感謝ですし、修復後トラブルもなく安定して走りきり結果的に4位もこの情熱のおかげです。必勝体制で臨んだつもりでしたが、24Hは奥が深く、簡単には勝たせてくれない。来年こそ!」