真の“パフォーマンスMAX”を追って
絶対値の先にある、トータルベストの「ブレーキ性能」

 たしかなユーザーフィードバックをターゲットに、製品開発をしながら特に富士24時間レースで勝つ。それをスーパー耐久の現場で前身のN1耐久の時代からエントラントとして取り組んできた、ブレーキ総合メーカーのエンドレス。13号車エンドレスGRヤリスが2年ぶりの富士24時間ST-2クラス優勝を決めた。

 だが、エンドレスはさらにその先も見据えている。これまでは商品のパフォーマンスの絶対値追求を重視してきた面もあった。それも重要だが、いまでは純正ABSシステムなども含めたそのクルマの制御と全体としての車両特性に対し、どのように最適化していけばトータルのブレーキパフォーマンスを上げられるのかを追求するということに取り組んでいる。

剛性と形状の理想を追うエンドレスの挑戦。富士24時間制覇を支えた新開発キャリパー
13号車エンドレスGRヤリスの前後ブレーキ。フロント(右)はキャリパーにロータールーバーとパッドルーバー(キャリパー両端の上部で空いているところ。下に青い摩材が見える)を設けて軽量化。ローター周縁部とのあいだのクリアランスを少し広げることで、キャリパーとローターの冷却性も確保した。エンドレスは上位モデルではトポロジー最適化(荷重や負荷、空間的制約など与えられた条件下で材料をどのように配置すれば、最適な構造を確保できるかを解析する手法)を導入。製品クオリティをさらに大きく向上できたという

「富士24時間ではヤリスのキャリパーに新規のものを前後に投入しました。剛性と形状のバランスを把握するのが大きな目的のひとつです。ブレーキに厳しい(第1戦)もてぎで高負荷レンジのキャリパー変形率を確認でき、より低い温度レンジの(第2戦)鈴鹿の場合でどうなのかも確認できた。鍛造アルミなので変形率は温度によって変わります。その時に生じるペダルストローク変化やABS介入時のフィーリングなどですね。負荷で言うと富士はその中間ですが、距離が長い。軽量性と耐久性を確保しつつ、富士の場合でそれらが狙ったとおりにできているかを確認しました」(エンドレスの開発ドライバーで、13号車のドライバーも務める、株式会社エンドレスアドバンス MS事業部 取締役部長の花里祐弥さん)

 代表的なトライは、キャリパーの上部で左右をつないでいるローターブリッジを削ったこと。対変形(キャリパーが広がらないようにすること)を考えるなら、ここは厚みを確保すべきで、削るのはご法度だと言われてきた。富士24時間で使用したパッドはほぼ均一に摩耗。キャリパーの変形はパッドの減り方に大きく影響する。「キレイに減っていたというのは我々にとって誉め言葉です(笑)」

剛性と形状の理想を追うエンドレスの挑戦。富士24時間制覇を支えた新開発キャリパー
富士での13号車は、ブレーキ類の交換はフロントのパッドのみ。フロントのキャリパーとローター、リヤは交換していない。すべてを交換してもメンテナンスタイムの10分間は余る計算は立っており、パッドが持つ限りはメンテナンスタイムを後ろに引っ張る作戦だった

 リヤについては、あくまでS耐車両として考えた時に、エンドレスの従来タイプではABSの介入時間が長く、ペダルもガチッと止まるような感じのところがあったという。そこは変形率や変形の仕方などが大きく関与するところで、過剛性が影響しているのでは?」というのが花里さんの見立てだった。

「適正剛性と適正変形が必要で、僕が感じたその塩梅を開発エンジニアに100%理解してもらうには完全な共通言語を持つほうがいいということで、クルマは異なりますが、開発エンジニアの島谷篤史がまずは3号車でST-4を走っています。弊社には5軸マシニングセンタが2基ありますから、乗って得たデータとフィーリングを分析し、すぐ実物に落とし込むことができます。体感ではありますが、富士ではブレーキングポイントが奥になりましたし、不意なオーバーシュートなどもありませんでした」

 S耐のみならず、多くのレースカテゴリーで、そして一般ユーザーに対してもエンドレスが高いシェアを有していることも納得できるはずだ。

●株式会社エンドレスアドバンス:https://www.endless-sport.co.jp

剛性と形状の理想を追うエンドレスの挑戦。富士24時間制覇を支えた新開発キャリパー
富士では終盤に雨脚が強まった。この時点では全車がスリックタイヤ。難しいコンディションとなったが、13号車はABS介入もなかったようで、3分ほどあったタイム差を逆転した。左から花里さん、石坂瑞基、伊東黎明、岡田整。13号車は第4戦SUGOも制し、2戦を残してST-2のランキングトップに
剛性と形状の理想を追うエンドレスの挑戦。富士24時間制覇を支えた新開発キャリパー
富士での3号車エンドレスGR86は残り1時間ほどの段階でトップを快走していたが、避けようのない接触でフロントまわりにダメージ。緊急ピットインで3位フィニッシュに。SUGOでは今季初優勝。ST-4のランキングトップに立った

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