「鈴鹿でのレースに勝ち、タイトル獲得という運命を自らの手の中に感じ始めたときから、大きなプレッシャーに襲われていた。そして、チャンピオンになった暁にはキャリアを終えようと考えるようになったんだ。アブダビでの日曜日の朝、これが最後のレースになるかもしれないと思ったら、そのことがレーススタート前に僕の頭をクリアにした。最後のレースになるかもしれないと考えていたから、すべての出来事を楽しみたくて……。そしてライトが消え、人生で最も強烈な55周が始まった。決めたのは、月曜日の朝。1日よく考えてから、まずビビアンとゲオルグ(ノルテ/マネージメントチームのメンバー)に伝え、それからトト(ウォルフ/チーム代表)に話したんだ」
「僕のせいで、レース界における家族であるチームが困ることになると思うと、それだけが気がかりでね。それでもトトは理解してくれたよ。彼は僕が完全に納得済みであることをすぐに察知してくれたから、安心した。レースキャリアのなかで最も誇り高い成果は、シルバーアローの素晴らしい面々とチャンピオンを獲得できたこと」
「いまの僕は、この瞬間を楽しむだけだ。これからの時間を堪能するときがきた。シーズンを振り返りつつ、今後の道のりで経験するすべてのことを楽しんでいく。人生の次のコーナーに差し掛かってから、何が僕を待ち受けているのかに目を向けるとしよう……」
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