■「DTMのコストはGT3なみ」
──DTMでは数年前からコスト削減が提言されているが、具体的にコスト削減とはどういう面で行われているのか?
GB:私はF1というまったく違う世界から来たので、DTMの共通パーツのシステムにはとても共感している。F1の開発費用は天井知らずで、各自が好きなようにバジェットを費やせる世界だが、それをF1以外のモータースポーツでやってしまうと成り立たなくなる。共通パーツを使用することで、その開発費用はかなり削減されているんだ。DTMに参戦するメーカーやチームに費用面で正常な運営を促すには必要不可欠なシステムだと感じているし、共通パーツを使用するにしても、エンジンは独自開発が可能な部分があるので、メーカーの個性がなくなるわけではない。その分、性能調整やパフォーマンスバラスト等の部分は排除して、純粋にチーム力やドライバーの腕で勝負させる方が重要だと思っている。
──DTMのおおよその開発や運営費の金額は教えてもらえるのだろうか?
GB:具体的な金額の提示は控えるが、DTMの開発費用の目安はGT3と同レベルだと言える。それほどに敷居が低いのだ。世間ではDTMに必要な金額は300万〜500万ユーロ(日本円約4億〜6.6億円)が必要だと噂されているのは知っているが、決してそんなことはない。DTMにおいて共通パーツの採用を今後も続けるには、モータースポーツにおいて政治的な部分を払拭する目的もあるのだ。パーツを自由化すると、恐らくメーカーはあの手この手とレギュレーションの抜け道を探るべくいろいろな裏の手を考えてしまう状況になり、悪循環に陥ってしまう。それによってメーカーは開発にどんどん費用を費やす羽目になってしまうからね。
──GT3の話題が出たが、日本のようにGT3マシンをDTMで走らせることは構想の中にあるか?
GB:まったくない。GT3とは、私にとってはカスタマーのためのレーシングカーという位置付けで、完全なプロレースのDTMと、GT3はまったく別のカテゴリーだと考えている。アマチュアやセミプロも参戦するGTレースの中で、バランス・オブ・パフォーマンス(BoP)で性能を調整されることには異議はないが、DTMとはプロドライバーのみが参戦するカテゴリーなので、プロにBoPやサクセスバラストを課す必要性はないと考えている。
──DTMにおける自動車メーカーの役割とは?
GB:DTMに参加する自動車メーカーは、テクノロジーにおいて自動車業界を率いるような立場でなければならないと思っている。DTMに参戦するマシンのベースとなるモデルは、アウディRS5、BMW M4、メルセデスベンツC63 AMGのように、3メーカーを代表する最先端のテクノロジーが搭載された素晴らしいハイパフォーマンスカーであることは言うまでもない。それを買い求めるユーザーは、決してそのハイテクノロジーだけに惚れ込んで購入するのではなく、よりスポーティな走りを楽しみ、クルマからダイレクトに得られるエモーショナルなフィードバックを期待している。それにはDTMを通じたプレミアムブランドのイメージ戦略は非常に重要になるし、販売戦略も活性化させる。それらのクラスを所有しようとするユーザーにとっては、自動車=単なる移動手段ではない。車体価格が安くて、動けば良いというような自動車を作るメーカーは、DTMには相応しくないのだ。


