ハミルトン:赤旗だ! タイヤバリアは、全然大丈夫に見えるのに。どうして赤旗なんだ! 理由は言ってるのか?
ボニントン:まだ何も聞いてない
ハミルトンは戦略担当エンジニアのジェームズ・ボウルズを直接呼び出して、責め立てた。ボウルズの返答は、ほとんどしどろもどろだった。
ハミルトン:ジェームズ、あれはすごいギャンブルだったんじゃないのか?
ボウルズ:確かにリスクはあった。でもペレスもピットインしたし、トップ10の多くはピットに入った。確かに100%、意味があったとは言えない。赤旗が出る可能性はあったからね。でもそうなるとは予想していなかった。僕らは十分速い。これについては、あとで話し合おう
角田はスタートでエステバン・オコン(アルピーヌ)と接触、8番グリッドから13番手まで後退していたが、ステイアウトして11番手まで順位を戻した。赤旗が出た際に、マシンにダメージがあるのか確認を依頼した。
角田:スタートで右リヤに接触された。チェックしてくれ
マッティア・スピニ:わかった。チェックしている
ミディアムタイヤスタートのドライバーはほぼ全員ハードに履き替え、通常ならこのまま走り切れるはずだ。ボウルズが、「まだ勝てる」と、ハミルトンを励ます。
ハミルトン:みんなこれで最後まで行くよね
ボウルズ:最初のスティントですごくペースがあったから大丈夫だ。またSCが出るかもしれないしね
ハミルトン:ピットレーンで、スタート練習してるぞ
すぐ前のフェルスタッペンがピットレーンで急加速したことを咎めるハミルトン。一方のフェルスタッペンもSCのスローペースや、ハミルトンが極端に間隔を空けることを責めていた。チャンピオン候補のふたりは、明らかにピリピリしている。
フェルスタッペン:SC、なんであんなにゆっくりなんだ。タイヤが温まらないよ!
フェルスタッペン:ルイスが10車身以上遅れてるよ。あれは許されてないだろ?
15周目にレース再開。しかし先頭のフェルスタッペンはここでも加速が鈍く、ハミルトンがターン1でほとんど先行する。しかしフェルスタッペンはターン2をショートカットして、首位を死守した。前を塞がれたハミルトンは、オコンにもかわされ3番手に後退した。
ハミルトン:カットして前に出ている。俺が前だった
ボニントン:見てたよ
ハミルトン:接触を避けないといけなかった
その後方では、セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)がウォールに突っ込み、クラッシュ。さらにニキータ・マゼピン(ハース)、ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)の多重事故も発生した。これで2度目の赤旗中断となった。
ペレス:誰かがぶつかった。ルクレールだと思う
ヒュー・バード:そうだ。きみは、どうしようもなかった
シャルル・ルクレール:ペレスは僕がここにいるのを忘れてた!
レース前半で2度の赤旗中断。しかし波乱の展開は、まだ序の口だった。

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(2)に続く
