さらに今回のメルセデスの変更には、緻密な計画が見てとれる。非公式ながら、ロシアGPで3トークンを使用したフェラーリと2トークンを使用したメルセデス。一見、両者の開発は同等に進んでいるように見えるが、そうではないとホンダの長谷川祐介総責任者は指摘する。
「本来トークンを使用するタイミングに合わせて、ユニットも新しくしたい。そうでないと、トークンを使用する前のユニットは旧バージョンになってしまいますから」
ベッテルのパワーユニットを例にとって説明しよう。1基目はバーレーンGPのフォーメーションラップでブローしたため、今後はレースで使用できない。そこで中国GPに2基目を投入したが、そこでトークンを使用しなかったため、この2基目は旧バージョンとして残ることとなる。もし中国GPで使用した2基目にトークンを使用していれば、最新ユニットとしてシーズン終盤まで好きなタイミングで使用できたが、旧バージョンとなってしまったため、フェラーリとしてはバックアップ用、またはパワーユニットの負荷が小さいモナコやハンガリーあるいはシンガポール用として、限定的な使い方を強いられることになった。
逆にメルセデスはユニットを新しくすることなく、トークンを使ってアップデートすることに成功したため、まだパワーユニットを交換していないメルセデス・ユーザーのドライバーは、今シーズン使用できる5基すべてが最新仕様となる。それが3基なのか5基なのか、これは大きな違いだ。