ハーフクラッチの“輪郭”
富士24時間4クラス制覇、エクセディのアドバンテージ

「フィーリングとしてキレがあるのにペダルタッチが軽い。軽いのにブニャブニャではなく、カチッとしていて、つなぐところの過渡域の輪郭をつかみやすい。スーパー耐久はローリングスタートですが、富士24時間はピットストップ回数も多いですし、半クラッチの把握しやすさも結果に影響します。富士でも例えば滑ったりジャダーが出たりしたということもなく、フィーリングが最初から最後まで変わらなかった。だから、疲れないんです(笑)」(ST-4クラス41号車HCギャラリーエクセディGR86ウインマックスの冨林勇佑)

 耐久レースでは、マシンもドライバーもパフォーマンスが安定していることも重要だ。その両方に大きく関係するパーツのひとつがクラッチ。そのクラッチで、S耐において多くのエントラントから支持を受けているのがエクセディである。

 2026年第3戦富士24時間レースでは、エクセディ製品を搭載する車両が4つのクラスを制し、長年のエクセディユーザーでもある冨林を擁する41号車も今季初優勝を挙げた。支持の理由は彼の言葉にも集約されているが、これを実現しているのが、駆動系部品のリーディングカンパニーとして自動車メーカー向けの純正品開発やコンペティションの現場で蓄積してきたエクセディの技術力、ノウハウである。

『EXEDY Single Sports Series Spec-R』軽量ダンパー採用による低慣性化により優れたシフトフィールとシフトスピードを実現するとともに、圧着力適正化や摩擦材の選定とも併せ、必要な伝達トルクの確保と高い駆動系保護性能の両立を実現したスポーツクラッチ。ディスクは軽量メタルとオルガニック(樹脂系摩擦材)の2タイプ(写真はGR 86用のクラッチカバー&軽量メタルディスクのセット)。フライホイールはレスポンス重視の軽量タイプなど重量別に3種類を設定
「シフトミスを気にしたことがないです」。富士では約8時間を担当したという冨林(左から3人目)。「24時間だと、プッシュを100%とすれば、多くの時間は90%後半くらいで、場面によっては100%などですが、シフトミスは気にしたこともないですね。最近、エクセディユーザーが増えてきている気がします(笑)」とアドバンテージ消失を心配?

「ST-4や5Rのユーザー車両では、『シングルスポーツシリーズ』の『スペックR』という純正交換タイプを使っていただいています。クラッチには適切なトルクを伝えるほか、過大な入力があった時にディスクを滑らせて力を逃がし、ほかの部品を守るという役目もある。構造が市販車に近いS耐車両では外せない要素です。スペックRでは、ディスクの摩擦力、ダイヤフラムスプリングの圧着力、トルク容量の閾値とイナーシャ、それらのバランスをトータルで判断し、落とし込んでいます」(株式会社エクセディ 戦略事業本部 アフターマーケット開発部 設計チーム チーム長 青木信太郎さん)

 狙った特性を得るためにもっとも重要なのが、ダンパー特性とダイヤフラムスプリングの荷重設定をどのように施すかだ。ダンパーはクラッチがつながっている時にエンジンからの出力を最初に受け止める。ダイヤフラムスプリングはフライホイールにディスクを押し付け、駆動力の伝達⇔遮断を行なう。

「エンジンからの出力には回転変動(細かい振動)があり、それをダンパーが減衰します。レース時はアクセル全開時のトルクをどう伝えるのかが最優先ですが、街乗りをよくするクルマならアイドリング時の回転変動をいかに減衰させるか、などが課題になります。伝達力はダイヤフラムスプリングのバネレート、ディスク径、ディスク枚数、摩擦材で決まります。対応トルク容量の決定とともに、ペダル反力、“ペコン感”の設定もここで行ない、それを違和感のないものに仕上げる。データの蓄積もありますので、レース用ではどういうものが適しているのかを精査のうえ、設定しています。そこがユーザーさんからの支持につながっていると考えております」

●株式会社エクセディ:https://www.exedy-racing.com/

41号車は軽量メタルのディスク(と軽量タイプのフライホイール)を使用。左が6月の富士24時間で41号車が実際に使用したディスク。合計で約6000㎞走行後のもの。摩擦材はあまり擦り減っておらず(右上)、「もう1戦、24時間いけるはず」と冨林、青木さんとも口をそろえていた。上の右と右下の写真はその新品。ダンパーとはディスクハブに付いている小さいコイルスプリングのこと。ダイヤフラムスプリングはクラッチカバー周縁部から中心に1枚1枚伸びているもので、全体でバネ作用を得る
富士24時間でクラス優勝を挙げたほかのエクセディユーザーは、ST-5Rの88号車トレジャーワンwith 村上モータースMAZDAロードスター(写真)、ST-3の39号車エアバスターWinmax RC350EXEDY、ST-5Fの11号車FCR58 SAKAE-MS FIT

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