そして、もしかするとこれよりも大きな影響が出そうなのが、たばこ産業だ。世界保健機関(WHO)によれば、最初にパンデミックが起きた中国や、現在パンデミックが起きているヨーロッパでは男性の致死率は女性より高く、新型コロナウイルスでこれまで亡くなった人は3分の2が男性という統計があるからだ。そして、その要因のひとつとして考えられているのが、男性の方が高いという喫煙率だ。
新型コロナウイルス感染症と喫煙についての医学的なデータは発表されていないが、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称)が、別名「タバコ病」とも呼ばれているように、喫煙によって発症する病気であることは医学的にも認められており、今回の新型コロナウイルス感染症によって、禁煙が世界的に進むと考えられる。
F1は昨年からたばこ産業がチームをスポンサーするようになった。フェラーリは「ミッションウィノウ」という名の下に、フィリップモリスから約160億円を受け取り、マクラーレンも「A BETTER TOMORROW」というプロジェクトを通して、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)から約10億円を手にしている。しかし、両チームが同じ金額を今後も受け取れる保証はもはやどこにもない。
現在、F1は予算上限の大幅な引き下げについて話し合っている。これまでチーム間の経済状況の隔たりが大きく、なかなか実現できなかった改革が、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、いまようやく動き出そうとしている。