イギリスGPをもってアルファタウリを離れたデ・フリースについては、ドライバーの立場に立てば、せめてあと数戦は走りを見てもよかったのではないかと感じます。今年のアルファタウリのマシンは、昨年デ・フリースがアレクサンダー・アルボンの代役としてイタリアGPにスポット参戦した際のウイリアムズよりも難しいクルマだと思います。

2022年F1第16戦イタリアGP ニック・デ・フリース(ウイリアムズ)
2022年F1第16戦イタリアGP ニック・デ・フリース(ウイリアムズ)

 そういった部分でも、デ・フリースは適応に時間がかかってしまったと感じますね。チームメイトの裕毅はアルファタウリ3年目で、チームの作るクルマのくせもわかっていますから、圧倒的に有利な立場にあったのは裕毅です。さらに経験を積んで、ここ3年間のなかでもっとも乗れている裕毅との直接比較というのは、デ・フリースにとっては難しい状況だったことは確かです。

 これらの状況を鑑みて、もう数戦はデ・フリースを乗せてもよかったのではと思います。ただ、チームとしてはチャンピオンシップ、コンストラクターズの順位を考えても『もうこれ以上は待てない』という考えだったのでしょう。ここから後半戦に向けて、そして来年に向けてチームの立ち位置としては、チームの価値を下げず、上げていくためにも、すぐにでも変化が必要だったということは頷けます。

 もし、アルファタウリのクルマに今よりもスピードがあれば、デ・フリースの習熟のスピードも早かったでしょうし、余裕を持って仕事を進めることができたはずです。しかし、今年のアルファタウリのクルマはそうではなかった。非常に難しいクルマを乗りこなさなければならないという状況のなかで、デ・フリースはF1ルーキーとしての学びを進めるしかなかったのでしょう。

 また、裕毅は8勝も経験しているリカルドとハンガリーで互角の走り、トップドライバーの仲間入りをしていると言ってもいい走り見せていました。そんな領域に達したドライバーを相手にデ・フリースは戦わなければならなった。そう考えると……仕方がなかったことなのかもしれません。

2023年F1第11戦イギリスGP ニック・デ・フリース(アルファタウリ)
2023年F1第11戦イギリスGP ニック・デ・フリース(アルファタウリ)

【プロフィール】
中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿の副校長として後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。
公式HP:https://www.c-shinji.com/
公式Twitter:https://twitter.com/shinjinakano24

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