中団グループではピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)が、フェラーリ2台を抑えて4番手を快走していた。5番手シャルル・ルクレール(フェラーリ)は、ガスリーとの3秒差を縮められないことに、イラつき始めていた。担当エンジニアのグザビエ・マルコス・パドロスからのタイヤを保たせるための細かい指示も、なかなか素直に聴くことができない。
マルコス・パドロス:ターン13はコーナリングから出口にかけて集中だ。ターン12の進入ではプッシュしすぎるな
ルクレール:何を言いたいのか、よくわからない! コーナリング中に減速するのか、加速するのか、どっちなの!? 出口重視なのか、コーナリング重視なのか?
マルコス・パドロス:ターン13は出口重視だ
後半47周目、ペレスのハードタイヤでのペースが伸びてきた。
バード:あと24周。追い付けるぞ
バード:ハミルトンは(1分)20秒6だ。フリーエアでね。ギャップは6秒だ
メルセデス陣営としてはもはや打つ手なしということか、ボニントンからの呼びかけがぱったりなくなった。
ハミルトン:きみたち、そこにいる?
ボニントン:もちろん、いるよ
ボニントン:捕まるとしたら、最終ラップかな
55周目、ルクレールのペースは上がらず、ガスリーとの差を9秒まで広げられていた。
マルコス・パドロス:サインツと順位を入れ替える必要がある。ガスリーを攻略するためにね。
しかしルクレールは譲るつもりはないようで、1秒2だった背後のサインツとのギャップは逆に2秒近くまで広がった。思わず叫ぶサインツ。
サインツ:シャルルは僕を後ろに置くために、ミスしまくってる
リカルド・アダミ:了解した
その直後の57周目、ルクレールはようやく順位を譲った。
一方ペレスとハミルトンの差は、58周目には1秒6まで縮まった。
ハミルトン:タイヤが摩耗してる
バード:ペースはいい。タイヤもいい。バッテリーもいい。行くぞ
ペレス:エンジンは?
バード:エンジンもいいぞ
ボニントンの予想よりはるかに早く、チェッカー10周前の61周目にペレスはハミルトンのDRS圏内に入った。ハミルトンはコーナー立ち上がりで、明らかにリヤが滑っている。それでもさすがに隙を見せず、2番手を死守。フェルスタッペンはアメリカに次ぐ2連勝を果たし、ハミルトンとの差を19ポイントまで広げた。ボッタスは2度もソフトタイヤに履き替え、最終周にファステストタイムを叩き出して、レッドブル・ホンダ陣営に一矢を報いた。
ランビアーゼ:素晴らしいドライブだったぞ
フェルスタッペン:やったぜ。なんてレースだったんだ! 信じられないようなペースだったよ
クリスチャン・ホーナー代表:教科書のような走りだった。チェコもいっしょだ。ダブル表彰台だよ
ペレス:みんな、ありがとう。チームが僕の国で勝った。最高だよ! さあ、これからテキーラタイムだ!!
一方、マシンを表彰台前に止めたハミルトンは、力なくこうつぶやいた。
ハミルトン:すべてを出し切った。でも単純に、ペースがなかった
リカルド・ムスコーニ:ファステストタイムだ
ボッタス:そうだね。厳しいレースだった
ムスコーニ:でもフェルスタッペンから1ポイント奪ったぞ
