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F1 ニュース

投稿日: 2022.04.06 18:41
更新日: 2022.04.07 00:43

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第3回】最悪のタイミングでSC導入。不運が続くも9位入賞、勢力図変化も実感

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F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第3回】最悪のタイミングでSC導入。不運が続くも9位入賞、勢力図変化も実感

 開幕戦のバーレーンに続き、ケビンはまた素晴らしい仕事をしてくれました。金曜日はクルマの問題があり、FP1は0周、FP2でも実際には4周しかアタックできませんでした。ケビンはサウジは初めてですし、シミュレーターでも走っていません。決して簡単なサーキットではないとは思いますが、そんな極度の走行不足のなかでも2戦続けて、予選Q3まで進んでくれました。

 しかし、さすがに高速コーナーの続くこのストリートコースで、1年間のブランクは隠せず、Q3に入る頃には完全に首が限界にきていました。ですからQ3でも本当はちょっと違った走り方をしたかったのですが、走行距離を抑えるために最後は1周のみのアタックにしました。それでも首は持たず、Q2で中古タイヤで出したタイムを上回ることはできませんでした。その結果、予選は10番手。本人もクルマの性能からすればもっと上に行けたと確信していたので、残念な結果となりました。それでもミックのクラッシュによる赤旗中断後に、中古タイヤでQ3進出をしてくれたことは評価に値すると思います。

ケビン・マグヌッセン(ハース)
2022年F1第2戦サウジアラビアGP ケビン・マグヌッセン(ハース)

 決勝の戦略については、1ストップとなるのは明らかでした。しかし、ハードタイヤかミディアムタイヤのどちらでスタートするかは日曜日まで悩みました。

 もしケビンがミディアムでスタートし、後方にハードでスタートするドライバーが多かった場合は、彼が17周目くらいでピットストップするとそのハード勢の後ろでコースに戻り詰まることになります。それに第1スティントではどうしても前のクルマに詰まってしまいます。そうなるとグリップが減って、ミディアムの持ちがより一層悪くなる心配がありました。

 逆にもしハードでスタートした場合は、スタート直後の1コーナーの飛び込みが心配です。ここさえ切り抜ければ前のミディアムタイヤ勢がピットインした後にフリーエアーで本来のペースで走れる状況を作ることが可能です。ケビンにも相談すると、彼は自信満々で「1コーナーのことは心配するな」と。そして「ぜひフリーエアーで走れる可能性を作ってほしい」とのことだったので、ハードでのスタートに決めました。このような会話からも、以前とは見違える程のケビンの成長がうかがえます。

 実際、有言実行でターン1、2は上手く切り抜けてくれましたし、さらにはピエール・ガスリー(アルファタウリ)を抜いて1周目は9番手で戻ってきました。そして第1スティントのペースもよく、危なげなく予定通りのレースを進めていました。そうしているうちにガスリーやエステバン・オコン(アルピーヌ)のタイヤの性能が徐々に落ちてきたので、ミディアム勢がピットインして前が空くのを待つのみでした。

ケビン・マグヌッセン(ハース)&ピエール・ガスリー(アルファタウリ)
2022年F1第2戦サウジアラビアGP ケビン・マグヌッセン(ハース)&ピエール・ガスリー(アルファタウリ)

 しかし、ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)が15周目に最終コーナー立ち上がりでクラッシュし、16周目にはセーフティカー(SC)が出動。ミディアムスタート勢にとっては完璧なタイミング、逆に僕らにとっては最悪のタイミングでした。これはどうしようもできないので、とにかくSC後にはなんとかハードタイヤで攻めて少しでも後続との差をつけることしかできることがありません。

 その後、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)とダニエル・リカルド(マクラーレン)が36周目にストップしましたが、この際は逆にSC導入になりませんでした。リカルドが止まった場所を考えるとピットエントリーが閉ざされる可能性も高かった(実際にそうなりました)ので、悩みましたがVSCを待たずにケビンをピットインさせました。

 ただケビンがピットストップの再に通常の位置よりも行きすぎて止まったので、タイヤ交換に4.7秒かかり、ランス・ストロール(アストンマーティン)とアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)の後ろでコースに戻ることになりました。これは痛かったです。リスタート後にで抜いたもののタイムロスになりました。最後はあれだけガスリーに追いついたので、ピットストップでミスがなければ、ガスリーを抜いて8位でフィニッシュできていたと思います。

 もしSCがなければ、もし2回目のVSCがSCだったら6位だったのに……と考えるとすごく悔しいですが、16周目にSCが出る可能性なんてわからないですからね。すごくアンラッキーだったけれど、9位で残念だと思えるのはある意味いいことです。この2戦は性格の異なるふたつのサーキットで5位と9位という成績なので、このレベルの速さがあるというのは嬉しいです。たとえばケビンとルイス・ハミルトン(メルセデス)とのタイムを比べても、ハードの時はさすがにハミルトンの方が速くて、SC後には抜かれてついていけなかったですが、ミディアムを履いたVSC後は同じくらいかケビンの方がコンマ2秒ほど速かった。メルセデスとレースをしていることが信じられないくらいです。

ケビン・マグヌッセン(ハース)
2022年F1第2戦サウジアラビアGP ケビン・マグヌッセン(ハース)

 やはり今年のレギュレーション変更でF1の勢力図は大きく変わりましたね。昨年を棒に振って今年にかけていたので、今年は少なくとも2、3チームと戦えるようにしなければと考えていて、その2、3チームがウイリアムズ、アルファロメオ、アストンマーティンあたりかと予想していました。ところが予想以上にアストンマーティンとウイリアムズが遅くて、アルファロメオは思っていたより速いです。特に安定して速いのがバルテリ・ボッタスですね。現時点ではウチに一番近い速さを持っているようです。

 またマクラーレンがここまで苦労するのも想定してませんでした。アルピーヌも速いですし、彼らはいいドライバーをふたり抱えているので手強い存在です。これからは開発合戦になり、またいつ大きく勢力図が変わるか分かりません。ファンの方々にとってはとてもおもしろいでしょうし、F1全体にとっても非常にいいことだと思います。

 開幕2連戦を終えましたが、まだまだ信頼性の問題はすべて解決できたわけではありません。僕が心配しているのは、ひとつ問題を解決したら次に何が壊れるのかが見えないことです。プレシーズンテストではトップチームが4000km走っているのにハースは2000kmしか走っていないので、もう2000km走って出し切るはずだった問題を見つけられておらず、この2戦でそれをやっています。とにかく走らないといけないのですが、サウジの金曜にケビンのクルマに問題が起きたように、まだまだトラブルが起きる可能性があるというのが現状です。これを1日でも早く解決して、もっともっと性能にこだわっていかないと今年は一気に抜かれる可能性が高いので、ここ数戦が正念場になります。まず次戦、3年ぶりのオーストラリア、ダブル入賞を狙います。

ケビン・マグヌッセン&ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1第2戦サウジアラビアGP ケビン・マグヌッセン&ミック・シューマッハー(ハース)


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