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F1 ニュース

投稿日: 2020.06.08 16:45
更新日: 2020.06.08 16:53

F1名ドライバー列伝(5)ミハエル・シューマッハー:不屈の精神と人間離れした速さ。フェラーリ黄金期を築いた絶対王者

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F1 | F1名ドライバー列伝(5)ミハエル・シューマッハー:不屈の精神と人間離れした速さ。フェラーリ黄金期を築いた絶対王者

 しかし、レーススタート時には激しい雨が降り、今のF1の基準ではレース不可能と判断されるだろうコンディションとなる。そしてシューマッハーはクラッチの問題によりスタートで出遅れ、3番手からポジションを落としてしまう。

 好結果を出す望みは絶たれかのように思われたシューマッハーだが、そこから信じられないような挽回を見せる。チームメイトのアーバインを含む多数のドライバーがスピンしたこともあり、3周目までに5番手に浮上。その後、2番手のジャン・アレジとレースをリードするジャック・ビルヌーブを、それぞれターン5で追い越した。

 コンディションは最悪で、ヒルは3度目のスピンの後、ピットウォールにヒットしてリタイアした。一方のシューマッハーは、そのころトップに立ち、ウエットの路面の上で、決して最高とはいえないマシンを見事にコントロールして走っていた。

 当時のコメンテーターたちは、このコンディションで速いのはウイリアムズであり、シューマッハーは予選同様彼らには太刀打ちできないと予想した。しかし実際どうだったかというと、他のドライバーたちはスピンしたり、チェッカーフラッグまで辿り着くのがやっとだったのに対し、シューマッハーは別次元の速さを見せた。

 25周目までには8番手までのドライバーたちを周回遅れにし、他のドライバーたちより1周3秒速いタイムで周回を重ねた。他の上位勢が1回ストップで走ったのに対し、2回ストップを実行する余裕すらあった。レース後半の最終コーナーではひやっとする場面があったが、シューマッハーも人間であることを観客たちが思い出したのはその瞬間だけだっただろう。

 シューマッハーは世界クラスのパフォーマンスを誇示し、表彰台で当時のチーム代表ジャン・トッドとともに勝利を祝った。65周のレースのなかで、最終的にシューマッハーに周回遅れにされなかったのは、2位アレジと3位ビルヌーブのみだった。

1996年スペインGP ミハエル・シューマッハー
1996年スペインGP ミハエル・シューマッハー

 このレースの前から、シューマッハーが現役ドライバーのなかでベストであることに誰も疑問を持っていなかった。そしてこのレースの後には、評価のレベルが一段階上がり、シューマッハーはF1史上ベストドライバーなのではないかという議論がなされるようになった。

 シューマッハーは、このレースでフェラーリの信頼にしっかりと応えた。どんなマシンでも乗りこなし、チャンスさえあれば勝利をつかむ力があるドライバーであることを証明したのだ。

 フェラーリとシューマッハーが最強の組み合わせになるだろう兆候が、このレースで垣間見えた。そして両者は数年かけてタイトルをつかむ。そのころにはシューマッハーが史上最高のドライバーであることに疑問を持つ者はほとんどいなかった。


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