チームに確認して問題ないと言われたのに、ペナルティを受けたことで、ハミルトンの怒りはFIAだけでなく、チームにもその矛先が向けられていく。ピットインのタイミングが近くとハミルトンはこう無線で伝える。

ハミルトン:僕を早めにピットインさせないで、絶対に!!

 ハミルトンによれば、ソフトタイヤでスタートしていたため、当初のピットストップのタイミングは16周目だったが、セーフティカーが6周入ったことで20周目以降あたりまで延ばせると考えていたという。しかし、メルセデスはハミルトンを16周目にピットインさせた。

2020年F1第10戦ドイツGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2020年F1第10戦ドイツGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

ハミルトン:馬鹿馬鹿しい

 さらに「早くピットインさせたないで」とお願いしたにもかかわらず、16周目にピットインさせたチームに対しても怒りをぶつける。

ハミルトン:なんでレース後に10秒加算しなかったの?

メルセデス:タイヤ交換時にやらなければならなかった。とにかく、いまはレースに集中して

ハミルトン:ポジションは?

メルセデス:P11

 10秒加算のペナルティを受けたとき、ハミルトンは「そんなことルールブックのどこに載ってんだよ!!」と言っていたが、5秒や10秒のタイムペナルティはピットストップ時に同時に消化しなければならないと書かれている。レース後に加算できるのは、ペナルティを受けた後にピットストップを行う予定がないときだけだ。

 つまり、ペナルティを受けた時点でピットストップを1度も行っていなかったハミルトンがピットストップ時にタイムペナルティを消化しなければならないこともまた、ルールブック、スポーティングレギュレーションの第38条3項に、明記されている。

 チーム側の対応の悪さとハミルトンがルールブックを把握していなかったため、両者の信頼関係は大きく崩れ、まだレース折り返し点前の24周目には状況はさらに悪化していく。

ハミルトン:早めにピットインしすぎだよ。たぶん、レース終盤にタイヤで苦しむことになるよ

ボニントン:フェルスタッペンは39.9秒だから

ハミルトン:ボノ、もう何も聞きたくないよ。何をやっても変わらないから

ボニントン:わかった、ルイス。しばらく会話はしないでおく

 ハミルトンがこれまで何度も素晴らしいドライビングで優勝をもぎ取ってきたことは間違いない。しかし、ハミルトンでさえ、ミスしたことは数え切れないほどある。そのときチームはハミルトンに最善策を講じ、絶妙の戦略で難局を乗り切ってきたものだ。今回、チーム側にミスがあったことは確かだ。だが、そのミスを責めるだけでは、ハミルトンに次の勝利のチャンスは訪れない。

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