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F1 ニュース

投稿日: 2020.09.03 09:29
更新日: 2020.09.03 10:31

【中野信治のF1分析第7戦】加速するフェラーリの大低迷とルノーの躍進。佐藤琢磨を超えてほしい次世代

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F1 | 【中野信治のF1分析第7戦】加速するフェラーリの大低迷とルノーの躍進。佐藤琢磨を超えてほしい次世代

 フェラーリのオンボードを見ていてもコーナーはしっくりきていないし、とにかくストレートは遅いし、コーナーが遅いからダウンフォースも減らせないし、すべてが悪循環ですね。コーナーが速ければダウンフォースを少し減らしてストレートスピードを補うことができますが、フェラーリは結局マシンバランスが良くないので、ダウンフォースを減らしてストレートスピードを稼ぐということはできません。ドライバーに関しても、どうしようもないことがオンボードを見ていてもわかります。

 フェラーリのパワーユニットのドライバビリティも良くないですよね。単純にパワーがないだけではなくて、パワーの出方も良くなくて、クルマとのマッチング面もあると思うんですけどトラクションのかけ方がすごくシビアな印象です。今年はシャルル・ルクレールが表彰台に何回か立っていますが、あれはドライバーが本当に頑張っていたのとレースの流れも良くて強引に勝ち取っているような表彰台なので、それを考えると、これから先のフェラーリは不安ですよね。

 それとスパでは、アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーの活躍が目立っていました。ガスリーは本当にクルマがはまった時のキレはあるので、今回はクルマがうまく決まっていたし、ハードタイヤが機能していたのでレース中のセーフティカーでそのメリットが活かされなかったのは残念ですが、あれだけの速さを見せられたというのは今後に向けて明るい材料なのかなと思います。

 アルファタウリのマシンに関しても、ハマると速いということがわかりました。今年のアルファタウリは少し波があるのですが、ダウンフォースが少ないサーキットで速かったというのは次のモンツァでも楽しみですよね。

 次戦のイタリアGPのモンツァはスパと同じく高速サーキットと言われていますが、スパとはまったくコース特性が違います。高速サーキットで全開率も高いですが、高速コーナーはなくて、シケインの連続でコーナリングスピードはそれほど高くありません。最終コーナーのパラボリカが少し速いかなというぐらいで、低速~中速コーナーが主体です。

 マシンのセットアップもスパとはまったく違いますし、高低差もないので特性がまったく違うんですよね。ですので、イタリアはベルギーのような展開にはおそらくならないでしょうし、また別のストーリーになると思います。

 そういった意味で多少フェラーリは良くなるのかもしれません。ダウンフォースも減らして走ることができるので、ストレートスピードの差も多少緩和されるかもしれないですが、今までの差に戻るでしょうね。もし大きなアップデートが投入できるのであれば躍進してくる可能性はありますが、アップデートが投入できなければ苦戦することはなんとなく予想できてしまいます。

 ルノーに関しては、ダウンフォースが少ないサーキットという意味では同じですが、スパとコースの特性が違うのでスパのようにはならないと思いますね。 あとはレーシングポイントも速いのかなという気がします。

 そして、ベルギーGPの前の週になりますが2度目のインディ500制覇を成し遂げた佐藤琢磨と、FIA-F2ベルギーのレース1で優勝した角田裕毅にもおめでとうと言いたいです。

 今年はとにかくレース界がコロナ禍という厳しい状況で始まって、それほど明るいニュースがないなかで、インディ500で2度目の優勝という素晴らしいニュースを届けてくれた琢磨は本当にすごいことだと思います。

 勝ったことだけでなく、これだけの長いあいだトップカテゴリーに参戦し続けることがすごいんですよね。まず、そのカテゴリーに居続けないとチャンスは来ないですし、彼の凄いところは挑戦し続けるという力ですよね。それも本当にすごいと思いましたし、今年に関しては練習走行から勝てそうなフラグ(予測)が立っていました。

 僕がこう言うのもなんですけど、今回のレースの戦い方や組み立て方を見ると琢磨はさらに成長したなと思います。勝つドライバーの王道の戦い方をしていました。僕と琢磨が携わっているSRS-F(鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ)の生徒たちにもよい刺激を与えてくれると思いますし、日本のトップドライバーたちにとっても大きな刺激になったと思いますね。

 そして、日本にいるドライバーたちには、今回の琢磨の活躍を見て、とにかくその舞台に『次は自分が行くんだ』という気持ちを持ってもらいたいですね。今こそ、そういう気持ちになるときで『琢磨がいけるんだったら俺だっていけるはずだ』という気持ちをもっと持ってほしい。

 琢磨は43歳ですからね。国内の若手だけでなくトップの30歳前後のドライバーたちにも、もっと奮起してほしい。日本でトップドライバーになって、その地位を確立して人生設計をするのもいいとは思いますし、それも簡単なことではないですが、あの琢磨の活躍を見る、国内トップドライバーたちは今の琢磨の年齢まで10年以上あるので、これからでもアクションを起こしてあの舞台を目指してほしいと思います。

 もし僕が30歳そこそこという年齢で日本でトップを取れているのであれば、その全部を捨ててでも、なんとか世界にいこうと思います。『捨てること』は難しいですし勇気が必要ですが、でも挑戦することはその地位と同等か、それ以上の価値があると思います。挑戦をすると失うものが大きいとみんな思うんですけれど、挑戦することによって得るもののほうが僕は多いと思います。

 僕は大して形にはできていないですが、その挑戦する気持ち、実行するということは今後に生きてくると思うので、琢磨の優勝が日本のみんなのエネルギーになってほしいと心から願っています。

『どうしたら自分は琢磨になれるのか』、そして『どうしたら琢磨を超えられるか』という気持ちをみんなに持ってほしいし、チャレンジというのは思い立ったらいつでもできます。そういった気持ちを持つドライバーを応援したいですね。

 そして、FIA-F2でそこに一歩一歩近づいている角田についても、今まで何回かお伝えしているとおり、マシンを速く走らせる能力は高くて、その部分では僕はすでにF1レベルだと思っています。ここから角田が世界の一番上の舞台であるF1に立ち、そしてその舞台でトップを争えるドライバーになれるかは、マシンを走らせる能力以外で彼がどこまで成長できるかに掛かっています。

 チームとどうコミュニケーションをとってマシンを作り上げ、どうチームを引っ張っていくのかなど走り以外の部分が大切になります。その部分で彼が一流になることができれば、F1に行ってもどんどん活躍できるドライバーになると思います。本当の意味での勝負はここからですし、今後の活躍をとても楽しみにしています。

<<プロフィール>>
中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。現在は鈴鹿サーキットレーシングスクールの副校長にスーパーGT、スーパーフォーミュラで無限チームの監督、そしてF1インターネット中継DAZNの解説を務める。
公式HP https://www.c-shinji.com/
SNS https://twitter.com/shinjinakano24

2020年スーパーGT Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTの中野信治監督
Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTの中野信治監督


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